ボーイズラブのすゝめ

ボーイズラブ系のコミックス&小説の感想を中心に。

『恋するインテリジェンス ultimate (1) ペーパーワークス集』(丹下道/幻冬舎バーズコミックス リンクスコレクション)感想【ネタばれあり】

 
丹下道先生の『恋するインテリジェンス ultimate (1) ペーパーワークス集』の感想です。
武笠×深津の「恋するインテリジェンス class:rookie 003」や針生×眞御の「恋するテーブルマナー~愚かにならぬ「恋」など「恋」ではない~」などをはじめ、カラーイラストやショートショート、付録ペーパーなどに掲載された4コマを集めた一冊。
とにかくボリューム、カップリングの多彩さ、クオリティが凄まじい。
『恋するインテリジェンス』にハマった読者なら大満足できる事請け合い。
 

『恋するインテリジェンス ultimate (1) ペーパーワークス集』(2019年1月24日発行)

あらすじ

バディである深津を愛してやまない武笠。
だが、なぜかVIPの集まるパーティーなどに、深津を同伴する事はなかった。
仕事にも関わらず、なぜバディである自分を誘ってくれないのか?
解せない深津は、武笠が白戸と出席するパーティーに潜り込むが……。(「恋するインテリジェンス class:rookie 003」)
 

総評

一言、これはスゴイ。
『恋するインテリジェンス』ファンならマストアイテムの一冊。
質と量、共にすさまじく、読者を圧倒してくれます。
カップリングも豊富で、お馴染みの武笠×深津や針生×眞御はもちろん、今までメインを張った事のないカプや、財務省、厚生労働省、法務省のカプまで網羅している。
冒頭の相関図だけで圧巻。
関係者数は軽く数十人を上回り、カップル数も膨大。
Kヶ関はボーイズラブの桃源郷ですね。
 
個人的には、まだ全容を明かされていない鶏楽×藍染、春日×木菜、午通堂×千散、聖前×桃月が取り上げられていて感無量。
第118期、大好きだ。
厚労省の「愛と狂気のラボラトリー」に登場した脇カプも、各々これで終わらせてしまうにはもったいない濃さ。
法務省の鷹見×楚和も、まだ完全にくっついたとは言えないし(それどころか後退)。
とにかくメインで読みたいカプが多すぎる。
丹下先生、お体壊さない程度で良いので、是非ともよろしくお願い致します。
 

恋するインテリジェンス class:rookie 003

深津があまりにも自分の魅力に無頓着なので「は!?」となります。
「俺が見劣りするからかな…」って、お願いだからちゃんと鏡見て!!(その鈍さが、また可愛いんですが)
これは武笠が隠したくなるのも分かります。
こんな初々しい子、食えない面々が集うパーティーに出したら、狼の群れにウサギを放り込むようなものですからね。
とりあえず誤解は解けて良かったですが、パーティー会場から消えたバカップルのあおりを食らって、白戸が働いていたのかと思うと泣けてきた(笑)。
今回ばかりは春日に叱られてもしゃーない。
 
春日といえば、掌返した時のニコちゃんマークですが、彼がメインの話になったら、とんでもない数に上りそう。
それはそれでウザ面白い。
 

リンクス2014年9月号 読者プレゼントペーパー

針生×眞御と土門×円。
攻めに良いように仕込まれて、変な癖を身に着けてしまったピュアな受け達。
武笠はこの頃は比較的真面だったんだな。
まさか後に、上司と同じような破廉恥を職場で働く事になるとは想像もしていなかったでしょう。
 

リンコレダッシュ4コマ 1

針生×眞御と土門×円。
愛する受けを前に、相変わらずろくでもない事を企む攻め達。
ボーイズラブを読んでいると、男性のアレを表す様々な表現に出会うんですが、コズミックはお初でした。
ちょっと規模が広大過ぎやしませんか?
まあ、眞御と一緒にいる時の針生って、大体ビックバン起こしてますけどね(?)。
 

「恋するテーブルマナー~愚かにならぬ「恋」など「恋」ではない~」

テーブルマナーというか、ベッドマナーがあまりにもローカルルールな針生×眞御。
針生の愚か指数と変態メーターが、尋常でなく振り切れ過ぎていて、一周まわって「コイツ、天才か!?」と大絶賛したくなった。
有能な変態ほど性質の悪いものはいない。
眞御を堪能するためなら、手段を選びませんからね。
眞御ちゃんの「申し訳ない」とお口もごもごに萌えつつも、海(?)召喚には笑ってしまった(潮吹きすぎたせい?(セクハラ))。
そして「もうっ、最低ッ!!!!」にラブコメヒロインみを感じる今日この頃。
 

恋するインテリジェンス2 4種プレゼントペーパー

土門×志山、針生×眞御と、厚労省の岩倉×奥名、如月×秀永、文能×西海。
常連の前2カップルに対して、厚労省も負けていません。
 
特に秀永さんの美魔女(?)っぷりがスゴイ。
奇跡の45歳(神子主幹に一服盛られてないか?)。
おまけに眼鏡着脱で2度オイシイ。
本当に神子ハーレムには、はずれなし。
 
麻取のブレイン・文能も口から生まれてきたような男というか、交渉能力が半端ない。
「コップに溜められないなら、直接飲んじゃえばいいんじゃない?」は「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」に並ぶ歴史的名言。
優秀な頭脳の無駄遣い有効利用、ここに極まれり。
 

リンコレダッシュ4コマ 2

針生×眞御と厚労省の小林×佐合。
眞御ちゃんの債務返済生活、どんな闇金に借りるよりも過酷ですね(笑)。
そして、小林×佐合は、本編であれだけいかがわしい雰囲気醸し出しておいて、まだだったという驚愕の真実。
 

Private SEX ~恋人たちのなんのイベントもないただスペシャルな日~

針生×眞御の淫語プレイ&69。
普通の日だろうが、スペシャルな日だろうが、時も場所も関係なく、いつでも全力投球な二人。
眞御は普段はあんなに有能なのに、プライベートではなぜこんなにもチョロいのか?
危機管理能力、仕事に全振りしているとしか思えないんですが。
 

恋するインテリジェンス3 4種プレゼントペーパー

土門×志山4編と、鷹見×楚和、武笠×深津、針生×眞御が各1編ずつ。
志山家男子の円溺愛っぷりが異常。
土門にとって聞き逃せない事実がズルズルと出てくる。
円の義弟は土門にとってかなりの難敵と見た。
円に対して劣情を抱いてそうな香りがプンプンしているので、ある意味、志山次官よりヤバいかも。
義兄×義弟は、それはそれで美味しいですが(土門に抹殺されそうな発言)。
 
鷹見×楚和の交換日記に爆笑。
どう考えても二歩進んで三歩下がってるんですが(つまりは後退)、鷹見もちゃんと現実を見ようぜ(肩ポン)。
 
武笠×深津は、武笠の膝の上にちょこんと座る深津が可愛すぎた。
針生・武笠師弟にとってwin-winな課題。
針生、下手に部下を敵に回さないところが策士過ぎ。
結局、痛い目見てますが。
 
針生×眞御は、眞御ギャルソンコスプレに、針生と同じくはぁはぁ。
お医者さんプレイも、是非お待ちしております。
眞御ちゃん、なぜいつものアレを「普通」だと思ってしまうのか?
さすがの先森もドン引き。
でも超テキトーなアドバイスしかくれない。
あの変態は、どう考えても不治の病でしょう。
 

リンコレダッシュ4コマ 3

土門×円。
恋人の父にこれだけ堂々と変態発言かませる土門の、鋼を通り越したセラミックメンタルを見習いたい。
お貴族様って皆、こんな感じなんですかね?(風評被害)
「嫌がらせ」って、あながち否定できないところが(笑)。
 

恋するインテリジェンス4 4種プレゼントペーパー

針生×眞御、武笠×深津、鶏楽×藍染、柳×先森。
針生・武笠のポンコツ師弟っぷりが炸裂。
この「親」にして、この「子」有り。
針生の「若いヤツのプレイは斬新すぎてよく分からん」発言は、まさに「お前が言うな!!」。
望遠鏡、ちゃっかり採用してるしね。
実はその望遠鏡の考案者、深津なんですけど。
 
自分の苦肉の策が、変態上司のプレイに利用されているとは露知らず、自分が濡れすぎな事に悩める深津。
いや、百万歩ぐらい譲って、上司の藍染はどうなのか、気にするのは良いんですが……。
 

け、鶏楽さん、藍染さんって、どれぐらい、ぬ、濡れますか?

 
どうして、よりにもよって一番アンタッチャブルな人に、そういう事聞くの!?
おかげで、藍染がとんでもない目に……。
まだ正面から「藍染さん、普段どれくらい濡れますか?」と質問された方がマシだったんじゃ……。
 
先森の幼児プレイも凄かった。
ボーイズラブ界で、キモいモブを描かせたら上手い人ランキングがあったら、丹下先生、上位ランカー必至ですね(褒めてます)。
プロフェッショナルな先森ですら、我慢できない超難関任務。
これに対応できる藍ちゃんは慈母か何かですか?
しかし、よくよく考えてみれば、このおっさんと針生辺りが普段やっている事ってあまり大差ないような……。
人間、顔面偏差値って大切なんだなと実感。
 

リンコレダッシュ4コマ 4

鶏楽×藍染。
 

甘やかされたヤツは、ろくな人間にならない。

 
すっごい正論&説得力(鶏楽をしみじみと眺めつつ)。
藍ちゃんの下について、鶏楽の嫉妬光線に常時晒される深津に、心の底から同情を禁じ得ない。
 

恋するインテリジェンス class:rookie001.5続 SIDE武笠

時間は遡り、両想いになる以前の武笠×深津。
武笠が未だ深津の本性を知る前ですが、この頃からすでにかなりメロリンラブ。
下半身もとんでもない事になってます。
確かに、こんな奇麗な子に一生懸命ゴムつけれもらえたら、色々はち切れそうになるのは納得できますが。
国内最大サイズ通り越して、海外進出に爆笑。
これ、茶々入れてるの、誰だろう?
そして、何気に郷土×藤野もスゴイ事になってる。
第128期官のTCは、皆さん、ご立派なモノをお持ちなんですね。
 
あと、おまけの針生×眞御。
眞御ちゃん、針生を煽りすぎ。
針生が暴走するのは99.9%は本人のせいですが、残りの0.01%は眞御の責任もあると思う。
 

官僚シリーズ 描き下ろしmini★mini小冊子 国重×宝生

厚労省の国重×宝生。
年下攻めを掌で転がす眼鏡受け。
国重は、このシリーズにしては珍しく純情なカワイイ系攻めだなっと思っていたら、あら大変。
油断したら牙を剥くタイプだった。
さすが腐っても麻取(麻取の認識がオカシイ)。
国重のいつもとは違う「雄」の表情を垣間見てドキドキしてしまう宝生に萌え。
 

官僚シリーズ 描き下ろしmini★mini小冊子 聖前×桃月

わぁぁあぁ、大好き!!(告白)
この二人、本省を留守にしている事が多く、あまりお目にかかれないのが残念ですが、少女漫画チックなトキメキを貰いました。
桃月が現在のようなルックスになった意外な経緯。
「ピーチ嬢」……、室長、絶対面白がってる。
桃月、実は中身は滅茶苦茶普通の男の子なんですね。
だが、そこが良い。
あのあざとさとキュートさは努力の賜物(適性もバッチリだったんだけれど)。
 
聖前の王子様オーラも半端ない。
360度どこから見ても爽やか。
桃月がいつも髪につけているオーナメントは、聖前がプレゼントしたものだったんですね。
それをずっと身に着けている桃月。
うわぁ、甘酸っぱい。
二人とも相手が大好きだという事が伝わってきて、こちらの方が赤面。
 

官僚シリーズ 描き下ろしmini★mini小冊子 郷土×藤野

元同級生がバディを組んでしまったという事で、モダモダ感がたまらない。
郷土は既にヤる気満々なんですが、藤野が超照れ屋さんだから、友達からステップアップするのはなかなか難しい。
この二人のI倉実習もヤバいですね。
郷土、新たな扉を開いてしまったとしか思えない。
 
そう言えば、武笠と同じく、郷土のブツも海外進出レベルだった。
 

針の穴にI雲のしめ縄を入れてこそのTCだぞ。

 
またまたすげぇ迷言が飛び出しましたが(TCはナニかの職人ですか?)、藤野はそういった意味でも苦労しそう。
 

官僚シリーズ 描き下ろしmini★mini小冊子 文能×西海

剥かれる西海に対して、着こんだままの文能がエロ過ぎ。
西海がまた追いつめたくなるタイプで、Sっ気ある文能と相性抜群(西海自身は不本意でしょうが)。
ラストの実況中継調のナレーションに爆笑。
直飲みすら未達成の他メンバーを差し置いて、文能、大差で爆走中。
さすが、麻取のブレイン、そこにシビれる!あこがれるゥ!
 

官僚シリーズ 描き下ろしmini★mini小冊子 午通堂×千散

魔性の女ならぬ男に翻弄される常識人攻めにニヤニヤ。
道徳的な午通堂と退廃的な千散の、組み合わせの妙。
千散の手練手管も絶妙。
「計算?」、「いや、本音?」、「やっぱり計算?」と脳内でグルグルしている午通堂。
妖艶な中に一途さが見え隠れする千散。
はぁぁあぁ、このカップルも大好き。
 

恋するインテリジェンス5 4種プレゼントペーパー

差形&円の後輩・本郷慶太。
麗しい受け二人に頼られる超美味しいポジション。
反面、誰とは言わないが、某主計局のヤバイ二人の殺意を一身に受けているという……。
本人も納得済みとはいえ、財務省は彼に危険手当を払ってあげた方がいいのでは?
 
