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『きのう何食べた?(15)』(よしながふみ/講談社モーニングコミックス)感想【ネタバレあり】

きのう何食べた?(15) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(15) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(15) (モーニング KC)

きのう何食べた?(15) (モーニング KC)

 
『きのう何食べた?(15)』の感想です。
ケンジの店長業、ヒロちゃんのベトナム生活、田渕君と千波さんの交際など、前巻でまかれたエピソードの種が順調に育っています。
あとシロさんのご両親の老人ホーム入りも、第一巻から読んできた読者としてはなんだか感慨深い。
 

『きのう何食べた?(15)』(2019年3月22日発売)

総評

ケンジ、ヒロちゃん、田渕君&千波さん、皆、新たな挑戦や新生活にチャレンジしていますが、この作品らしいマイペースさでそれぞれ頑張っているんだなと感じました。
ヒロちゃん辺りはベトナムで爛れた生活送ってそうで怖いですが(女性問題に気をつけて)。
ヒロちゃんベトナム行きに伴い、シロさん&ケンジが海外進出(ただの海外旅行とも言う)しても面白いんじゃないかと思いました。
シロさん&ケンジも、国内ではなく外国の方が(国にもよるけれど)意外と気を使わなくて済むかもしれない。
 
一方、シロさんのご両親も人生の岐路に立っていますね。
とうとう二人の終の棲家についてのエピソード。
第一巻から筧家の様子を見てきた読者としては、あの家が無くなるというのはやはり寂しい。
お父さんとお母さんがとにかくぶっ飛んでいて、シロさんも随分振り回されたなぁ……。
なんだか思い出が走馬灯のように脳裏を過る。
気分はさながら家族です。
 

#113感想

シロさんが佳代子さんちでお昼をご馳走になる話。
富永家での昼食会もすでに恒例になってきましたね。
シロさん、悟朗君への小学校祝いという試練に悩む。
小学校で使う文房具ってすごく細かく規定されているんですね。
前巻のランドセルと同じく、親御さんやおじいちゃんおばあちゃんも大変だ。
結局、シロさんは金に物を言わせましたが、それがお互いにとって良いかもしれない。
 

筧さんの性格は変えられないから、僕らはせめて筧さんの喜ぶごちそうを作って待ってればいいんじゃない。

 
佳代子さんの旦那さんの台詞が、真面な年長者風なのに吹きました。
とても優しい方ではあるんですよね。
デリカシー皆無だけれど。
 
そして当日。
ミチルちゃん、シロさんのプレゼントに滅茶苦茶感動してますが、その人、お子さんの事を人間というよりも動物扱いしていますよ(「おおお、人間語しゃべってる!」って…)。
名前のきっかけになっているのにも関わらず、それほど悟朗君に思い入れのないシロさんがやけに生々しい。
ミチルちゃんはミチルちゃんで、シロさんの事をおじさん扱い通り越しておじいちゃん扱い固定だし、失礼さ加減は似たり寄ったりですが。
さらに、ラストで驚愕の事実発覚。
 

えっ…!?
おじさん…、親戚のひとじゃなかったの…!?

 
まあ、お母さんの実家にたびたび現れて、遠慮なく飲み食いしているおじさんが赤の他人とは思わないわな……。
シロさんも「うわッ!!文章でしゃべった~~~!!」って驚くとこ、ソコ!?
 
今回の料理は手巻き寿司、う巻き、高野豆腐とオクラの煮もの、ゆでそら豆。
大勢でやる手巻き寿司、美味しいですよね。
アミューズメント的な楽しみもある。
 

#114感想

美容室の店長に就任したケンジがてんてこ舞いする話。
ヒロちゃんから押しつけられた引き継いだ時から予想はしていましたが、店長の業務や出張カットもあるので休日もままならず。
私も昔レジ締めやってましたが、ホント、あれって合わせようとすればするほど合わない不思議。
なによりシロさんと食事できないのが一番ツラいですね。
おまけに腹回りがヤバいし……。
中年太りはまず腹から来るから。
シロさんも(二人別々の食卓か…、ちょっとつまんねえなあ…)なんてモノローグしてましたが……。
ケンジが帰ってきた直後のP.37の一コマ目で確信しました。
ちょっとどころじゃなかった!!(笑)
このページを跨いでためを作るの、よしなが先生、さすがだなと思いました。
二人が揃った久々の夕飯で大満足。
食事中のシロさん&ケンジの表情にニヤついてしまう。
なんなんだ、このカワイイおじさん達……。
 
