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『恋するインテリジェンス(5)』(丹下道/幻冬舎バーズコミックス リンクスコレクション)感想【ネタばれあり】

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

恋するインテリジェンス (5) (バーズコミックス リンクスコレクション)

 
丹下道先生の『恋するインテリジェンス(5)』の感想です。
今回は志山円の上司で、財務省関税局の課長・差形怜司と、彼と19年付き合っている、同じく財務省主計局の課長・古賀親國の物語がメイン。
差形はいつも円と土門をからかったりと飄々とした印象でしたが、この巻を読んで、それがガラリと変わりました。
 

『恋するインテリジェンス(5)』(2018年3月24日発行)

あらすじ

関税局課長の差形は、高校の後輩である古賀と19年間付き合いながらも、基本的にはヘテロの古賀と一度も肉体関係を結ぶ事ができずにいた。
満たされない想いを抱きつつ、他の男と関係を持ちながらも、古賀を手放せない差形。
だがある日、自分達の暮らす家に化粧品が残されていたり、見知らぬ人物から避妊具が送られてくるなど、古賀の裏に女性の影を見つけてしまう。
自分達が一緒にいるために苦肉の策で作ったルールが破られたと疑念を抱き、差形は古賀との別れを決意するが……。(「差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~」)
 

総評

恋をこじらせて○○年の人がうようよする『恋するインテリジェンス』ですが、それでも19年は長い。
赤子がそろそろ成人するぐらいの期間。
純粋に年数でいうと「初恋のシュヴァルツリステ」の鷹見×楚和の方が上かもしれないけれど、古賀×差形は生活を共にして、同衾などもしてますからね。
それで清い仲。
どうなってるの、N国の官僚のメンタル?
純愛通り越して、ちょっと怖いと思ったのは秘密です。
 
差形は土門×円との絡みを見ていると、もっと厄介なのを想像していたんですが、意外と言ってはなんですがすごく一途な人でした。
むしろ手強いのは相方の古賀。

フィクションだと、普段は細目&本気モードで開眼する人物は食わせ者だと相場が決まっているんですが、古賀もその例に漏れず。
鶏楽との、策士同士の対決も迫力があり、見応え抜群。
 
古賀がこれまで差形を抱かなかった理由も凄まじい。
何その絶望的な逆説。

出自のせいか、古賀はこれからも鬱屈したものを抱えているのは変わらないと思うので、この先、差形とどんな風に生きていくのか非常に気になります。 
 

恋するインテリジェンス class:rookie 002-6

武笠×深津の二度目の話。
武笠の懊悩が超平和で和みました。
忙しい教官に時間割いてもらって打ち明けた相談がそれ!?
そりゃあ、先森も青筋たてたくなります。
 
ぷらいべえとじぇっと。
ごうかきゃくせん。
えっ、それ、百歩譲って新婚旅行とかではなく、二度目のデートの話なんですよね!?
相変わらず御曹司の金銭感覚が崩壊してる。
深津がドン引く姿が目に浮かぶような……。
 
先森、藍染、千散、桃月の第118期BCハーレムと、それに翻弄される若造・武笠にも爆笑。
武笠は有能なのに、このなんか器用になり切れない初々しさの塩梅が良いですね。
いかにもお坊ちゃま。
演奏家などを、自分が雇っている人をすべて「さん」付けして呼んでいる点など、話し方にも生粋の育ちの良さが垣間見える。
しかし今はとりあえず、全速力で逃げて超逃げて。
怒りと嫉妬のあまり、鶏楽さんの瞳孔が開いてますよ。
鶏楽にとっては、藍ちゃんの手を握っただけで万死に値するというのが、ヒシヒシと伝わってきました。
 
後半はラブラブH。
深津から想いを返してもらえて良かったですね、武笠。
恒例の(?)「はあはあ」も当然スゴイ事になっている。
あまりにもスゴイので、何度言っているか素でカウントしてしまったじゃないか。

