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『S宿二丁目ラブアワー』(露久ふみ/オーバーラップリキューレコミックス)感想【ネタばれあり】

S宿二丁目ラブアワー【単行本版】【電子限定描き下ろし漫画付き】 (リキューレコミックス)

S宿二丁目ラブアワー【単行本版】【電子限定描き下ろし漫画付き】 (リキューレコミックス)

S宿二丁目ラブアワー (リキューレコミックス)

S宿二丁目ラブアワー (リキューレコミックス)

 
露久ふみ先生の『S宿二丁目ラブアワー』の感想です。
女装男子・京子(仮名)×(元)バリタチ・泉のラブコメディ。
見かけと中身にギャップのある肉食系な攻めと、負けず嫌いだけれどちょろい受けのやり取りが面白い。
京子の甥・秀一×年上の幼馴染・旭の物語も収録。
 

『S宿二丁目ラブアワー』(2019年5月25日発行)

あらすじ

東京勤務を機に大阪から引っ越してきた駅員・泉吉継は、ゲイ寄りのバイ(タチ専門)。
ある日、駅構内で自分好みの美形(女装男子)と言葉を交わした事をきっかけに、初めてS宿二丁目へ足を踏み入れる。
偶然入ったバーで、件の美形・京子(仮名)と再会を果たす泉。
とんとん拍子でベットインする事になるが、実は彼はS宿二丁目では知らぬ者はいないほど有名なバリタチだった。
バージンを奪われた上に、気持ち良くなってしまった事にプライドが傷ついた泉は、今度こそ自分が京子を抱くと意気込むが……。
 

総評

女装系バリタチ・京子さんにネコちゃんにされてしまった泉が、なんとかタチに返り咲いてやると奮闘しつつ、京子さんに返り討ちに合う話。
泉の良く言えば不屈の闘志、言い方を変えると懲りない性格が楽しい。
そりゃあ、京子さんのように複雑な内面を秘めていそうな人間にとっては、新鮮な存在でしょうね。
そして、次第に泉に対して本気になっていく。
一方、泉も最初は京子(本名・京哉)に勝つ事が目的だったのに、彼の様々な面を垣間見てハマっていく。
二人が徐々に距離を縮めていく過程にニヤニヤ。
意外な展開や大きな事件は起きませんが、その分、安心して二人の恋愛に浸る事ができます。
 
そして、本書には京哉の甥・秀一と年上の幼馴染・旭の恋を描いた「ダーリンの上手な育ち方」も収録。
この作品を読むと、京哉一人が個性的なのではなく、一族ぐるみでおかしいんだろうな。
 
ちなみに一族の家系図「狩野なる一族」には、本書一番の笑いを貰いました。
一族総資産1055億円って……、他にもツッコミどころ満載。
あまりにも規模が大きすぎて、受け二人が引いてます(笑)。
玉の輿とか喜んでる場合じゃない。
とりあえず、泉も旭もこれから何かと苦労しそうですが頑張って。
 
そう言えば、京哉の兄・京一も独身で、彼にも何かBL的な物語がありそうな雰囲気。
この一族、総攻めなのかもしれないけれど、京一はビジュアル的に受けだと嬉しいなぁ(あくまで個人的な感想です)。
 

S宿二丁目ラブアワー GONG:1

京子さん、今思うと出会った当初から泉に目をつけているような……(笑)。
泉が自分から二丁目に来なくても、何らかの方法で接触計っていたような気がします。
それぐらい朝飯前でやってのけそうな京子さん。
そして、彼の掌の上でコロコロ転がされてもめげない泉のキャラが秀逸。
バージン奪われたにもかかわらず、悲壮感は一切なし。
それどころか、京子さんに対して競争心燃やしてしまっているのが面白い。
 

S宿二丁目ラブアワー GONG:2

冒頭から、二丁目における京子さんの武勇伝に驚嘆。
どんなバリタチも、彼の前では可愛いネコちゃんとなってひれ伏すんですね。
泉も負けん気に一層火が付いていますが、相手が悪いんじゃないかな?(遠い目)
 