今回の料理は油淋鶏(ユーリンチー)、大葉ときゅうりの塩やっこ、エリンギとねぎのみそ汁。
油淋鶏はちょっと仕込みが必要ですが、そんなに高価な食材も使わず、これだけ本格的な中華が自宅で作れるってスゴイ。
塩やっこもシンプルですが味が気になる(私、冷ややっこは大抵しょうが+醤油ばかりだから)。
みそ汁にエリンギも……、今さらですが、シロさんのみそ汁のバリエーションの多さに感心。
 

#115感想

シロさん&ケンジ宅で小日向さん&ジルベールと餃子パーティーの話。
ケンジの(偶然だけれど)的確な買い物について猛烈に感動しているシロさんに笑う。
「グッボーイグッボーイ!!」って飼い犬扱い!?
何となくムツゴロウさんが頭を過りましたが。
とりあえず、涙ふこうぜ(笑)。
それだけシロさんにとっては、食材調達は重要事なんでしょうけれど。
 
そんなわけで当日。
皆で仲良く焼餃子作り。
そう言えば、6巻#41で水餃子を作った時もケンジがお手伝いしてましたね。
今回はひだ付きなんだ(テキトーだけど)。
プレーン&大葉、二種類あるのが良い。
大葉は火を通しても風味が失われないから。
ビールも進む。
餃子だと栄養が偏りそうだけれど、ぜんまいの煮物、もやしのナムル、貝割れのみそ汁でバランスが取れている。
シロさんの献立を立てる腕、切実に見習いたい。
それにしても、ジルベールはシロさんの料理を美味そうに食べますね。
褒め言葉(?)はいつも通り微妙だけれど。
シロさんとジルベールの関係も見ていて和む。
兄弟的というか、オカンと息子的というか……。
シロさん、一人っ子だからなんだかんだ言って兄弟欲しかったんじゃないかな?
ジルベールの世話を割と小まめに焼いている。
ラストはジルベールの貴重なデレ(?)で〆。
それにしても、シロさんの料理には庶民っぽさを求めるのに、お土産が源吉兆庵の「陸乃宝珠」に、ラデュレの「生ケーキ」に、和久傳の「れんこんもち」って豪華すぎ!
 

#116感想

シロさんの両親が老人ホーム入りを決意する話。
うん、良いんじゃないかな……。
ご両親としては一人息子に土地と家を残してあげたかったんだろうけれど、シロさんも今のところ金銭には余裕がありそうだし。
特に問題がなければ、今後定年もなく弁護士を続けていける。
孫の顔は見られなかったけれど、ご両親は「自分達のために自分の財産は使って下さい!」と自信を持って言えるシロさんを誇って良いと思います。
 
それにしても#116で初めて知ったとんでもない事実。
お父さんの名前、悟朗だったんだ……(ガーーーン)。
チェックしてみたら確かに2巻#16の食道がん手術の回で、病室のネーム・プレートにも書いてありました。
あくまで「シロさんのお父さん」という認識だったから気づかなかった。
自分、まだまだ詰めが甘いなと痛感。
 
それにしても、墓の時も思いましたが、ケンジに遺産半分ってスゲーーー!!!
これだけ思いっきり良ければ、この夫婦もまだまだ大丈夫だなという謎の安心感。
たとえ老人ホームに入所しても、シロさんの心配は後を絶たなそうですが。
シロさんはシロさんで(その時まで俺とケンジが別れてなければの話だが!!)って相変わらずドライすぎ!!
 
今回の料理は鮭の幽庵漬け、中華風豚肉と野菜のきんぴら、ほんれん草の梅えのき和え、厚揚げとさつまいものみそ汁。
不勉強ながら幽庵漬けの作り方って今回初めて知りました。
個人的には柑橘系の味が好きだから、これも絶対美味しいに違いない。
ユズやカボスがポピュラーみたいだけれど、シロさんのようにレモン汁でもいいんですね。
これはお手軽。
 

#117感想

ヒロちゃんがベトナムから帰国した話。
ガングロ&元気そうでなにより。
ケンジの一人ブラック企業状態もアッという間に解決。
ホント経営者としては有能なんですが、プライベートに問題あり過ぎなんですよね、この人。
 

アレ…?
ここだけの話、ケンちゃんすっとばして、早乙女を店長にした方が良かったのかしら?