古賀×差形。
古賀にとっては、差形以外は本当にどうでも良いんだなと。
だが場所は考慮しろ。
目撃しちゃった部下が可哀想だから(これも変則的なセクハラ?(笑))。
 
武笠×深津。
「夢で見た深津のお誘いポーズ!!」の煌めきと、ムクムク立ち上がるナニの禍々しさのギャップに笑いが止まらない。
そして、いつでも何度でも騙されるちょろイン・深津。
藍ちゃんの後を継ぐのは難しいんじゃないかな?
どちらかというと、眞御ちゃん路線に進む事をおススメする。
 
第128期官BCの井戸端会議。
「BC×BC、たまにはいいじゃん!」と微笑ましく眺めていたら……。
白戸×木菜が想像以上にシャレにならなくて、笑顔が凍り付いた。

春日×木菜とは別腹で、白戸×木菜も美味しいですが。
THE 昼ドラ展開。
春日がとんでもない事になりそう。
 

リンコレダッシュ4コマ 5

古賀×差形。
あの関白宣言ならぬ淡白宣言は、本当に何だったのか?
古賀はこの絶倫で、よく19年間耐えてきましたね。
『恋するインテリジェンス』七不思議のひとつ。
耐えすぎて、悟りを啓ける領域に達してそう(その割には万年煩悩まみれですが)。
 

恋するインテリジェンス アニメイト購入特典ペーパー

Kヶ関の官僚達は全員、名刺に(攻)、(受)表記しておけばいいと思うの。

『世界のまんなか イエスかノーか半分か2』(一穂ミチ/新書館ディアプラス文庫)感想【ネタばれあり】

世界のまんなか?イエスかノーか半分か(2)? (ディアプラス文庫)

世界のまんなか?イエスかノーか半分か(2)? (ディアプラス文庫)

世界のまんなか?イエスかノーか半分か 2? (ディアプラス文庫)

世界のまんなか?イエスかノーか半分か 2? (ディアプラス文庫)

 
一穂ミチ先生の『世界のまんなか イエスかノーか半分か2』の感想です。
前作からおよそ1年後が舞台。
「ザ・ニュース」の裏番組「ニュースメント」とタレント・木崎了の出現により、仕事への葛藤や潮への苛立ちを覚えてしまう計。
それが一段落したかと思ったら、とんでもない展開が計と潮を待っていました。
今回も前作に負けず劣らず、恋愛小説としても、お仕事小説としても絶品。
 

『世界のまんなか イエスかノーか半分か2』(2015年6月10日発行)

あらすじ

前作からおよそ1年。
アナウンサーの国江田計は、世間に対しては周到な猫をかぶりつつも、素の自分を認めてくれる恋人・都築潮と共に幸せな日々と送っていた。
しかし、「ザ・ニュース」の裏番組「ニュースメント」の開始により、にわかに暗雲が立ち込め始める。
「ニュースメント」に出演しているタレント・木崎了が、実は昔アナウンサー志望で、自分が採用された代わりに彼が落ちた事を知ってしまった計。
だがそれに腐らず、努力を続け、実力を身に着けた木崎の存在感。
そして、プロデューサー・設楽の意向により、ロケばかりを任されスタジオに中々入れない事も重なって、計は己の仕事へのスタンスを見失いそうになる。
おまけにその事がきっかけで、潮とももめてしまい……。
 

感想

前作に引き続き、今回も大満足の一冊。
相変わらず、計の心の声やキャラの使い分けが楽しすぎ。
ここまで毒舌だと、いっそ清々しい。
それを潮がとんでもない懐の深さで受け止める。
今思うと、潮に出会わなかったら、計は色々な壁に行き詰って、アナウンサーという仕事も辞めてしまっていたかもしれない。
それほど計にとって潮の存在は大きい。
どこか歪な生活を送っていた計が、初めて見つけた憩い。
一方潮も、毒舌吐きながらも絶対妥協せず、仕事に対して真摯に向き合う計を尊敬している。
 
どちらも互いにベタ惚れで、かといって甘やかしすぎず、言うべき事はきちんと伝える。
二人が共にいる事がとても自然で、読者としても見ていて気持ちの良いカップル。
 
濡れ場も、前巻から変わらずニヤニヤさせてくれる。
特に中盤の露天風呂&鏡プレイの仲直りH。
フワフワした可愛いイラストからは想像できませんが、割とチャレンジャーなんですよね、この二人。
ムッツリな潮とツンデレな計の黄金比が素晴らしい。
下品になり過ぎず、匙加減も丁度良い。
 
今回はお仕事小説としても、さらに読み応えがアップしていました。
アナウンサーを志望していたわけではなく、ふっとした切っ掛けから、今の仕事についてしまった計。
そんな彼が、インプラントや舌の手術まで受け、情熱と実力を兼ね備えた同年齢の木崎に、コンプレックスにも似た脅威を抱く事に、強い説得力を感じました。
計は強烈な猫をかぶってきた事により、剥き出しの熱意やエネルギーを外に向かって表す経験に乏しい(アクセント辞典のエピソードからも、情熱を持っているのは明らかなんですが、本人がいまいち無自覚だった)。
この辺り、木崎もそうですが、「好き」が高じてアニメーション作家になった潮との対比も面白い。
いくら潮が正論で諭してくれてたとしても、素直になれない気持ちも分かります。
 
さらに、最近ではスタジオの仕事がメインだったのに、慣れないロケや設楽の鋭い指摘などが、計の疲弊に拍車をかける。
ただ彼を追いつめるのも仕事なら、また鼓舞するのも仕事だった。
そして、設楽や「ザ・ニュース」のMC・麻生や、頑固一徹のカメラマン・錦戸など、業界の年長者達の言葉や仕事への取り組み方。
彼らバイプレイヤーが、過保護になり過ぎず、かといって突き放し過ぎず、良い距離感を保って、若い計の背中を押してくれる。
 
最終的にアナウンサーとして、そしてテレビに関わる人間として、大事なものをつかんだ火事の生中継には目頭が熱くなりました。
ここで、本作において計が苦労させられたロケの経験や、錦戸との信頼関係が活きてくるのも良い。
潮もナイスアシストしてくれて……、潮が傍にいてくれれば、計はどこまでも強くなれるのではないでしょうか?
 
そんな感じで、騒動は収束に向かうかと思いきや……。
後半はまさかの展開。
計の記憶喪失事件。
これにはしばし茫然。
視点も潮にスイッチして、物語がひっくり返ったような感覚。
 
毒舌も巨大な猫も消え、奇麗な「国江田さん」だけになってしまった計。
読者である私ですらとんでもない喪失感を味わったのだから、潮のショックは如何ばかりか……。

いつもは大樹のように鷹揚に構えている潮ですが、さすがにこれはキツイ。
今まではいつもどこか余裕を残していた潮が、「国江田さん」と「計」の狭間で揺れるのが大変新鮮でした。
おまけに「国江田さん」が、素直な好意を向けてくるものだから、これなんて拷問?
「国江田さん」、健気で可愛すぎだし。
潮に手料理まで作ってくれるし。
台所に共に立つ姿が、まるで新婚さん。
 
しかし、元々「国江田さん」と「オワリ」をほぼ同時に好きになった潮なんだから、どちらかを取捨選択なんてできるわけがない。
両方合わせて、潮の愛してやまない「計」なんだから。
この辺りは潮の男気や、計への想いが伝わってきて、萌えが止まりません。
潮は本当にいい男だなとあらためて実感。
 
ここで、伏線として張られていた壁ドンがきっかけで、まさか記憶が戻るとは思いませんでしたが。
これ、番宣の名を借りた、潮に対する愛の告白じゃん、ヒューヒュー!!
「国江田さん」も確かにキュートで捨てがたいんだけれど、いつもの計が戻ってきてくれて、安心感が半端ない。
国江田計はやはりこうでなくちゃ!!
 
その後はもちろん二人のイチャラブ(できれば「国江田さん」バージョンも見てみたかったのは秘密です)。
ここで折角、あの超プライド高い計様がフェラしてくれると言っているのに、微妙な応答する潮がね(笑)。
ムッツリな上に、Sっ気あるのは気づいていましたが。
しかしなんのかんの計をおちょくりつつも、いつも以上にがっついちゃってる潮に燃える。
まあ、今回は仕方がない。
「国江田さん」にも煽られっぱなしだったし、計を失うかもしれない焦燥感に苦しんだから。
 
ラストは意外な形で「ニュースメント」が失速してしまう。
勢いで口にしてしまった不用意な言動が致命傷になにかねないのが、現実社会とマッチしています。
こういう、何気ないけれどリアルなエピソードを作り、読者をハッとさせるのがお上手ですね、一穂先生。
TV放送、及び生番組の怖さの一端を思い知ると同時に、麻生さんのアンカーマンとしての鋭敏さも示しているのがお見事。
 
あと木崎がどうして旭テレビにこだわったのかも明かされました。
あの底知れない麻生さんを「そうちゃん」呼びって……(笑)。
木崎とそうちゃんが普段どんな会話を繰り広げているのか非常に気になります。
まあ、そうちゃん、確か奥さんいたから、この二人がボーイズラブ方面に流れる事はないだろうけどさ、チッ(?)。

『恋するインテリジェンス(6)』(丹下道/幻冬舎バーズコミックス リンクスコレクション)感想【ネタばれあり】

恋するインテリジェンス (6) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (6) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス  (6) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス  (6) (バーズコミックス リンクスコレクション)

 
丹下道先生の『恋するインテリジェンス(6)』の感想です。
今回は第118期官の先森篠雅と柳介次の物語。
先森大好きな柳に対して、なぜ先森があれほどまでに塩対応なのか?
また、秋草室長をはじめとした第108期官(先森や柳などから見ると「親世代」)の事も徐々に明かされてきて、大変興味深い巻でした。
 

『恋するインテリジェンス(6)』(2018年11月24日発行)

あらすじ

仕事では息の合った働きを見せる先森と柳のバディだが、彼らには恋人関係を解消した過去があった。
現在室長を務める秋草がまだ補佐だった時代に発生した、D国の秘密文書に纏わる失態で、秋草と当時のバディ・我玄は破局。
その件で責任を感じた先森も、柳に別れを告げた。
だがその後も、柳は変わらず先森に対して誠意を示し続け、先森も内心では彼を忘れきれない。
しかし、柳に好意を寄せる女性の存在や、彼になにかある度に傷つく自分に嫌気がさした先森は、あらためて二人の関係を完全に終わらせようと決断する。
 

総評

ずっと気になっていた柳×先森のお話。
クールさで鳴らしている先森の意外な一面が次々と見られて、目から鱗。
柳の代わりに、彼がプレゼントしてくれたライオンのぬいぐるみを抱きしめて寝ているとか、可愛いが過ぎない!?
また怜悧な仮面の下に、彼が様々な想いを隠してきたのも痛ましい。
柳が昔と変わらず労わってくれているのが分かるから、余計辛かっただろうな。
柳が負傷して、彼にもしもの事があったらと震えてしまったり、ジェシカに嫉妬したり。
でもそれを上手に表に出せない不器用さが、もどかしくも愛しい。
 
そして、そんな先森を待ち続ける柳の一途さも格好いい。
今まで先森大好きっ子の万年思春期みたいな面がクローズアップされてきましたが、良い意味で印象が覆りました。
精神的にとても成熟していますね、彼。
かと言って、枯れているわけではなく、ギラギラした部分も秘めていて。
先森との関係性を経る事により、どんどんいい男に変貌していったんだろうな。
 
今回は柳×先森の物語ももちろんですが、彼らが別れる原因となった秋草室長他第108期官の話もドラマティックで、大変読み応えがありました。
また、この第108期官が美味しそうな面子ばかりなんだ、これが。
108期のメンバーは皆、多忙で本省にいる事が少ないって、そんな殺生な……。
現在、秋草室長と我玄の関係がどうなっているのか、そしてこれからどうなっていくのかも、非常に気になります。
柳×先森の事はひと段落つきましたが、食指が動く人物やカプがさらに大量投入されたという、嬉しい悩みの尽きない巻でした。
 

恋するインテリジェンス class:#118-1

仕事ではナイスコンビネーションを見せるのに、二人っきりになった途端、微妙な雰囲気を醸し出す先森と柳。
先森に何らかの心の引っ掛かりがあり、柳からあえて距離を置いている様子。
 
今回は前巻の「差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~」と同時間軸のお話。
鶏楽が藍染絡みで仕事放棄して、蔵本はまだルーキーなのに、とんでもない事に巻き込まれてます。
鶏楽の下に付くって、人生ハードモード通り越して、ナイトメアモードだなと同情。
つーか、鶏楽、切れ者なのに、藍ちゃんいないと使い物にならな過ぎ(笑)。
確かこの時、藍染と連絡取れないというのも、半日ぐらいの間だけだったんですよね。
藍ちゃん、どこの箱入りお姫様ですか?
秋草室長からは「それぐらいお前らで解決しろ。じゃあな」とありがたいお達しだし、フォローする牛通堂も大変だ。
常識人が苦労する、そんな『恋するインテリジェンス』。
その頃、秋草室長は因縁浅からぬ感じの男と再会していましたとさ。
 
場面は変わって、I倉を乗り切っても、まだまだ研修が続くルーキーズ。
高笠はプレゼント攻撃が激しすぎて、当の深津に若干引かれ気味。
これだから、くそボンボン(蔵本命名)は……。
まあ、なんだかんだで仲良くやっているようではありますが。
一方、I倉を経た事により、返って微妙な空気になっている供威×黒瀬などもいる。
指先が触れ合っただけでギクシャクするとか、甘酸っぱいですね(ニヤニヤ)。
 
そんな彼らが受ける研修は……。
 

先森先生が男をめろめろにする方法を披露してくれるぞ!!