その京子さんはかなり泉を気に入ってしまったようで、自宅にまで呼んでしまう。
二丁目の面々から見ると、それはかなりイレギュラーな事のようですが。
おまけに、正式に交際まで申し込んでいますしね。
ミステリアスな笑顔を絶やさない京子さんですが、泉に対してはかなり本気モード?
そんな事は露知らぬ泉は、攻めの座をかけて京子さんに勝負を挑み、その度に返り討ちに合う。
京子さんも只者ではありませんが、泉も大概チョロ過ぎ。
チョロインの称号(?)を進呈したいぐらい。
 

S宿二丁目ラブアワー GONG:3

京子さん、もとい京哉の本気が前面に出てきた回。
女装も鳴りを潜め、泉に本名を呼んでもらいたがったりと、今までどこか飄々していた彼の違った一面が見えてきてギャップ萌え。
泉を抱く時の必死さが、初回とは明らかに違う。
そんな京哉に、泉も思わず絆されてしまう。
けれども、今までずっとタチだったこだわりを捨てる事もできない。
 
そこで別のタチと寝てみようというのがぶっ飛んでいますが(笑)。
泉の相手をしようとしたラーメン屋のヒロさんも相当良い度胸してます。
伝説のバリタチの恋人に手を出そうというのだから。
恋情まではいかないまでも、泉に対してかなり興味を持っていそうな気が……。
しかし、不本意ながら京哉への恋情を自覚してしまった泉は、土壇場でヒロを拒んでしまう。
泉本人が気づかぬうちに、彼の心に京哉の存在が深く刻まれてしまったんですね。
うわぁ、甘酸っぱい。
 
だが、せっかく自分の本心に気付いたのに、ヒロさんとホテルから出てきたところを京哉に見られてしまった泉。
恋愛物ではありがちな展開とも言えますが、京哉は本音が見え辛い人間だからドキドキするなぁ。
 

S宿二丁目ラブアワー GONG:4

修羅場になるとは思っていたけれど、まさかここまで乱闘になるとは予想していませんでした。
でも、京哉を殴ってでも本音を吐き出させる泉と、愛しているから泉を殴れない京哉と、二人のキャラの特徴が良く出ています。
その代わり、京哉は間男ポジションのヒロさんをとんでもない目にあわせていましたけれど。
これ、打ちどころが悪かったら死(ガクブル)。
 
京哉は普段飄々としているけれど、実は不器用なタイプだな。
本当は嫉妬メラメラなのに、それを素直に表現できない。
おそらく今まで彼を周囲にいた人々は、誉めそやすか、恐れるかのどちらかで、腹を割った人間関係を築いたことがなさそう。
だからこそ、泉のように正面切って向かってくる相手に惹かれてしまったのでしょう。
 
何はともあれ、あらためて両想いになった二人。
しかし、ラストでは泉の天然っぷりが炸裂。
この子、よく今までバックバージン守ってこれたなぁ。
まあ、こういう部分も含めて、京哉にとってはたまらないんでしょうね。
 

ダーリンの上手な育ち方

表題作と同じ世界観の物語ですが、こちらの方が発表されたのは早い。
京哉の甥・狩野秀一と、彼の年上の幼馴染・須磨旭のお話。
 
タイトルが「育て方」ではなく「育ち方」なのがミソ。
受けの旭が何もせずとも、勝手に育ち、勝手に迫ってくる秀一。
冒頭のピュアなショタと、現在のギャップが凄い。
幼い頃の初恋をこじらせて、旭が何気なく言った条件(高収入・高身長・高学歴)を軽く超えてきた。
おまけにさすが京哉の甥っ子という感じで、美形な上に一筋縄ではいかない性格。
旭は完全に外堀埋められてしまっています。
スパダリ系年下攻めが好きな方は、大変美味しくいただけるであろう作品。
 

描き下ろし・後日談

京哉が経営するバーで顔を合わせた京哉×泉と秀一×旭。
泉、本来であれば旭みたいな感じの子がタイプなんですね。
久しぶりに視線が攻めに戻っている。
だが、秀一がそれを許すわけがなく……。
というか、この子、本当に旭以外の一切に関心がなさそう。
そして、むしろ遺伝子レベルで狩野一族が苦手なのに、京哉と付き合っているって、よっぽどの愛がないと難しいと思うんですが。
その後はもちろん、旭に色目を使った事で、京哉からお仕置きをされてしまう泉。
ラストは「色々と懲りた泉くんであった」という〆で終わっていますが、彼はあまり懲りていないような……、気のせいか?