さすがに「私は、今、何をやっているんだ……?」と途中で我に返って止めたけれど。
発汗も半端ない。
正直、今すぐ病院に担ぎ込んだ方が良いレベル。
なんか霧(?)まで発生してるんですが……、深津への愛が深すぎて人体の法則まで捻じ曲げる男。
 
ラストは針生と眞御の逢瀬を間接的に邪魔する武笠。
次回は針生の復讐必死ですね。
ホント何やってるんだ、このポンコツ師弟。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~

ひいいぃぃいぃ、19年溜め込んだ鬱憤が完全に危険水域を超えていますね。
二人とも平穏を装いつつも、差形の「全部嘘だ」が恐ろしい。
長い前振りはすべて、差形が古賀と共にいるために時間をかけて身に着けた虚妄だった。
 
そして19年前の彼の傷つく様が切ない。
他の男と寝る理由が、最も愛する男を満たせず傷ついた自尊心を束の間癒す為って辛すぎる。
それでも手放せないって……、綱渡りのような無茶を犯しているとわかっていつつも、古賀の事が大切なんだな。
一方、柔らかい雰囲気を纏った古賀がふっとした瞬間に見せる素顔も厳しい。
 
差形が円をついつい虐めたくなってしまうのも分かるなぁ。
自分がこんなに苦しい恋愛をしているのに、あんなバカップルを職場で見せつけられたらね。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~ 2 前編

一見穏やかだけれど、実情は際どい岐路に立たされている差形と古賀。
おまけに官僚同士なものだから、仕事に関しても駆け引きめいた事をしなければならない。
これは心が休まらない。
差形がこんなに不器用で人間臭いとは、想像できなかった。
 
今回は基本的に財務省が中心の物語ですが、外務省や法務省など、各省庁の横のつながりが見えたのが面白かったです。
「初恋のシュヴァルツリステ」の鷹見×楚和はまだ本格的にくっついていなかったんですね。
3巻以来、ずっとこんな膠着状態が続いていたとは……、鷹見、可笑しすぎ気の毒すぎ。
まあ、モテ男がツンデレに振り回されるのは大好物なので、個人的には「もっとやってくれ」とお替り要求したいくらいですが(ヒドイ)。
気の毒と言えば、鶏楽の尻ぬぐいさせられる蔵本もおもしろ可哀想だった。
格上の二人を前に冷や汗タラタラ。
しかし鶏楽の下についていたら、否でも実力がつきそうですが。
ハッ、もしかして、鶏楽、そこまで見越して……るわけないか、彼の頭の中はほぼ100%藍染が占めているから(蔵本の事も0.001%ぐらいは考慮してくれているかもしれないけれど)。
 
今までトレーニーがいない事で、あまりクローズアップされなかった牛通堂も登場。
差形と友達だったんだ(ついでに鷹見とも)。
第118期TCの中ではかなりの常識人と見た。
なんかあまりにも真面過ぎるがゆえに、真っすぐだけれど歪んだ恋をしている差形の地雷踏み抜いたり、差形と古賀の痴話げんかに巻き込まれて哀れ。
古賀もあんまり威嚇してやるなよ(笑)。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~ 2 中編

冒頭、高校時代の差形と古賀。
これもまたとんでもない出会いだな。
王子様キャラがエロい先輩の魅力に撃沈した瞬間。
これで19年もまとまらなかったんだから、二人のこじらせ具合が尋常じゃないのをあらためて痛感する。
 
時間は戻って現在。
古賀が自分達のルールを破り、秘密を作っているらしき事に疲弊していく差形。
古賀が女性と密会しているのを目撃してしまい、キスも拒まれ、ラストは決定的な避妊具のプレゼント。
この辺りは読んでいて本当に辛かったです。
 