 
先森のバディである柳が、一番うっきうきわくわくしていて噴き出しました。
「遠足前の小学生か!?」というぐらいのテンション。
あなた、いつも任務で先森のお色気シーンは見慣れてるんじゃないの!?
柳は、先森を待ち続ける大人の男の愁いと、同じく先森を前にした時の思春期的なノリの落差が面白い。
 

恋するインテリジェンス class:#118-2

先森教官のお色気実習。
まず使われている教材に爆笑。
やはり第二巻「恋するインテリジェンス operation 001」の時のカリム王子誑し込み動画、お手本として使われていたんですね。
かけ値なしにお見事なテンプテーションだったから。
この映像は、これからも外務省で大事に引き継いでいってもらいたいですね。
眞御ちゃんが知ったら憤死する事確実ですが。
 
続いてルーキー達の実技演習。
まず武笠×深津。
結果は……ダメだ、こいつら(笑)。
深津、棒だし(これはこれで可愛いですが)、武笠は深津相手だと常時扉がオープン状態だし。
他の面々も、I倉パスしたとはいえ、まだまだ実践レベルからはほど遠い。
TC×TCやBC×BCは確かに無茶苦茶見てみたいけれど。
 
比べて、柳×先森は貫禄の駆け引きですね。
柳はあれだけはしゃいでいたのに、ヤる時はヤるのがさすが。
なんだか途中から私情が混じっていましたが。
それに対する先森の対応がスゴイ。
結局、最後は力技!?
 
後半は、私が密かに推している鶏楽×藍染と春日×木菜が、たくさん摂取できて大満足。
鶏楽、藍ちゃんに構ってもらうためだけに、熱々のコーヒーを自らにかぶるって、相当ぶっ壊れていますね。
長年付き合いのある同期ですらドン引き。
藍ちゃんになにかあったら、鶏楽は果たしてどうなってしまうのか、見たいような、見たくないような……。
調整役の牛通堂も、鶏楽に手を焼いてますね。
一歩間違えると、敵対勢力よりも性質が悪いから。
藍ちゃんも鶏楽に甘々。
深津といい、この親子はチョロ過ぎ。
 
春日×木菜の、恋するクズ男の華麗な手のひら返しも面白い。
春日と一緒にいる柳が、もの凄く真面に見えるのは気のせい?
春日×木菜がメインのお話も是非読んでみたい。
柳が呪っているように、春日がこのままフられ続けるのも、それはそれで一驚ですが。
 
今回は謎に包まれていた秋草室長についても、様々な事実が発覚。
バディだった我玄の存在。
秋草室長、今までTCかBCか曖昧でしたが、我玄と並ぶとBC以外のなにものでもない色香。
我玄も渋い。
酸いも甘いも嚙み分けた44歳同士、美味しすぎ。
そして、秋草室長、先森と眞御、両方の師匠だったんですね。
一人のトレーナーに、二人のトレーニーって有りなんだ。
しかも、あの腕利き二人を仕込んだって……。
それだけでも、室長が飛びぬけて優秀な人物だという事が察せられます。
 

恋するインテリジェンス class:#118-3

深津の訓練レポート(ぶっちゃけ苦情)がきっかけで、Hがねちっこい事を春日と聖前の両先輩に指導された武笠は、「一般的」とは何かと哲学的な命題(?)を模索中。
しかし、春日の指導(という名の脅し)もアレですが、聖前も王子様スマイルの裏に一癖も二癖も厄介なものを持ってそう。
 

とりあえず針生主任に相談してみるか。

 
武笠、なぜ普段の針生の所業を散々見ていて、そういうチョイスになるのか!?
もう入り口からして間違ってるから。
あの人も「一般的」から相当かけ離れるから。
 
早々に針生の眞御ちゃんセクハラを目撃してしまった武笠。
……これは予想以上にひどい。
そのルックスと眞御への愛があるから許されてるが(いや、許されないか)、訴えられてもおかしくないレベル。
言葉のチョイスがもうね、ド変態以外のなにものでもない。
眞御ちゃん、一発と言わず殴っていい。
高笠も相談する人はちゃんと選べ。
国際情報統括官組織に「一般的」なTCが存在するかどうかは、甚だ疑問だけれど。
ひょっとしたら、砂漠の中から砂金を見つけるぐらいの確率じゃないでしょうか?
 
一方、柳×先森は徐々にシリアスムードになってきました。
柳は本当に懐深いですね。
苦労して手に入れた招待券が無駄になってしまったのに、あんな風に悠然と構えていられる人間はそうそういない。
先森も柳の心遣いは身に染みてわかっているんだろうけれど、それに素直に寄り掛かれないのには、よっぽどの理由があるわけで……。
柳が潜入調査で負傷してしまった時の先森の怯えなどからも、彼が柳を愛しているのは明らか。
 
後半は、とうとう先森と柳の関係が拗れた原因が明らかになる過去編に突入。
皆、若ッ!!
柳×先森の初々しさも捨てがたいが、我玄×秋草が凄くイイ。
秋草の気まぐれな猫のような奔放さと辣腕家ぶり。
そんな彼を包み込む我玄の安定感。
最高ですね。
今更だけれど、このシリーズ、気になるカップルが多くてキリがない。
 

恋するインテリジェンス class:#118-4

今回はとにかく切なかった。
彼らの任務である諜報活動は、いつも危険と隣り合わせなのだなとあらためて実感。
互いを愛しつつも、道を違えていく秋草と我玄。
秋草以上に大切なものなどない我玄と国防に命を懸ける秋草は、ついにバディを解消せざるを得なくなってしまう。
 
任務に関する失態、そして秋草と我玄の関係破綻に、責任を感じずにはいられない先森。
彼が恋人としての柳に別れを告げたのは、秋草への絶対的な忠誠心もあっただろうけれど、秋草と我玄に自分と柳の姿を重ねずにはいられなかったんでしょうね。
我玄が秋草の盾になったように、柳もまた、先森に何かあったら身を賭しても守ろうとする一途な男だというのが分かっていたから。
柳はそんな先森の決断を尊重し、ずっと見守っている。
千散の言う通り、いい男ですね。
危うい仕事に身を置いているからこそ、先森には後悔してほしくありませんが。
 
しかし、先森の複雑な心情に追い打ちをかけるように、柳にベタ惚れな当て馬・ジェシカ嬢が現れる。
「これは面白くなって参りました」と、千散と同じくニヤニヤが止まらない。
 

恋するインテリジェンス class:#118-5

空気の読めない女・ジェシカ(BCの視線が痛い)の登場や、柳になにかがある度に動揺する自分に嫌気がさしてしまう先森。
そんな彼に、いつもはジャイアンな秋草室長も「親」らしい言葉をくれる。
彼なりに柳と先森の現状に思うところがあっただろうし、なんだかんだ振り回しつつも「子」である先森が可愛いんだろうな。
だが、先森の決意は固く、柳との関係を決定的に終わらせようとするが……。
 
中盤は、古き良き月9ばりのすれ違いを乗り越えつつ、大逆転で見事ゴールイン。
先森の一世一代のデレがたまらん!!
冒頭のぬいぐるみを抱きしめるシーンといい、今回の先森、ちょっと可愛すぎない!?
いつものツンツンも大好きだけれど、今回の破壊力はちょっと次元が違いました。
 
柳もよくぞここまで待ち続けました。
男気が報われてましたね。
どさくさ紛れのプロポーズも良かった。
冒頭のエンゲージリングの伏線も無事回収。
 
そんな訳で、柳は幸せそうで大変結構ですが、今までの反動で発汗がとんでもない事になってます(笑)。
深津を前にした武笠辺りもそうだけれど、病院行く事をおススメする。
先森が愛しいあまり、自律神経が狂ってるとしか思えないんですが。
 

恋するインテリジェンス class:#118-6

もう二人の間を阻むものは何もないという事で、先森の自宅で久しぶりに抱き合うご両人。
柳、いつものテンションの割には、比較的普通のセックスするのにちょっとビックリ。
つーか、やはり針生・武笠師弟が「一般的」ではないんだなと……。
まあ、あの二組の場合は、受けが超初心者で流されっぱなしになってしまうのも敗因(?)の一つですが(だからってヤりたい放題していいわけじゃない(笑))。
その点、先森はデれつつも、手綱を放していない感がありますからね。
この域に達するには、眞御と深津もさらに研鑽が必要。
 
しっかし前回に引き続き、今回も先森が可愛くて仕方なかったです。
味折の件を実は気にしていたのももちろんですが、極めつけのぬいぐるみ抱きしめ事件。
柳からもらったぬいぐるみを、彼だと思って何年も大事にしているとか……。
普段の塩とのギャップが尊すぎる。
これは柳じゃなくとも、発狂するぐらいの健気さ。
 
後半は秋草室長がとんでもない男前だった件。
これは「秋草室長、一生お傍でお仕えします!!」ってなるわ……。
先森も「親」の前では、あんな表情するんだなと感慨深い。
それにしても、我玄と室長の関係って現状どうなってる&この先どうなっていくんだろう?
この二人のアダルティな話も、今後に是非期待したい。
 
ラストはバカップル……というか、先森バカが悪化した柳のターン。
柳が「好き(ハート)」しか言えないマシンになってますが、先森も何のかんの言いつつも、やぶさかではない様子でめでたしめでたし。
 

描き下ろし・俺だけが知ってる先森のこと

柳視点で、彼が先森を如何に愛しているかという話。
本編読んだら、そんな事は読者も先刻承知済みなんですが、本人的にはまだまだ全然語り足りなかったようです(いいぞ、もっとやれ)。
全編通してノロケの垂れ流し。
とにかく「かわいい(ハート)」、「好き(ハート)」、「愛してる(ハート)」のオンパレード。
 
片や、先森のツン成分多め&口が悪いですが、それもまた良きかな。
それが、たまに垣間見えるデレをさらに引き立てる。
Hシーンも#118-6が比較的大人しかったので(アレで?)、今回はかなりアクロバティックな体位にも挑戦。
なんか濡れ場というよりも、新手のペア競技に見えない事もないですが、二人が幸せならそれでオールオーケー。

『イエスかノーか半分か』(一穂ミチ/新書館ディアプラス文庫)感想【ネタばれあり】

イエスかノーか半分か【電子限定SS付き】 (ディアプラス文庫)

イエスかノーか半分か【電子限定SS付き】 (ディアプラス文庫)

イエスかノーか半分か (ディアプラス文庫)

イエスかノーか半分か (ディアプラス文庫)

 
一穂ミチ先生の『イエスかノーか半分か』の感想です。
クレイアニメーション作家×キー局のアナウンサー。
冒頭から主人公・計の性格&毒舌がインパクト抜群ですが、ただのギャグと勢いの作品ではありません。
お仕事小説としても優秀で、主人公である計と潮が、それぞれ一人の人間として如何に仕事と真剣に向き合っているかが伝わってきます。
 

『イエスかノーか半分か』(2014年11月8日発行)

あらすじ

旭テレビのアナウンサーで、確かなアナウンス能力と爽やかな王子様系のキャラで頭角を現す国江田計には、誰にも言えない秘密があった。
それはとんでもない猫かぶりだという事。
使えないスタッフやたるんだ同僚達を、内心では「愚民」と呼び、キャラに合わない古ジャージ、サングラス、マスクで正体を隠して牛丼などを片手に周囲を散歩するのが、彼の日課であり癒しだった。
ところがある日、素の状態で夜の街を歩いていた計は、昼間、仕事で出会ったクレイアニメーション作家・都築潮と再会してしまう。
幸い正体はバレず、とっさに「オワリ」という偽名を使った計だったが、なぜか潮と友達のような関係を結ぶ事に。
さらに潮は猫をかぶった「国江田さん」が好きなようで、事態はいよいよややこしくなってしまう。
交流する内にどんどん潮に惹かれていく計は、自分の本性を偽る事に苦痛を覚えはじめるが……。
おまけに、局の看板アナウンサー・麻生圭一のガン発覚により、夜のニュース番組「ザ・ニュース」のMCに急遽抜擢されてしまい、仕事の面でも大きな壁に突き当たってしまう。
 

感想

「イエスかノーか半分か」

まず計が長年飼っているとんでもない猫(自分のイメージにそぐわないものは完全に排除する徹底ぶり)と、周囲の人間を心中で「愚民」と呼んで憚らない、立て板に水の毒舌に口があんぐり。
テンポと小気味の良さで、否応なく一気に引き込まれるような感覚を味わいます。
しかしかなり強烈な毒舌でも、計から嫌な感じを受けないのは、彼の言っている事が当を得ているのと、彼がなんだかんだ言いつつも、アナウンサーとして研鑽を怠らない頑張り屋だから。
器用である事は確かだけれど、決して天才ではないんですよね、彼は。
 
片や、攻めの潮はマイペースかつ包容力のあるタイプ。
己に嘘をつかず泰然自若と生きている彼に、ほぼ24時間全方位に向かって気を張っている計が、素の自分を受け入れてもらい、どれほど癒されたのが納得できる。
当初は外面の良い「国江田さん」に惹かれたように見せかけて(実際、騙されていたんだけれど)、実は計の本質をきちんと見抜いていたのにもトキめきます。
ボロボロに使い込んだアクセント辞典を見て「国江田さん」に絆されたり、「オワリ」の正体を知らないとはいえ、当の本人に向かって「国江田さん」を褒めるエピソードなどにもニヤニヤが止まりませんでした。
 