 
ケンジ、ぶっちゃけ年功序列とかキャリア年数とかまったく気にしなさそうだしね……(遠い目)。
まあ、それは言わぬが仏、沈黙は金。
結果的にはシロさんとケンジが久しぶりにゆっくりできて良かった。
というわけで、今回の料理担当はケンジ。
基本的に料理をしないケンジの手順はいまいちですが、そこはベテラン主夫・シロさんがナイスフォロー。
メニューはなすいためのしょうがじょうゆ、れんこん入りつくね、チンゲン菜のごまだれかけの晩酌メニュー。
ビールを注いだり、乾杯しているコマがたまらない。
この二人、揃ってビールのCMでもやれば良いんじゃないかなと思った(漫画版とドラマ版の西島さん&内野さん、どちらでもOK)。
売り上げ増確実。
 

#118感想

田渕君&千波さんがストーカーされる話。
この二人、ちゃんとお付き合いが続いている事になんとなくホッとしてしまった(笑)。
生卵をぶつけられるとか普通に怖い。
当然ですが、さすがの田渕君も今回は深刻な顔つき。
ストーカー女性の両親の気持ちも分からなくはないけれど、やられた方はたまらない。
しかし千波さん、こんな時にも取り乱さず、田渕君はおろか向こうの両親まで気遣えるのが凄い。
 

あのね、お金受け取った方が向こうのおうちのかたが安心するんだと思うの。
だから剛君はもう考えなくていいんだよ。

 
千波さんといい、志乃さんといい、『きのう何食べた?』に登場する女性陣は芯が強いですね。
おまけにストーカーについてちょっとアドバイスをしたシロさん&ケンジにまでお礼を渡すきめ細かさ(料理の腕はいまいちですが)。
お菓子作りながらずっと上の台詞を考えていたの可愛いし。
田渕君はユルフワだから、こういうお嬢さんがイイと思うのよね(気分はすっかりお見合いおばさん)。
 
今回の料理は千波さんの作ったレーズンジャムサンドクッキー。
田渕君との仲と同じく、お菓子作りも継続していたんですね。
私はレーズンサンドが大好きで、小川軒や六花亭のを結構頻繁に食べますが、バタークリームではなくジャムでも絶対美味しい。
レーズンとマーマレードの相性も抜群だし。
 

#119感想

シロさん&ケンジのクリスマス料理がバージョンチェンジする話。
ケンジ、一人ブラック企業からは抜け出せましたが、体重は順調に増加中。
シロさんも定番クリスマス料理に微妙に飽きてきた&年齢を経るのと並行して二人の食べる量も減ったので献立変更。
7巻#49で小日向さん&ジルベールを招いて以来、ずっと同じメニューだったんだ。
そう言えば、あの時、ジルベールが”デブ製造機みたいなメニュー”と言ってましたね(笑)。
なんだか歴史を感じる。
 
ちなみに#49のメニューは鶏肉の香草パン粉焼き、明太子とサワークリームのディップとバケット、ツナサラダ、ほうれん草入りラザニヤ、ブロッコリーとアサリのペペロンチーノ、アールグレイのアイス、シャンパン、ケーキ。
今回はビーフシチュー、シーザーサラダ、明太子サワークリームのバケット、赤ワイン、ショートケーキ。
量はもちろん、炭水化物が激減している。
でも物足りなさは全く感じない、スタンダードな洋食。
煮込み料理ってごちそう感ありますよね。
赤ワインで長時間煮込んだ牛スネ肉、絶対美味しいに決まってる。
 
しかし、シロさん、ケンジの体重増加にやたら肝要だなと思ったら、道連れにする気だったんかい……。
ジムに定期的に通っているシロさんですら体重キープに苦慮しているんだから、自分もこの先ヤバいなと危機感を覚えた回でもありました。
 

#120感想

シロさんと両親が老人ホームの下見に行く話。
終の棲家を見つけるのだから、色々考慮しなくてはいけない事が多くて結構大変そうですね。
もちろん、金銭面の事もあるし……。
ご両親、東京を離れることも視野に入れているんだ。
二人が快適に暮らせるのが一番だけれどやはり寂しい(シロさんの表情にも表れている)。
今のところは落ち着いている筧家に対して、今度はケンジの母親が入院してしまった。
ケンジの父親にあれだけ振り回されても毅然としていたお母さんの体が、なんだか小さく見えて心配。
しかもお見舞いに行ったケンジに向けて……。
 

だからね、ケンジ。
今度その筧さんをうちに連れてきてほしいんだよ。

 
えっ、これで次巻に続くってどういう事だってばよ!?
 
今回の料理は常夜鍋、明太ひじき。
毎晩食べても飽きない事が名前の由来になっているそうです(諸説あるようですが)。
この料理も今回初めて知りましたが、なんとなく豚しゃぶっぽい。
具は豚バラ、ほうれん草、しめじ、油揚げとシンプルですが、確かにいくらでもペロッと食べられちゃいそう。