差形怜司の解答 ~数式は鷹に恋をする~ 2 後編

ついに古賀へ別れを切り出す差形。
対して、開眼し本性を表した古賀は、身も縮むほどの迫力ですが格好良かったです。
仕事の都合上、居合わさせた鶏楽も、イイ感じで煽ってくれる。
鶏楽、今まで藍染のヒモ成分が強かったですが、無茶苦茶できる男ですね。
そのギャップが良い(まあ、藍ちゃん以外の事象には基本的に興味なさそうですが)。
古賀と鶏楽、切れ者同士の丁々発止のやり合い。
こういうの大好き。
古賀と鶏楽は、この先も好敵手になっていきそうだ。
 
続いて、古賀に関するモヤモヤの一端の種明かしもされる。
千散、怖っ!!
ここまでするか!?
有能だからこそ、とことん標的を追いつめるえげつなさにガクブル。
まあ、痴話げんかに牛通堂を利用した差形の自業自得と言えない事もないが。
しかしそこは差形も常人ではないので、負けじと報復。
キャットファイト面白すぎ。
この二人も後々まで遺恨が残りそう。
 
自宅に戻り、あらためて想いをさらけ出す差形と古賀。
この人達も長年一緒にいるくせに、大概話し合いが足りない。
一度寝たら別れへのカウントダウンが始まるから抱けないって、とんでもない二律背反。
曲者揃いの『恋するインテリジェンス』の中でも、古賀の業の深さはトップクラスだと思います。
そんな古賀に差形がしてあげられるのは、とことん愛し愛され、ただ古賀の信頼を勝ち得る事のみ。
19年かかりましたが、やっと本質にたどり着きましたね。
 
ついに念願かなって結ばれる二人。
差形のシャツガーター、エッロっ!!
あんなストイックなシーツの下に、こんなとっておきのブツを隠していたとは……。
そして古賀よ、「性欲があまりない」ってどの口が言う!?
それ、単に好きな人とした事がなかったからでしょう!?
いわば本命童貞ってヤツ(このシリーズ、そういう人が枚挙に暇がないけれど)。
最初はどちらかというと差形が押し気味でエロい先輩全開でしたが、結果的には古賀のすげぇテクと絶倫具合(比喩じゃなく一晩中ヤってそう)で、あの経験豊富な差形がメロメロって、やはり只者じゃありませんね。
19年溜め込んだモノも伊達じゃなかった。
一度箍が外れたら歯止めが効かなくなるのは、このシリーズの攻めとしてはお約束。
 
ラストは再び見える古賀と鶏楽。
鶏楽、藍ちゃんが絡まなければフツーに仕事のできるイイ男なのに。
藍ちゃんが関わってくると、途端にプッツンしますね。
読者としては、それが面白いんですが。
一方、古賀も差形がいればその他の有象無象はどうでもいいって感じで、たとえ差形と思いは通じても、今まで抱えてきた仄暗さはこれからも変わらないんだろうな。
この二人、唯一の相手以外は眼中になしというスタンスが、とても似ています。
互いになんとなく気に食わないのも、所謂近親憎悪もあるんじゃないかと。

 

土門の饅頭怖い作戦

もはやお家芸となった土門と志山次官の不毛な戦い。
志山次官が土門を「害虫」とスマホへ登録しているのにボディーブロー食らいました。
どんだけ気に入らないの!?
土門は土門で、煽り芸を極めているというか、志山次官から円のプライベート写真やビデオをせしめようという作戦。
あれ、土門の一人勝ちかと思いきや、ラストで「……パパノホウガカッコイイデス……」という、強烈なクロスカウンター食らってた。
まさか三巻の伏線がここで活きてくるとは思いもよらなかったんだぜ。
まあ、最終的に割を食うのはいつも円なんですけどね(土門にベッドでスゴイお仕置きされそう)。
 

武笠深津のバディ訓練日誌

訓練とは名ばかりの、武笠と深津バカップルのエロ。
なんか武笠の手練手管が、師匠の針生に急速に似てきているような気がしないでもない(武笠は不本意かもしれないが)。
深津も平常運転でチョロ過ぎ。
藍染のトレーニーである以上、将来的には「フェミニン系エッチで物慣れたお兄さん」ポジションの後継者と目されていたと思うんですが、その道はかなり険しそう。