計の正体を悟るまでは、潮も悩んだだろうな。
なんせ「国江田さん」と「オワリ」、まったくタイプの異なる人間を、ほぼ同時に好きになってしまったんだから。
彼の性格を鑑みるに、計の正体を知った後は、騙された怒りよりも、返って腑に落ちてすっきりした爽快感が勝ったに違いない。
計の正体を見抜いたきっかけも振るってます。
まさにアナウンサーという職業ならではの理由。
そして潮は計の事を本当に良く見てるんだなという事が、如実に伝わってくる。
 
計を支えつつ、でも甘やかしすぎない言動に、潮が一己の職業人として計を認めているのが伝わってくる。
潮に対する計の気持ちも、もちろん同じ。
二人の関係は恋人であると同時に、気心の知れた親友のようでもあり……。
二人が牛丼や焼き鳥を摘まみながら、駄弁っているのを想像するだけで微笑ましい。
いかにも「THE 男子」という感じで。
 
Hシーンも、その延長線上にあって、ぽんぽん飛び交う会話が面白い。
だからこそ、いつもは超強気な計が、潮に甘えたり、縋ったりするギャップがたまらん。
これには、普段は滅多に動じない潮も、さすがにメロメロですね。
 
お仕事小説という観点から見ると、華やかな舞台裏には、地味な工程や、目に見えぬ様々な努力があるんだなというのが、一つ一つの場面を丁寧に積み重ねる事によって語られています。
そして、どんなに逃げたいような状況でも、立ち向かわなければならない、ここぞという時がある事も。
実はそれはほとんどすべての職業に共通していて、社会人経験がある読者なら感慨を覚える方も少なくないはず。

 
特に熱い展開だったのは、クライマックスで計が「ザ・ニュース」初回のMCを務める場面。
潮の言葉に背中を押されつつ、見事やり遂げた計は、アナウンサーとしても、人間としても一皮剥けたのが感動的。
本番中は、読者である私も、脳内でドーパミンがドバドバ出まくるぐらい興奮してしまいました。
 

「両方フォーユー」

両想いになった後、賑々しくも幸せな日々を送る二人でしたが「もし潮以外に計の本性を受け入れる人間が現れたらどうなるのか?」という、中々重いテーマを孕んでいる続編。
二人の間に立ちはだかる当て馬(本人のキャラからすると、あまり「立ちはだかる」って感じじゃないけれど)で、計の後輩アナウンサー・皆川竜起の人物造形がかなり濃い。
計も樹も相当イイ性格していますが、竜起は同等か、それ以上の逸材。
あっけらかんと本音丸出しなのに、底知れないものを感じる。
潮ですら最初は「国江田さん」に緊張気味だったのに、竜起は計の本性を知ってもこゆるぎもしませんでしたからね。
おまけに仕事に関してもなかなか有能だし。
う~ん、侮れない。
 
仕事の都合で潮はアメリカに行ってしまい、その隙をついて、竜起が計にグイグイ迫ってくる。
さらに潮と電話でギクシャクしてしまった計は、ついに竜起に流されてしまいそうになるが……。
潮、緊急帰国してくれたのはありがたいけれど、受けにプロレス技を手加減無しでかける攻め、初めてみたかもしれない。
私が知ってるボーイズラブの「お仕置き」と明らかに違う(笑)。
まあ、それぐらい計を愛しているという気持ちの裏返しなんですけれど。
一方、計も単に自分の素を認めてくれる相手としてだけではなく、一個人としての潮が大好きなんだという事を再確認。
 
好きな相手を他人とシェアするなんて冗談じゃないですよね。
いつもは鷹揚な潮が、竜起に対して本気で怒っている姿が格好良い。
竜起に計の猫かぶりをばらさないように口止めするのも含めて、アフターフォローも万全。
両成敗という感じで、竜起に対して計に謝罪するように言うのも、同い年にも関わらず保護者の風格。
マジでできた彼氏ですね。
 
ここで若干しおらしくなりつつも、絶対謝罪したくないマンな計が非常に「らしい」ですが。
一応失恋したはずなのに、まったく悲壮感ナッシングな竜起もスゴイ。
彼に関しては、最後までつかみどころが見つからなかった。
のらりくらりとかなり振り回してくれたはずなのに、主人公二人や読者に悪感情を抱かせないのが、只者じゃありませんね。
まあ、その辺りは、竜起が主人公になっている番外編に譲るとして。
 
竜起が退散した後は、計の部屋でラブラブイチャイチャ。
これまで二人の関係は潮の自宅の中でほぼ完結していたような気がしますが、それだとなんとなく対等な二人らしくない。
計の部屋で二人が抱き合う事によって、本当の意味で彼らが結ばれたのを感じとる事ができました。
 
Hシーンと言えば、今回はラストを含めて三回となかなか豊富だった印象。 
個人的に萌えたのは、中盤のテレフォンチョメチョメ。
前々から何となく察していましたが、潮はかなりのムッツリだと確信。
言葉責めがいちいち楽しそうでなにより。
片や、無意識に潮のツボを撃ち抜いていく計も色っぽかった&可愛かった。
潮も不意打ちで、何度もイかされそうになってましたからね(笑)。
 
計も女性との交際経験はあるようだけれど、ずっと猫をかぶり続ける事に終始していたから、恋愛や性を楽しんだ経験ってほぼ皆無なんでしょうね。
だから同じ男同士にも関わらず、潮のツボが今ひとつ理解できず、不用意に連打しちゃうんだろうな。
だが、そこが良い。
これは潮も、さぞ開発し甲斐があるでしょう。

『恋するインテリジェンス(5)』(丹下道/幻冬舎バーズコミックス リンクスコレクション)感想【ネタばれあり】

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

 
丹下道先生の『恋するインテリジェンス(5)』の感想です。
今回は志山円の上司で、財務省関税局の課長・差形怜司と、彼と19年付き合っている、同じく財務省主計局の課長・古賀親國の物語がメイン。
差形はいつも円と土門をからかったりと飄々とした印象でしたが、この巻を読んで、それがガラリと変わりました。
 

『恋するインテリジェンス(5)』(2018年3月24日発行)

あらすじ

関税局課長の差形は、高校の後輩である古賀と19年間付き合いながらも、基本的にはヘテロの古賀と一度も肉体関係を結ぶ事ができずにいた。
満たされない想いを抱きつつ、他の男と関係を持ちながらも、古賀を手放せない差形。
だがある日、自分達の暮らす家に化粧品が残されていたり、見知らぬ人物から避妊具が送られてくるなど、古賀の裏に女性の影を見つけてしまう。
自分達が一緒にいるために苦肉の策で作ったルールが破られたと疑念を抱き、差形は古賀との別れを決意するが……。(「差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~」)
 

総評

恋をこじらせて○○年の人がうようよする『恋するインテリジェンス』ですが、それでも19年は長い。
赤子がそろそろ成人するぐらいの期間。
純粋に年数でいうと「初恋のシュヴァルツリステ」の鷹見×楚和の方が上かもしれないけれど、古賀×差形は生活を共にして、同衾などもしてますからね。
それで清い仲。
どうなってるの、N国の官僚のメンタル?
純愛通り越して、ちょっと怖いと思ったのは秘密です。
 
差形は土門×円との絡みを見ていると、もっと厄介なのを想像していたんですが、意外と言ってはなんですがすごく一途な人でした。
むしろ手強いのは相方の古賀。

フィクションだと、普段は細目&本気モードで開眼する人物は食わせ者だと相場が決まっているんですが、古賀もその例に漏れず。
鶏楽との、策士同士の対決も迫力があり、見応え抜群。
 
古賀がこれまで差形を抱かなかった理由も凄まじい。
何その絶望的な逆説。

出自のせいか、古賀はこれからも鬱屈したものを抱えているのは変わらないと思うので、この先、差形とどんな風に生きていくのか非常に気になります。 
 

恋するインテリジェンス class:rookie 002-6

武笠×深津の二度目の話。
武笠の懊悩が超平和で和みました。
忙しい教官に時間割いてもらって打ち明けた相談がそれ!?
そりゃあ、先森も青筋たてたくなります。
 
ぷらいべえとじぇっと。
ごうかきゃくせん。
えっ、それ、百歩譲って新婚旅行とかではなく、二度目のデートの話なんですよね!?
相変わらず御曹司の金銭感覚が崩壊してる。
深津がドン引く姿が目に浮かぶような……。
 
先森、藍染、千散、桃月の第118期BCハーレムと、それに翻弄される若造・武笠にも爆笑。
武笠は有能なのに、このなんか器用になり切れない初々しさの塩梅が良いですね。
いかにもお坊ちゃま。
演奏家などを、自分が雇っている人をすべて「さん」付けして呼んでいる点など、話し方にも生粋の育ちの良さが垣間見える。
しかし今はとりあえず、全速力で逃げて超逃げて。
怒りと嫉妬のあまり、鶏楽さんの瞳孔が開いてますよ。
鶏楽にとっては、藍ちゃんの手を握っただけで万死に値するというのが、ヒシヒシと伝わってきました。
 
後半はラブラブH。
深津から想いを返してもらえて良かったですね、武笠。
恒例の(?)「はあはあ」も当然スゴイ事になっている。
あまりにもスゴイので、何度言っているか素でカウントしてしまったじゃないか。

さすがに「私は、今、何をやっているんだ……?」と途中で我に返って止めたけれど。
発汗も半端ない。
正直、今すぐ病院に担ぎ込んだ方が良いレベル。
なんか霧(?)まで発生してるんですが……、深津への愛が深すぎて人体の法則まで捻じ曲げる男。
 
ラストは針生と眞御の逢瀬を間接的に邪魔する武笠。
次回は針生の復讐必死ですね。
ホント何やってるんだ、このポンコツ師弟。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~

ひいいぃぃいぃ、19年溜め込んだ鬱憤が完全に危険水域を超えていますね。
二人とも平穏を装いつつも、差形の「全部嘘だ」が恐ろしい。
長い前振りはすべて、差形が古賀と共にいるために時間をかけて身に着けた虚妄だった。
 
そして19年前の彼の傷つく様が切ない。
他の男と寝る理由が、最も愛する男を満たせず傷ついた自尊心を束の間癒す為って辛すぎる。
それでも手放せないって……、綱渡りのような無茶を犯しているとわかっていつつも、古賀の事が大切なんだな。
一方、柔らかい雰囲気を纏った古賀がふっとした瞬間に見せる素顔も厳しい。
 
差形が円をついつい虐めたくなってしまうのも分かるなぁ。
自分がこんなに苦しい恋愛をしているのに、あんなバカップルを職場で見せつけられたらね。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~ 2 前編

一見穏やかだけれど、実情は際どい岐路に立たされている差形と古賀。
おまけに官僚同士なものだから、仕事に関しても駆け引きめいた事をしなければならない。
これは心が休まらない。
差形がこんなに不器用で人間臭いとは、想像できなかった。
 
今回は基本的に財務省が中心の物語ですが、外務省や法務省など、各省庁の横のつながりが見えたのが面白かったです。
「初恋のシュヴァルツリステ」の鷹見×楚和はまだ本格的にくっついていなかったんですね。
3巻以来、ずっとこんな膠着状態が続いていたとは……、鷹見、可笑しすぎ気の毒すぎ。
まあ、モテ男がツンデレに振り回されるのは大好物なので、個人的には「もっとやってくれ」とお替り要求したいくらいですが(ヒドイ)。
気の毒と言えば、鶏楽の尻ぬぐいさせられる蔵本もおもしろ可哀想だった。
格上の二人を前に冷や汗タラタラ。
しかし鶏楽の下についていたら、否でも実力がつきそうですが。
ハッ、もしかして、鶏楽、そこまで見越して……るわけないか、彼の頭の中はほぼ100%藍染が占めているから(蔵本の事も0.001%ぐらいは考慮してくれているかもしれないけれど)。
 
今までトレーニーがいない事で、あまりクローズアップされなかった牛通堂も登場。
差形と友達だったんだ(ついでに鷹見とも)。
第118期TCの中ではかなりの常識人と見た。
なんかあまりにも真面過ぎるがゆえに、真っすぐだけれど歪んだ恋をしている差形の地雷踏み抜いたり、差形と古賀の痴話げんかに巻き込まれて哀れ。
古賀もあんまり威嚇してやるなよ(笑)。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~ 2 中編

冒頭、高校時代の差形と古賀。
これもまたとんでもない出会いだな。
王子様キャラがエロい先輩の魅力に撃沈した瞬間。
これで19年もまとまらなかったんだから、二人のこじらせ具合が尋常じゃないのをあらためて痛感する。
 
時間は戻って現在。
古賀が自分達のルールを破り、秘密を作っているらしき事に疲弊していく差形。
古賀が女性と密会しているのを目撃してしまい、キスも拒まれ、ラストは決定的な避妊具のプレゼント。
この辺りは読んでいて本当に辛かったです。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~ 2 後編

ついに古賀へ別れを切り出す差形。
対して、開眼し本性を表した古賀は、身も縮むほどの迫力ですが格好良かったです。
仕事の都合上、居合わさせた鶏楽も、イイ感じで煽ってくれる。
鶏楽、今まで藍染のヒモ成分が強かったですが、無茶苦茶できる男ですね。
そのギャップが良い(まあ、藍ちゃん以外の事象には基本的に興味なさそうですが)。
古賀と鶏楽、切れ者同士の丁々発止のやり合い。
こういうの大好き。
古賀と鶏楽は、この先も好敵手になっていきそうだ。
 
続いて、古賀に関するモヤモヤの一端の種明かしもされる。
千散、怖っ!!
ここまでするか!?
有能だからこそ、とことん標的を追いつめるえげつなさにガクブル。
まあ、痴話げんかに牛通堂を利用した差形の自業自得と言えない事もないが。
しかしそこは差形も常人ではないので、負けじと報復。
キャットファイト面白すぎ。
この二人も後々まで遺恨が残りそう。
 
自宅に戻り、あらためて想いをさらけ出す差形と古賀。
この人達も長年一緒にいるくせに、大概話し合いが足りない。
一度寝たら別れへのカウントダウンが始まるから抱けないって、とんでもない二律背反。
曲者揃いの『恋するインテリジェンス』の中でも、古賀の業の深さはトップクラスだと思います。
そんな古賀に差形がしてあげられるのは、とことん愛し愛され、ただ古賀の信頼を勝ち得る事のみ。
19年かかりましたが、やっと本質にたどり着きましたね。
 
ついに念願かなって結ばれる二人。
差形のシャツガーター、エッロっ!!
あんなストイックなシーツの下に、こんなとっておきのブツを隠していたとは……。
そして古賀よ、「性欲があまりない」ってどの口が言う!?
それ、単に好きな人とした事がなかったからでしょう!?
いわば本命童貞ってヤツ(このシリーズ、そういう人が枚挙に暇がないけれど)。
最初はどちらかというと差形が押し気味でエロい先輩全開でしたが、結果的には古賀のすげぇテクと絶倫具合(比喩じゃなく一晩中ヤってそう)で、あの経験豊富な差形がメロメロって、やはり只者じゃありませんね。
19年溜め込んだモノも伊達じゃなかった。
一度箍が外れたら歯止めが効かなくなるのは、このシリーズの攻めとしてはお約束。
 
ラストは再び見える古賀と鶏楽。
鶏楽、藍ちゃんが絡まなければフツーに仕事のできるイイ男なのに。
藍ちゃんが関わってくると、途端にプッツンしますね。
読者としては、それが面白いんですが。
一方、古賀も差形がいればその他の有象無象はどうでもいいって感じで、たとえ差形と思いは通じても、今まで抱えてきた仄暗さはこれからも変わらないんだろうな。
この二人、唯一の相手以外は眼中になしというスタンスが、とても似ています。
互いになんとなく気に食わないのも、所謂近親憎悪もあるんじゃないかと。

 

土門の饅頭怖い作戦

もはやお家芸となった土門と志山次官の不毛な戦い。
志山次官が土門を「害虫」とスマホへ登録しているのにボディーブロー食らいました。
どんだけ気に入らないの!?
土門は土門で、煽り芸を極めているというか、志山次官から円のプライベート写真やビデオをせしめようという作戦。
あれ、土門の一人勝ちかと思いきや、ラストで「……パパノホウガカッコイイデス……」という、強烈なクロスカウンター食らってた。
まさか三巻の伏線がここで活きてくるとは思いもよらなかったんだぜ。
まあ、最終的に割を食うのはいつも円なんですけどね(土門にベッドでスゴイお仕置きされそう)。
 

武笠深津のバディ訓練日誌

訓練とは名ばかりの、武笠と深津バカップルのエロ。
なんか武笠の手練手管が、師匠の針生に急速に似てきているような気がしないでもない(武笠は不本意かもしれないが)。
深津も平常運転でチョロ過ぎ。
藍染のトレーニーである以上、将来的には「フェミニン系エッチで物慣れたお兄さん」ポジションの後継者と目されていたと思うんですが、その道はかなり険しそう。

『蜜通』(エナリユウ/笠倉出版社CROSS NOVELS)感想【ネタばれあり】

蜜通【特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

蜜通【特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

【Amazon.co.jp 限定】蜜通(ペーパー付き) (CROSS NOVELS)

【Amazon.co.jp 限定】蜜通(ペーパー付き) (CROSS NOVELS)

 
エナリユウ先生の『蜜通』の感想です。
初恋の男の息子にアラフォー弁護士が迫られる超年下攻め。
かなりアクが強いですが、深みのある人物造形や緻密な心理描写を求める方におススメの作品。
 

『蜜通』(2019年2月9日発行)

あらすじ

高校生時代のクラスメイト・星野に多額の借金の申し出を受けた弁護士・榛名晄介。
実は星野は、榛名が密かに思い続けた初恋の相手だった。
星野を貶めつつも見捨てられない榛名は、彼や彼の息子・涼一の面倒を見る事になる。
だがその5年後、星野はガンで他界。
星野の意向を汲み、涼一を養子にするが、彼が高校生の時に榛名がゲイだとバレてしまう。
涼一の生活は荒れ、榛名もまた涼一を避ける生活を送る。
しかし、涼一が社会人になった頃、「アンタのことが好きだ」と告白され、体も翻弄されてしまい……。
 

感想

榛名の生い立ち、星野と涼一が榛名と同居する事になった原因、榛名への愛憎を持て余して荒んだ生活を送る高校生時代の涼一など、内容的には決して明るくはありません。
正直、とても読者を選ぶ作品。
ただ、ハマる人にはもの凄くハマる中毒性の高さも兼ね備えていると思います。

一文一文もとことん考え抜かれていて、主人公の榛名や涼一ばかりではなく、脇役のちょっとした一言にハッとさせられる事もしばしば。
 
困窮した生活と生活能力のない親の為、コンプレックスに苛まれてきた榛名が、なぜ星野のような一見冴えない男にこれほど捕らえられたのか?
星野からもらったリップクリームの空の入れ物を、肌身離さずずっと持ち続ける未練。
榛名と涼一の、法律的には養子にも関わらず、親子とは言い難い微妙な関係。
罪悪感や背徳感を抱えつつも、遥かに年下の、しかも初恋の相手の実子である涼一に惹かれていく想い。
ゲイとして、仕事を趣味にして生きてきた一人の男性の心情が、針を通すような綿密さで描かれています。
彼の高慢さの影に隠された優しさや弱さ、怯えなどが真に迫っていて、読者であるこちらも痛いくらい。
 
一方、攻めの涼一も、なぜ彼が義父である榛名にそこまで執着するのかが、物語全体を通して、強烈なリアリティを伴って胸に迫ってきます。
涼一にとって、榛名はまさに運命の人だったんだなと。
借金の形として、自分の母親の遺骨の一部を榛名に差し出したり、榛名を守りたいがために養子に入った経緯など、幼いながらにもの凄いものを背負っていた涼一。
終盤で明かされた、星野が榛名を頼った理由にも慄然としてしまった。
冒頭のシーンに象徴されるような、榛名と星野のパワーバランスが一気にひっくり返るインパクト。
お人好しな男の、どうしようもない打算。
涼一がこれに気づいた時には、複雑な心境だっただろうな。
 
ボーイズラブで主人公の初恋の相手というと、とても煌びやかな存在を想像してしまいますが、星野はどこにでもいるような地味な男性。
だが本作においては、絶対的な存在感を放っています。
榛名も涼一も、良きにつけ悪きにつけ、彼を忘れる事は一日としてないだろうから。
ただ父親の狡さを含む、様々な葛藤を乗り越えてきた涼一だからこそ、年長の榛名を包みこめる懐の深さを身につけられたんでしょうね。
 
脇役に目を向けると、榛名の大学時代の同級生で現同僚、そしてセフレでもあった岩下がイイ味を出していました。
ある意味、二人のキューピット役でもある。
初登場時は「なんか嫌なヤツそうだなぁ」と思っていましたが、その予想はハズレ。
包容力、財力、知力、容姿を兼ね備えた大人の男。
涼一が榛名を奪われるのではないかと、危機感を持つのも分かります。
榛名はあまり気付いてなさそうですが、岩下なりに彼を愛していただろうし、涼一も同じ人間を想う者として、それを感じ取っていたに違いない。
ただ岩下の場合は大人過ぎたのが仇になって、機会を逸してしまったような気がする。
榛名のようなウジウジした男を手に入れるためには、涼一のような若さゆえの無謀さで挑まないと難しいんでしょうね。
 
とにかく葛藤や軋轢を乗り越え、榛名と涼一とが結ばれた瞬間は幸福感でいっぱい。
二人とも長年飢えていた気持ちを、やっと満たす事ができた。
榛名はセフレがいたのにも関わらず、操を立てて、後ろの純潔を死守してきたのは正直凄まじいなと思いましたが。
なんせ涼一は若いから、これから榛名も色々な意味で付いていくのが大変そう。
それも幸せな悩みに他ならないだろうけれど。
 

二人の日々

本編の一か月後、一年後、八年後、それぞれを、攻めの涼一視点で描いた短編。
二人が両想いになった事や、語り手の涼一の性格もあり、本編よりも数十倍明るい雰囲気。
同じお話の中でも、時間経過に伴う二人の変化がきちんと感じられて、エナリ先生、やはりかなりの技量を持った書き手さんだなと。
二人のジェネレーションギャップや榛名の加齢も感じつつ、二人が積み重ねていく日常が愛しい。
涼一が相変わらず岩下に嫉妬していたり、二人が共同で車を買ったりなど、ちょっとしたエピソードにもニヤニヤしてしまいます。
年齢差による懸念なども吹き飛ばして、涼一がひたすら晄介さん大好きを貫いているのが気持ち良い。
 
あと涼一が若いという事もあって、二人のエロエロ日記でもある。
ちょっとS入っていたり、ガラココ使ったお道具プレイあり、消防士×弁護士のコスプレありと、バリエーションもなかなか豊富(全体的に榛名がチョロ過ぎ)。
涼一がレスキュー隊で体を鍛えている為、様々なプレイに対応できるのが美味しい。
40台のおっさん(八年後に至ってはアラフィフ)にもう少し手加減してやれよと思わないでもないが、これぐらいしないと榛名の不安は払しょくできませんからね。
そこがまた面倒くさ可愛いんですけれど。

『恋するインテリジェンス(4)』(丹下道/幻冬舎バーズコミックス リンクスコレクション)感想【ネタばれあり】

恋するインテリジェンス (4) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (4) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス  (4) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (4) (バーズコミックス リンクスコレクション)

 
丹下道先生の『恋するインテリジェンス(4)』の感想です。
今回はいよいよ武笠×深津のルーキーカップルが、てんやわんやの末に結ばれるまでが描かれます。
美しい外見とは裏腹に、恋愛経験のない深津が可愛くて仕方がない。
武笠のために、なけなしのお金をはたいてプレゼントを用意したり、手料理をご馳走したり……。
これは武笠ならずとも、メロメロになります。
 

『恋するインテリジェンス(4)』(2017年3月24日発行)

あらすじ

バディを組んでしばらく経つにもかかわらず、ギクシャクした雰囲気を拭えない武笠と深津。
いかにも遊んでいそうな深津に複雑な気持ちを抱く武笠。
そして深津もまた、武笠の事が気になりつつも、貧困に喘ぐ自分と財閥の御曹司である武笠との境遇の差をひしひしと感じていた。
おまけに、第128期の同期である白戸が武笠に急接近し、深津の疎外感は一層深まっていく。
 

総評

まず巻頭の~華麗なる「恋するインテリジェンス」の世界~がスゴイ。
情報がびっちり。
複雑な組織図、専門用語、多数の登場人物達。
この作品の世界観の作りこみが半端ではない事が分かります。
まさに「お前ら、ちゃんと予習復習しとかないと授業(?)に付いていけなくなるぞ!!」という感じで。
内容は下ネタ炸裂なんですけれどね。
ここまで舞台設定を整えて、真面目にエロエロエンターテインメントやっている、その心意気が大好き。
 
今回は第1巻からずっと引っ張ってきた武笠×深津がいよいよくっつくという事で、話数もかなり割いており、気合が入ってます。
個人的にも武笠×深津は好きなカプの一つなので、読んでいて無茶苦茶楽しかったです。
予想以上にちゃんと恋愛していてキュンキュンしました。
いや、このシリーズ、肉弾戦が多いから、きちんと手順を踏んで両想いになっていく過程がなんだか新鮮でした(まあ、彼らも最終的には肉弾戦なんですが)。
 
あと武笠や他の国際情報統括官組織の面々に振り回される深津が可愛すぎた。
このルックスとピュアさで、よく今まで無事だったなと。
亡き父から莫大な借金を引き継ぎつつも、思い出の詰まった家を守ろうとしている姿が健気。
攻めの武笠も超お金持ちで格好良いのに、肝心なところで鈍いのがたまらん。
二人がちょっとした事ですれ違うたびに、終始ニヤニヤする不気味な生き物と化していた私。
 

恋するインテリジェンス class:rookie 002-1

冒頭、小松菜一束40円に喜びを禁じ得ない深津がキュート。
しかし直後に、ファッション雑誌主催のパーティーで超VIP待遇な武笠と、住む世界が違うのだなと自覚させられるのがツラい。
武笠もいまだに深津が遊び人だと勘違いしているし、相変わらず微妙な空気の二人。
おまけに武笠と同期の白戸の仲が怪しげでヤキモキさせられます。
深津が武笠のために真心こめて作った手作り弁当も、結局食べてもらえなかった。
王道少女漫画チックな設定なのに、『恋するインテリジェンス』だと、途端に異彩を放っているように見えるのは私だけ?
 
まあ、後半はいつものノリなんですが。
 

TCの体に一切触れることなく、TCを勃起状態にさせること。
相手の体に触れずに、相手を興奮させなさい。

 
「いや、先森教官、超真面目な顔で何おっしゃってるの!?」とか、ツッコむのは野暮なんでしょうね(ツッコむけれど)。
  

恋するインテリジェンス class:rookie 002-2

BCなら皆できて当たり前。
これぐらいのことができなくて、CⅡSEAが務まると思ってるのか。

 
す、すげぇな、N国の官僚達。
求められるハードルがあらゆる意味で高すぎ。
もちろん、物慣れない深津は困惑するばかり。
そして考え付いた苦肉の策にくっそ笑いました。
ぼ、望遠鏡!?
エリートの心理、凡人の私にはマジ分からん……(遠い目)。
 
確かに、例えば江戸川乱歩の著作群でもテーマになっているように、窃視が人を高揚させるというのは、かなり的を射ているんですけれどね。
武笠の方も明らかに新たな性癖の扉を開いてしまったようだし。
深津を追いつめて、楽しんでいるようにしか見えないんですが。
胸もんじゃって「この変態っ」と殴られるのも、ラブコメのお約束ですね。
 
実習で暴走しそうになった武笠は、直属上司の針生に注意を受けるが……。
職場で眞御とイチャイチャパラダイスなこの人にだけは、武笠も言われたくないだろう。
 
そんな中、深津の借金問題の悪化や、武笠と白戸の親しげな関係(武笠×深津のバディ交代!?)など、相変わらずエロとシリアスの狭間で翻弄される読者。
後半は違法カジノ絡みの潜入調査。
武笠×深津に与えられた司令は……。
 

派手なSEXしろ。

 
いや、ターゲットの興味を引く方法、他にもあると思うんだけれど、よりにもよってソレ!?
これ、単に鶏楽の趣味じゃないよね!?
 

恋するインテリジェンス class:rookie 002-3

表紙のTCの身長比較、皆、デカいなぁ。
身長190cmオーバーどころか200cm近いのもざら。
股下も100cm以上だし、どうなってるんだ、この国家組織。
BCからして170cm台がうようよしてますから、このぐらいガタイがよくないと抱けないんだろうけれど。
 
前回から引き続き、上司命令でSEXする事になってしまった武笠×深津。
まあ、あくまでフリのはずだったんですが。
深津に拒まれた事によりヒートアップしていく武笠。
知らぬ事とはいえ、初心者にそんなご無体な……。
我々にとってはご褒美なんですけれどね。
もっとえげつない事いっぱいしちゃったのに、キスひとつで戸惑うのが甘酸っぱい。

惹かれつつも、さらに空回りしていく二人。 
せっかく武笠からプレゼントされたオーダースーツ着て待っていたのに、任務に誘ってもらえなかった深津が切なすぎ。
暗い部屋の中で、一人正座してる姿を見ていると、良い子良い子してあげたくなる。
確かに深津も分かりにくいけれど、武笠もまだまだ修行が足りんのぅ……。
そう言えば、彼ら、まだ20代前半の若造なんですよね。
あのルックス&迫力だから、その事をすっかり失念しておりました。
 

恋するインテリジェンス class:rookie 002-4

今回はBC達の女装が麗しかった。
リアルでやったら罰ゲームですけれどね(見る方にとっても見られる方にとっても)。
彼らならまったく問題ナッシング(他の職員にセクハラされる事に変わりはありませんが)。
 
先日、ホテルで深津のいやらしい姿を見てしまって以来、あ~んな夢やこ~んな夢を見てしまう武笠。
うんうん、アオハルアオハル。
おまけに罪悪感や苛立ち、嫉妬から心にもない言葉を投げつけて、深津を傷つけてしまう。
 
一方、深津は白戸へのコンプレックスに苦しみつつも、武笠に彼の愛用ブランドのデウハウスのボールペンを誕生日プレゼントとして用意したり、シャツのボタン付けしてあげたり。
なにこの嫁最高か!?
貧乏なのに涙ぐましい努力でプレゼントの為の資金を調達したり(とりあえずパンツを売らないで済んで良かった)と、これで深津を悲しませたら、武笠、男じゃない。
ラスト、二人の距離がやっと縮まったのが感じられて本当に良かった。
まさか『恋するインテリジェンス』に感動させられる日が来ようとは……!!
 

恋するインテリジェンス class:rookie 002-5

怒涛の展開の最終回。
冒頭、武笠と深津のぎこちなさに萌え。
ここでいつもの『恋するインテリジェンス』なら寝技で一本それまで(?)になりかねないんですが、このちょっとずつ互いの事を知っていくジレジレ感がたまらん。
大の大男がちゃぶ台囲んで食事するシーンは「新婚かよ!?」な雰囲気だし、二人でお布団を共有するのも良いですね(もちろん、この時点でHは致しません)。
だが、その時間も永遠ではない。
自分のために開かれる超セレブな誕生パーティーに出席するため、帰らなければならない武笠。
やはり彼ら二人は住む世界が違うのか?
 
その後、ひょんな事から武笠と白戸が親しげにした理由が明かされる。
白戸、真面目な外見からは想像できないほど、ヘビーな人生を歩んできたんですね。
そしてかなりの木菜ガチ勢だった。
つーか、木菜さんが格好良くて惚れる。

効率重視&クールなんだけれど、それでも一人の人間の人生を変えてしまったんだから凄い。
初登場時はもっとオドオドした人かと思っていましたが、これは嬉しい誤算。
 
誤解も解けて、さらに良い雰囲気になった武笠と深津だったが……。
ところが、ここで深津の借金問題が急浮上。
おまけに銀行員の園目は、借金返済(17億ってどんなアコギな商売!?)を迫るばかりではなく、見目麗しい深津自身も狙っていた……、というか、これ、普通にストーカーですよね……。
そこへ深津への想いを自覚し、この度スパダリに進化した武笠が登場。
古き良き警察ドラマも真っ青の、大量の車で深津宅へ乗り付ける。
「連れて行け」って、これ、園目さん、どこに連行されちゃったのかな?
まさか東京湾辺りに沈(以下省略)。
 
ここからは高笠×深津、二人っきりのプロポーズタイム。
高笠、このシリーズ界隈ではかなりの朴念仁だと思っていたけれど、ごめんなさい、彼の事を甘く見てました。
さすが、『恋するインテリジェンス』界の攻め、輝くような愛の告白をぶちかましてくれる。
いや、比喩でもなんでもなく、吹き出しがトーン処理でキラキラしてますからね。
セレブは吹き出しからして平民とは違うのだなと、目から鱗が落ちる。
 
さらに、財産の残高証明書類、戸籍謄本、人間ドックの結果報告書まで持参。
御曹司の愛は予想以上に重かった。
もちろん、深津の返事はOK。
 
だがこのN国、そもそも法律上でも男×男の結婚は認められているんだろうか?
武笠財閥の権力をもってすれば、法律を変えるのも可能かもしれませんが。
まだまだこの世界には不思議がいっぱいだ。
 
翌日。
深津の事を気に入っていた同僚の蔵本に、深津と婚約した事を報告に行く高笠。
牽制の意味も多分にあるんですけれどね。
ここで高笠が深津へ密かにSPをつけ、過去の恋人についても調査しているのが発覚。
やっぱり、お金持ち、超怖い。
でも高笠が蔵本に「まじかよ、正気か」と問われていましたが、大丈夫ですよ。
N国の国家システムの狂気性と比べれば、全然問題ないレベル。
 
それはそうと、高笠、深津大事さからたまに歯止めが利かなくなるけれど、見事なスパダリっぷりだったと思います。
I倉実習以前のH禁止ルールがあるとはいえ(これまた今さらのルールですが)、深津とキスや同衾していても一線超えない。
優しく包み込む感じがすごく良い。
本当は愛しい深津を滅茶苦茶にしたかっただろうに。
個人的には「頑張ったで賞」か「我慢強いで賞」を進呈したい。
深津が家や家族を如何に大事にしているかや、彼の繊細さを理解してるんでしょうね。
 
そして後日。
満を持してのI倉実習=H本番。
おまけに深津の純潔をとうとう知ってしまった高笠。
そりゃあ、色々な部分も爆発するよね。
なんか湯気やら、大量の汗やら、分泌物が凄い事になってるし……、目は虚ろだし……。
彼の様子を観察してみるに、人間、やっぱり我慢は体に良くないよねと(「優しく包み込む感じがすごく良い」と言った舌の根も乾かぬうちから)。
結果、上司の針生と同じく、新たな伝説を作りましたとさ。
うん、この師匠にして、この弟子という感じ。
「はあはあ」カウンターは、師匠をも勝っていたような気がしないでもない。
 
とりあえず、第二室所属第128期官、I倉実習全員合格で大団円。

描き下ろし・class:rookie 002-1 sidestory 会議の後で

002-1でジャンキー絡みの潜入捜査から帰ってきた後の柳と先森の会話。
柳が先森に寄っかかっている姿に、長い時間を共有してきたバディならではの信頼感が漂っている。
柳が茶々を入れて、先森が塩対応するのがこのバディのデフォですが、この二人も色々と訳ありの様子ですね(室長が絡んでる?)。

『ジョシュ・ラニヨン短編集 So This is Christmas』(ジョシュ・ラニヨン/新書館モノクローム・ロマンス文庫)感想【ネタばれあり】

So This is Christmas アドリアン・イングリッシュ (モノクローム・ロマンス文庫)

So This is Christmas アドリアン・イングリッシュ (モノクローム・ロマンス文庫)

So This is Christmas (モノクローム・ロマンス文庫)

So This is Christmas (モノクローム・ロマンス文庫)

 
ジョシュ・ラニヨン先生の『So This is Christmas』の感想です。
表題作であり、アドリアン・イングリッシュの完結編「So This is Christmas」。
かつて一度だけ肉体関係を持った、元泥棒とFBI捜査官のクリスマスの再会を描く「雪の天使」。
FBI捜査官が、束の間の恋人だった行方不明の刑事を捜す「欠けた景色」。
他にショートショート二編を含む短編集。
表紙イラストの、アドリアンとジェイクの笑顔を目にしただけで幸せになれる一冊。
 

 

『ジョシュ・ラニヨン短編集 So This is Christmas』(2017年12月25日発行)

「雪の天使」

あらすじ

10年前にFBI特別捜査官のロバート・カフェと一度だけベッドを共にした元・宝石泥棒のノエル・スノウ。
あるきっかけで平衡感覚などの機能を損傷した彼は、今現在は泥棒稼業を引退し、牧場を経営しながら小説を書いていた。
昔、カフェを虚仮にする形で別れてしまったが、実は彼にずっと恋慕を抱いていたノエル。
そんなノエルの前に、カフェが再び姿を現す。
ノエルの罪はすべて時効を迎えているはずなのに、カフェの目的は何なのか?
ノエルはカフェの真意が分からず、戸惑いを覚えるが……。
 

感想

10年越しのぎこちない恋愛を描いたラブストーリー。
都会を離れた牧場風景をバックに、ノエルのもとへ隣人達が持ち込むトラブルを共に解決しながら、二人は少しずつ距離を縮めていく。
そんな、ちょっと浮世離れした展開が、クリスマスという時期にピッタリ。
 
登山中の滑落により、平衡感覚を失い、泥棒稼業から足を洗ったノエル。
飛行機事故で突然両親を亡くし、クリスマスを一緒に過ごす相手のいないカフェ。
ノエルがずっとしたためていたナッシュ・ブルーシリーズが、泥棒・ナッシュが自身をゲイだとカミングアウトし、FBI捜査官・リチャード・クロスに逮捕される形で完結した事。
その他、様々な要素が絡み合い、10年間想いを温めつつ、もう一歩のところで踏み出せずにいた二人を後押ししたというのが、実にラニヨン作品らしい。
元・泥棒とそれを追っていたFBI捜査官という、この上もなく深い溝を挟んだ間柄に、どのように折り合いをつけていくかも丁寧に綴られています。
 
キャラクターに目を向けてみると、物慣れているようで、恋愛に不器用過ぎるノエルの言動がいじらしい。
自分とカフェをモデルにして小説を書いたり(しかもシリーズ化して人気作品になってるし)、10年間、年末にカフェへ留守電入れ続けたりと、よくよく考えると「えっ、それってどうなの?」という部分も見受けられますが。
それでも、可愛いものは可愛いんだから仕方がない。
カフェも、あの仏頂面でノエルを始めて見た時から「天使のような顔」だと思っていたって……、「はいはい、ご馳走様」としか言いようがない。
ラストの、ノエルの長距離留守電をネタにした、カフェの一言も洒脱ですね。
翻訳物の醍醐味。
 

「Another Christmas」

「雪の天使」の1年後を舞台にしたショート・ショート。
直前にインフルエンザになってしまったノエルの代わりに、あの強面のカフェが、料理やプレゼントをせっせと用意したのを想像すると、それだけでほんわかとした気分になります。
数奇な縁で結びついた為か、幸せを感じつつもなかなか浸りきれなかったノエルが、やっと本当の意味でカフェを信じられたのも良いですね。
最後のノエルの言葉も、二人の始まりを彷彿とさせる、どこか映画チックな幕引き。
 

「欠けた景色」

あらすじ

FBIの研修の為、アイダホ州を訪れた捜査官・ナッシュは、地元警察の警部・グレンと急速に惹かれ合う。
しかしナッシュの勤務するバージニア州とアイダホ州の距離はあまりにも遠く、研修後、未練を残しながらも一度は別れを決意する二人。
けれども、ナッシュはどうしてもグレンを忘れられず、彼に連絡を取ろうと試みるが……。
ナッシュはその電話で、グレンがナッシュを空港で見送った直後、行方不明になった事を知る。
 

感想

刹那の出会いと別れ。
そんな泡沫のような二人だけの時間を送った後、愛する男が受けた偏見や差別、グレンと肉体関係を持っていた同僚の存在など、生々しい現実をまざまざと見せつけられるナッシュが切ない。
だが幸いにも、グレンは一命をとりとめた。
今この瞬間、ナッシュにとっては「グレンが生きていてくれた」という事が全てなんですよね。
ナッシュがグレンを発見した時の「ああ。俺の人生で……最高の、ラッキーデイだ……」という言葉が胸に刺さる。
この先、ナッシュとグレンの関係がどうなっていくかは神のみぞ知るですが……、二人の生末が大変気になりつつも、この物語はここでピリオドを打つのが最良なんでしょうね。
いつまでも芳醇な余韻を味わっていたい。
そんな気分にさせてくれる名短編。
 

「Christmas in London」

ロンドンでリサを始めとした家族と過ごしたアドリアンとジェイク。
しかし、初めて一緒に過ごせるクリスマスを二人っきりでいたいアドリアン達は、早めに旅行を切り上げるというショート・ショート。
どんな名所や美しい情景も、愛する人とのイチャイチャに敵わないって事ですか。
はあぁぁあぁ、数巻前の展開からは信じられないほどスイーーート!!!
なんだコレ?
本編があまりにも辛すぎて、ついには現実逃避した私が見た夢なんじゃないだろうか?
そんな疑念を抱いてしまうくらい、砂吐きそうな展開。
ジェイクの口癖の「成程?」も、以前より滅茶苦茶甘く響いているのは、きっと私の気のせいじゃない。
 

「So This is Christmas」

あらすじ

ロンドン旅行を早めに切り上げて、経営するクローク&ダガー書店に戻ったアドリアン。
だが、義妹であるナタリーと従業員・アンガスの微妙な関係や、時差ボケなどが彼を悩ませる。
そんな彼の前に姿を現したのは『アドリアン・イングリッシュ(2) 死者の囁き』で窮地を救ったケヴィン・オライリーだった。
ケヴィンは行方不明になった恋人・アイヴァ―・アーバックルを捜しており、素人探偵の手腕を見込んで、アドリアンに助けを請う。
一方、ジェイクもアイヴァ―の家族から、偶然にも彼の捜索依頼を受けるが……。
 

感想

「Christmas in London」に引き続き、幸せの過剰摂取で死ぬ。
これはまさに、アドリアンやジェイクに感情移入して苦しんだ読者に対する、ラニヨン先生からのご褒美であり、クリスマスプレゼントですね。
アドリアンとジェイクの事だから、たとえ二人の仲が安定しても、ケヴィンの恋人の行方不明事件にナタリーのまさかの妊娠など、騒動は引きも切らない。
しかし現在の、互いを信じ尊重する二人なら、何が起こっても大丈夫だと自信を持って言えます。
それだけ、彼らは苦しみも痛みも共有し、様々な壁を乗り越えて、今ここにいる。
 
とにかく、彼らの言動すべてが、相手への愛に溢れています。
もう、語り手であるアドリアンのナレーションからして違う。
通常通り、ウィットと皮肉に富んではいるものの、ナチュラルにジェイクの事を惚気てきますからね。
破壊力が凄まじすぎて、油断できない。
ボーっと文字を追っていると、私の心臓がトキメキでやられる。
「アドリアン、こんな人だったっけ?」と遠い目をしてしまう事頻り。
幸福って本当に人間を変えるんですね。
 
ジェイクはジェイクで、1巻の頃と比較すると「お前、誰だよ!?」というぐらい別人(まあ、あの時点ではアドリアンが有力容疑者だったせいもあるが)。
ジェイクってなんとなく頑固一徹なイメージがありますが、一度こうと決めると愛情表現をまったく惜しみませんね。
時速200キロぐらいのストレート超剛速球で攻めてくる(?)。 
とにかく甘い。
おはぎにシロップぶちまけたぐらい甘い。
周囲の人々が「ジェイクはアドリアンに甘い」と言っているのにも、激しく同意。
 
ただここで誤解してほしくないのは、ジェイクの愛の言葉は、装飾や美辞麗句が激しいというわけではないんです。
どちらかというと訥々と訴えてくる系。
だが、それが掛け値なしの本音だというのが伝わってきて、非常に説得力がある。
過去にアドリアンを傷つけ続けた罪悪感もあるんだろうけれど、自分を捻じ曲げて生きてきたジェイクだからこそ、唯一無二の人へ素直に愛を囁ける幸せを享受しているんだろうな。
 
アドリアンが少年時代を過ごしたポーターランチの家での、二人+ペットの送る生活はまさに理想の家庭そのもの。
かと言って、クローク&ダガー書店のフラットで味わった艱難辛苦や喜び、二人で分け合った温もりも、決して忘れていないのが良いですね。
Hシーンももちろんラブラブ。
まさかリバがあるとは思いもよりませんでしたが、これまでシリーズを通して読んでいると、二人にとってはとても自然な流れのように思えます。
リバが苦手という方も少なくありませんが(実際、私も率先して手に取る方ではない)、この二人のシーンには必然性があり、本当に素敵なので、多くの方に是非目を通していただきたい。
これから二人が、肉体的にも精神的にも何度でも結ばれるのは、決して「特別」な事ではなくて「日常」なのだと……、そんなかけがえのない幸福を読者である私も噛みしめる事ができました。
 
あと懸念事項としては、ジェイクをゲイだと認められない彼の家族の事が残されていますが……。
終盤のニューイヤー・パーティーで、一応雪解けの兆しが見えましたね。
もちろん、すべてがパーフェクトとはいかず、ジェイクの元妻・ケイトが素敵な女性であるという事は行間から察せられるし、わだかまりが残るのは当然です。
ラニヨン先生の作品を読んでいると如実に感じますが、右から左へ荷物を移動するように、人間の感情は簡単には割り切れない。
しかし、そこで希望を捨てる事はない。

アドリアン達の人生は、これからも続いていくのだから。
大事な家族と迎える、温かなニューイヤー・パーティーが、それを象徴しています。
 
そしてラストは、ついにやってきました。
ジェイクの万感を込めたアドリアンへのプロポーズ。
これは第三巻の悲しいシーンと対になっているから、なおさら涙腺を刺激されます。
ジェイクのプロポーズの言葉も、アドリアンの答えも最高&ラニヨン先生お見事でした。
短いセンテンスの中にも、これまでの彼らの遍歴が、まるで走馬灯のように脳裏を過る。
とにかく感慨ひとしお。
「二人とも末永くお幸せに」と、こちらも多幸感に満たされながら、最後のページを閉じました。

『恋するインテリジェンス(3)』(丹下道/幻冬舎バーズコミックス リンクスコレクション)感想【ネタばれあり】

恋するインテリジェンス (3) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (3) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス  (3) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (3) (バーズコミックス リンクスコレクション)

 
丹下道先生の『恋するインテリジェンス(3)』の感想です。
今回、国際情報統括官組織のメンバーが一気に大量増加。
目の保養以外のなにものでもない。
あと、凄い特殊性癖も次々に炸裂。
萌えるというよりも、口をあんぐり開けてながら、ひたすらページをめくる事しかできませんでした。
 

『恋するインテリジェンス(3)』(2016年3月24日発行)

あらすじ

財務省の官僚・志山円は、同じく財務省勤務の恋人・土門統英が、円を溺愛する義父・志山次官と何かと張り合う事で、頭を悩ませていた。
そして、義父への挑発を止めるまでキスはお預けとしたために、ついには土門ともめてしまう。
そんな中、N田町の陰の実力者・中富剛昭自由共和党顧問の屋敷に呼ばれた円は、そこに集った政治家達からアブナイ接待を強要されてしまい……。
土門は円の危機を救う事ができるのか?(「数式は鷹に恋をする 2」)
 

総評

政治家のおっさん&じーさん達が超絶キモい(一応褒めてます)。
彼らの言動一つ一つがとてつもないインパクトで、夢にまで出てきそうな不気味さ。
あながち「そんな荒唐無稽な」と言い切れないのが複雑で、人間の醜い欲望を目の前に突きつけられた気分。
そして、魑魅魍魎共に翻弄される、美しき官僚達が倒錯的&エロい。
丹下先生、読者が変な性癖に目覚めたらどうしてくれるんですか!?(今さらか……)
 
怖気の走りそうなおじさん達の言動に毒された後は、今回初登場した国際情報統括官組織の麗しき面々を拝んで、メンタル回復に勤めましょう。
どのキャラも個性的で、彼らそれぞれのお話が気になって仕方がない。
中でもとりわけ強烈なのが秋草室長。
眼帯しているし、やりたい放題なところや危うい雰囲気が「この人、本当に官僚か!?」と思わないでもないですが。
純情な眞御はともかく、あの超然とした先森ですら翻弄されていますからね、侮れない。
この時点では、TCなのか、それともBCなのかも曖昧だし、興味は尽きません。
 

恋するインテリジェンス class:rookie 001.5

武笠×深津の、いまだに微妙な空気を醸すカップリングが主役。
武笠、予想以上に強大な財閥企業の御曹司でビックリ。
おまけにバックグラウンドが、これまた異様に作りこんである。
第1巻で鳥もちくっ付けられたり、針生×眞御のHをデバガメさせられた時は、こんな属性てんこ盛り人物だとは思いませんでした。
もっとたたき上げのキャラだと……。
キメキメのジョジョ立ち(?)にも笑う。
カッコいいはずなのに、どうしてこんなに可笑しいのか!?
あと4L&馬並み……、まあ、前巻のブツを見せられるとね、むしろそれ以上あったんじゃないかと……。
深津の前に、大げさではなく塔のようにそそり立っていましたから。 
 
一方、深津は今回貧乏キャラまで付与された。
美形で品のある登場人物が、実は赤貧洗うが如しなのは、古くは『山田太郎ものがたり』(森永あい)など、正直珍しくはない。
だがその設定が廃れないのは、やはりギャップによる楽しさが普遍的だから。
武笠家の持ちビル(?)と深津の慎ましやかな家(私はこれでも十分だと思いますが)の対比や、一人寂しく晩御飯をすする深津の姿が、悲しくも面白かったです。
あと武笠のために、四日分の食事代つぎ込んで一枚の下着を買ってしまったのも健気。
深津は元々美人さん&ツンデレで好きなタイプの受けなんですが、今回で彼の新たな魅力に開眼。
武笠と深津が本格的にくっつく話が待ち遠しくなる、そんな回でした。
 

Call me PAPA

実の親を亡くした円が志山次官に引き取られ、親子間の愛情を徐々に育んでいく物語。
志山夫妻に実子ができて不安になったり、敬愛する義父の後を追って官僚の道を選ぶ円の姿に涙。
ショタ円は「カワイイは正義」の権化だし、志山次官はとても温かい人柄でホッコリするし、志山次官の奥さんも竹を割ったようなイイ性格をしているし、普通に良い話のはずなのに……。
なぜか『恋するインテリジェンス』界隈だと異彩を放ってしまうのが不思議。
 
志山次官も可愛い円が選んだ恋人が、よりにもよって土門のように一癖も二癖もあるような人物なんだから、心配にもなりますよね。
さすがに麻酔銃用意するのは、倫理的にどうかと思いますが……。
土門も「父の日のプレゼント」とか、「既成事実」とか、呼吸するが如く煽るのやめぇや(笑)。
 

数式は鷹に恋をする 2 前編

土門と志山次官、高スペック男共が繰り広げる極めて低レベルな戦いに、円の頭痛の種の絶えない。
おまけにこのぶっ飛んだ世界観の為、考えも及びませんでしたが、男性同士で付き合っているというのも、かなりのリスクなんですよね……。
……って、あれ、正直、その辺、どうなんだろう?
皆、あまりにもあっけらかんと男同士でチュッチュしているから……、N国のスタンダードがよく分からん。
職務中のはずの某事務次官が、溺愛する息子に「パパの方が(恋人より)カッコイイ」と強制的に言わせようと必死な姿に「こんなN国が、この期に及んで男×男ごときで目くじら立てるか?」と疑問を呈しつつ。
とにかく、何らかのリスクがあるんだと、自分に強く言い聞かせる。
「おまえと付き合っているという事実が、いったい俺にどんなダメージを与えるって?」の円が毅然として格好良かったし、土門の珍しいテレ顔が見られたので、ここは良しとする。
 
後半は罠にはまり、気持ち悪い政治家達に捕まった円。
いやぁ、ホント嘘でも大袈裟でもなくKI・MO・Iです。
 
挙句の果てにノーパンしゃぶしゃぶとな!?
 
その昔、ワイドショーを騒がせた、無茶苦茶懐かしいキーワード。
このネタをボーイズラブに使おうという、丹下先生のセンスに脱帽。
そして、しゃぶしゃぶを見るたびに、円の奇麗な生足を思い出して、ニヤついてしまいそうな自分を殴りたい。
 

数式は鷹に恋をする 2 後編

ノーパンしゃぶしゃぶだけでも「うわぁ……」とドン引きですが、この化け物共のセクハラは留まるところを知らず。
もういちいち書くのもおぞましいので控えますけれど、「土門、早く円を助けに来て!!」と、読者である私ですら涙目状態。
 

今はちょっとすれ違ってるけど、土門が、そうきっと、今動いてくれてて、全部、穏便に片づけてくれる。

 
そこへ期待に違える事なく、土門が颯爽と登場。
なんとハリウッド映画並みのカーアクションで。
とりあえずこの作品に関わる人間全員(読者含む)、「平穏」という単語の意味を、50回ぐらい辞書で調べてきた方がいいと思う。
これ、下手したら死傷者出てましたよね(笑)。
 
まあ、土門も円の事に関しては歯止めが効かないと、以前から自己申告してましたけれどね。
ここまでとは、さすがに予想もしませんでしたが……、とりあえず円にちょっかい出すヤツは問答無用で「Go to hell!!」なのは了解しました。
あと志山次官と張り合ってしまうのは、劣等感ゆえだったというのが、なんだか可愛い。
 
身を挺して円を守った土門を目の当たりにして、志山次官も思うところがあったようで(彼の地位をもってしても、政財界の黒幕には太刀打ちできなかっただろうから)。
「れ…れ…れ、れ、礼を…言う…」が、すっごく嫌そうで噴き出しましたが。
 

あなたの大切な円さんは、僕が命に代えてお守りします、必ず。

 
こんな台詞を親に向かって堂々と宣言されたら、志山次官でなくとも認めざるを得んわ。
円への愛の言葉も誠意に溢れていたし(敬語なのが厳粛な雰囲気を醸し出していて、より一層トキめく)、王子様キャラの面目躍如。
濡れ場の言葉責めは、完全にオヤジ入ってましたけれどね。
よりにもよって、円の羞恥を煽るためのシチュエーションに利用されたと知ったら、志山次官も憤死するんじゃないか?
 
土門というキャラは、今まであまりにもキマリ過ぎていて、逆に内面を推し量りづらかったんですが、今回は彼の意外な魅力満載でした。
円があれほど惚れるのも分かるなぁ。
 

初恋のシュヴァルツリステ

タイトルのシュヴァルツリステ(schwarze Liste)はドイツ語で、英語で言うところのブラックリスト。
法務省検事(34)×警備課長(38)の幼馴染同士。
年下攻めだぜ、きゃっほ~い。
年齢も男盛り同士で美味しいです、むしゃむしゃ。

彼らもまた、積年の想いをごじらせちゃった系男子。
『恋するインテリジェンス』の8割方がそれですが、個人的には大好物なので一向にかまいません。
それどころか、どんどんお替りプリーズ。
わんこそばぐらいのスピードで来てくれても、一向に構いません事よ。

受けの楚和がとにかく可愛くてなぁ……、一見クールなのに、攻めの鷹見への初恋と童貞を引きずる38歳がいじらしい(童貞なのは生涯覆らなさそうですが)。
エスコート役に、鷹見にどことなく似た庵上を選んでしまうのもね。
自分の魅力をまったく理解していないのも……、受けにありがちですが、よく今まで最後のボーダーラインを死守できていたなと。
鷹見も初恋の楚和が美し過ぎで、理想がエベレスト級になっているなら、なぜその思いっきりの良さで、本人にアタックをかけないのか……。
この国、男同士でもほぼ問題ナッシングだし、ぶっちゃけ開き直った者勝ちなんだから。
 
濡れ場に関しては、第三者に見られながらという、こちらも特殊なシチュエーションですね。
いちいち指示出し&実況中継するおじさんが半端じゃなくグロテスクなんですが、反面、何だか高揚してしまうという……、私も立派にTHE ヘンタイの仲間入りだ。
初体験がこれなんて、楚和が気の毒でなりませんが、その辺りは鷹見とのこれからの行為で、おいおい塗り替えていって下さい。
 

描き下ろし・Cupid film ~press record~

国際情報統括官組織の第118期官&第128期官揃い踏み。
いずれ劣らぬ美形揃いでウハウハ。
今まで以上の勢いで、この摩訶不思議ボーイズラブ天国が広がっていくのを予感させる。
個人的には、オドオドした木菜会梨緒が気になります。
 
そして、どう贔屓目に見ても堅気じゃない雰囲気の室長・秋草の動向も見逃せない。
あのやり手の先森ですら冷や汗たらたら流しているし。
割と受け攻めが明白なこの世界で、どちらか判然としない佇まいの時点で只者ありませんね(何その判断基準)。
BC達をお薬でどんどん沈めていく姿がコワい。
 

俺が飲めって言ったら、お前は黙って飲むんだよ。

 
いっそ清々しいほどのパワハラ、ありがとうございます。
 
後半は、お薬で前後不覚になった眞御を、針生がハメ撮り。
いや、「お勉強」と称しつつも、明らかに楽しんでますよね、知ってる。
一巻につき一度は、針生の「眞御ちゃん、はあはあ(ハート)」を聞かないと物足りない自分も、かなり重度の病。
惜しむらくは、素面に戻った眞御タンが、己のあられもない姿を見て、恥じらうのを見られなかった点。
それは針生が独り占めですか……、ちくしょう、針生め……(ハンカチ、ギリリと噛みしめつつ)。

『アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ』(ジョシュ・ラニヨン/新書館モノクローム・ロマンス文庫)感想【ネタばれあり】

アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ (モノクローム・ロマンス文庫)

アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ (モノクローム・ロマンス文庫)

瞑き流れ~アドリアン・イングリッシュ5~ (モノクローム・ロマンス文庫)

瞑き流れ~アドリアン・イングリッシュ5~ (モノクローム・ロマンス文庫)

 
ジョシュ・ラニヨン先生の『アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ』の感想です。
心臓疾患の手術を受け、健康を徐々に取り戻しつつも、ずっと自分の人生を諦観してきたアドリアンは、返って戸惑いを隠せずにいた。
そして前作のカミングアウトにより、家族や地位も失ったジェイクもまた、迷いながらも新たな一歩を踏み出し始める。
互いに愛し合っているにもかかわらず、宙に浮いたような二人の関係。
最後に二人が出した答えとは?
 

『アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ』(2015年12月9日発行)

あらすじ

前作で負った銃弾の傷も塞がり、心臓の疾患の手術を無事に終えたアドリアンだが、心身ともに疲弊した体は健康からはほど遠かった。
だが、そんな彼に追い打ちをかけるように、クローク&ダガー書店が何者かに空き巣に入られる。
おまけに、クローク&ダガー書店が入った建物の床下から、50年ほど前に行方知れずとなったジャズ・ミュージシャン・ジェイ・スティーヴンスの白骨遺体が見つかるなど、アドリアンは再び事件に巻き込まれていく。
アドリアンは、警察を退職し、私立探偵を始めたジェイクに助力を請うが……。
 

感想

ストーリー

まずはスタンディング・オベーション。
アドリアンとジェイク、二人が苦しみつつも模索し続け、最後にたどり着いた答えに拍手を送りたい。
 
アメリカを代表する作家であるレイモンド・チャンドラーの文章が多数引用され、スウィング・ジャズがBGMとなる、20世紀のアメリカを懐かしむような本作の世界観。
登場人物達も、いかにも古き良き探偵小説に出てくるような面々で、哀愁漂う意外な結末も含めて、ラニヨン先生の強いこだわりが感じられました。
ナチスに奪われた財宝の話が絡んできた時は、正直度肝を抜かれましたが。
これもある意味、20世紀アメリカを語る上では外せない、第二次世界大戦の一つの側面。
 
一見セピア色の向こう側に封じ込められたように、50年前に置き去りにされた今回の事件。
しかし、関わった人物達が感じた痛みや悲しみは、時間が経過しても色褪せる事はない。

そんな人々の想いと、現在のアドリアンとジェイクの姿がリンクする。
彼らがどんな結末を迎えようと、決して後悔だけはしてほしくない。
以前からそう思っていましたが、本作を読む事により、その気持ちが一層強まりました。
 
人間誰しも、他者に裏切られたり、何かを失うのは恐ろしい。
それが愛する人ならなおさら。

だが、その恐怖を乗り越えて、ジェイクと共に在る事を選び取ったアドリアン。
そして、彼をひたすら待ったジェイク。
終盤の彼らを見て、やっとパズルのピースがあるべきところに収まったカタルシスと「これで彼らはきっと大丈夫」という歓喜を得る事ができました。
第5巻まで追いかけてきて、途中胸が張り裂けそうな想いを何度となく味わいましたが、それを補って余りあるほど報われたと思えるし、できるだけ多くの方にこの読了感を味わってほしい。
 

キャラクター

主人公のアドリアン。
長年の心臓疾患が回復の兆しを見せ、人生の展望が開けた事により、それが返って彼を戸惑わせる展開にハッとさせられました。
リサを始めとした家族や周囲の人々の優しさや思いやりを受ける事に不慣れな彼。
今までの自立心の強さや達観は、弱さや怯えの裏返しだったんだなと。
加えて、アドリアンの病気が原因で別れた元カレ・メルを登場させるというタイミングの妙。
病気というしがらみがなくなった今、あれほど愛したメルとどんな関係を築いていくのか……、だがそこであらためてアドリアンが自覚したのは、ジェイクが彼にとってどれだけ大切なのかという事。
 
だが、ジェイクが唯一無二の存在だからこそ、前作で一瞬でも彼を疑ってしまった事がアドリアンを苦しめる。
そんな、彼をジェイクへと後押ししたのが、今回の重要人物・ジンクス・スティーブンスとの会話だった。
ジンクスの過去における、もはや取り返しのつかない後悔と、ジェイクとの関係で瀬戸際に立たされたアドリアンの心情が合致する様が圧巻。
誰もが一歩間違えれば闇に呑み込まれかねない人生の中で、だからこそ大事な人と歩んでいく事の大切さ。
ジェイクとの時間は、たった10か月で一度は途切れてしまいましたが、これからは今まで苦しんだ分まで、その幸せをかみしめて生きてほしい。
 
続いて、もう一人の主人公・ジェイク。
今回の真犯人のニック・アーガイルって、やはり闇に取り込まれた場合の、もう一人のジェイクなんでしょうね。
そう思うと、アーガイルの破滅には、ゾッとさせられます。
惚れた相手を手にかけた虚しさと満たされない焦燥を、何十年も抱えてきた彼。
ジェイクには、アドリアンのような存在がいて心底良かったと思える。
前回までの不安定なジェイクと比べて、今の彼なら大丈夫だと太鼓判を押せますが。
 
本当に今更だけれど、この巻を呼んで、ジェイクってやっぱりイイ男なんだなと再認識しました。
彼は前巻で多くのものを失いましたが、今回、時にアドリアンとぶつかり、時にアドリアンを献身的に支える姿を見ると、彼の決断は間違っていなかったのだと確信を持って言える。
尋常でない苦しみを味わったからこそ、アドリアンの迷いに寄り添う事ができるんですよね。
 
メルやガイはアドリアンとジェイクがあまりにも違い過ぎて、二人の生末に破滅しか見えないという見解を持っています。
ですが、違うからこそ補い合えるし、違うからこそ一緒にいて楽しい。
あと新生ジェイクのアドリアンへの愛、半端じゃありませんから。
そこは熱く異議を申し立てたい。
 
再スタートを切るにあたって、彼の目の前には様々な道が幾重にも広がっていましたが、それでもアドリアンを諦められない所に、彼の純情と愛の深さを感じてキュンキュンしました。
アドリアンと一緒に飼うために、彼に懐いていた子犬を内緒でもらってきちゃうところとか、Hシーンの甘々さとかもね、彼らがくっつくまでのフラストレーションが一気に解消されたような読了感。
 
そして主人公二人のみならず、外せないのが脇を固める面々。
このシリーズはアドリアンとジェイク、愛し合う二人がいれば成立するような甘い夢物語では決してない。
他の人々との関わり合いがあったからこそ、アドリアンとジェイクの今現在の人となりや関係性、人生が形成されていったと言える。

その中でも、今回私の中で特に印象深かったのは、リサを始めとしたアドリアンの家族達。
リサの存在は、何かと鬱陶しいと感じていた読者も多いと思いますが、今回は今までとは一風変わった一面を垣間見せてくれる。
子離れするのには、アドリアンの見積もりでは後35年ぐらいかかりそうですが(笑)、それでも一己の人間としてアドリアンを認めてくれる様や、子供を心底大事に思う母の姿が温かい。
アドリアンの父親が早逝してしまったり、アドリアンの病気もあったりして、ついつい過保護になってしまいがちな彼女。
しかし、彼女にとって息子は自己顕示欲や所有欲を満たすための手段ではないんだなと信じる事ができました。
 
それに、アドリアンの三人の義妹達。
初登場時には、彼女達がまさかこれほどまでに物語に絡んでくるとは想像もしませんでした。
ナタリーは、クローク&ダガー書店の大事な店員で、気の置けない仲だし(喧嘩していたり、ふざけ合っている様子は、まるで本物の兄妹みたい)。
エマに至っては、あの子供に関心のなかったアドリアンが、父性的な愛情を感じで、猫っ可愛がりしている。
アドリアンの義父であるビルも、妻や娘に比べると少し(?)影が薄いものの、それでもアドリアンをサポートしてくれましたし。
あと忘れちゃいけないのが、猫のトムキンス。
アドリアンに懐く姿が愛らしくて、猫好きには堪らない。
 
なんだかんだと言いつつ、アドリアンを大事にしている人間は、自身が思うよりもたくさんいる。
彼らはもちろんパーフェクトな存在ではありませんが(厄介な点も多々)、アドリアンは彼らの愛情にもう少し浴しても良いんじゃないかなと。
まあ、シニカルだけれど不器用なアドリアンと彼らの、どこかしらぎこちない交流が、見ている方からすると面白いんですけれどね。