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『きのう何食べた?(11)』(よしながふみ/講談社モーニングコミックス)感想【ネタバレあり】

きのう何食べた?(11) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(11) (モーニングコミックス)

きのう何食べた? 通常版(11)	 (モーニング KC)

きのう何食べた? 通常版(11) (モーニング KC)

 
『きのう何食べた?(11)』の感想です。
今回はいつもの通り緩い雰囲気の中にも、シロさん二度目のカミングアウトや、美容室の店長・ヒロちゃんの話など、こちらの胃と心臓がキューっとなる場面がありました。
やはり単なるほのぼの作品とは一味違うなと。
 

『きのう何食べた?(11)』(2015年11月20日発売)

総評

いつも通りの緩くて、でもかけがえのない生活を送るシロさん&ケンジですが、二度目のカミングアウトの話を読んで、久しぶりにマイノリティの生きづらさを感じました。
彼らは比較的周囲に恵まれていると思うけれど、それは決して当たり前じゃないんだなと。
最近は吹っ切れた感のあるシロさんでも、やっぱりあの瞬間はなんとも言えない緊張感が走っていたし。
相変わらずのほほんとした雰囲気と美味しそうな料理が魅力の作品ですが、彼らの幸せな日常の行間にある”何か”にアンテナを張りながら楽しんでいきたいと思いました。
 
あと今後の展開が気になるのは、美容室のヒロちゃん・玲子夫妻の行く末。
毎回、あの二人の話だけ、なんだかテイスト違いませんか!?
ヒロちゃん、鈍感すぎ。
玲子さん、怖すぎ。
田渕君、ワクワクしすぎ。
ケンジと読者だけが気をもむ展開。
ケンジの頭髪がより深刻な事になるかも……。
しかし、そこはよしなが作品だから、2~3年後有無を言わさずあっさり決着がついてそうだとも思う。
 

#81感想

シロさんが大先生から蒸し器をもらう話。
シロさん&ケンジの家の調理用品が、ここ数巻で着々と充実しつつありますね。
以前、ル・クルーゼの鍋までいただいていたなんて、大先生、良い上司過ぎる(良い上司の基準とは?)。
シロさんのモノローグの通り、通常ならお嫁さんに……となる所ですが、まあ、このご家庭はしゃーない。
 
ル・クルーゼの鍋は気になりつつも、どうしてもあの重さに尻込みして購入に至らなかったんですが(確かに地震で頭の上に落ちたら死ぬ)、あの密閉性は魅力的。
551の豚まんも、有名だけれど食べた事ないなぁ。
我が家は大体中村屋が定番。
豚まんをレンチンできる方法、便利ですね。
少数のために蒸し器を出すのはめんどくさいし。
 
今回のメニューは、鱈のちり蒸し、茶わん蒸し、春菊と人参のごまみそあえ、里芋と長ねぎとあげのみそ汁。
正統派の和食という感じで美味しそう。
蒸し料理ってどうしても敷居が高い印象だから、複数の料理を一度に作れると楽。
ケンジが買ったそば猪口も、食卓に彩りを添えている。
京都旅行の際に購入したARABIA(アラビア)のTVセットといい、ケンジは何気にこういうセンスに優れていますね。
さすがスタイリスト。
 
その頃、大先生も自宅で独りメシ。
家族の栄養なども考えなくていいし、彼女は元々生き様が一匹オオカミタイプだと思います。
本人が満足ならオールオーケー。
変に価値観を押し付けないのが、この作品の良いところ。
 

#82感想

シロさん、富永一家、小日向さん&ジルベールで桜見物。
シロさん、実はケンジとも約束していて、昼夜で時間は分かれているもののダブってしまう。
そう言えば、11巻に至るまで富永一家とケンジって顔合わせた事ないんですよね。
あれだけシロさんと交流があって、食べ物のやり取りも頻繁、むしろ親戚以上の繋がり(おじいちゃん扱いまでされた)なのではという感じなのに。
しかも、ケンジ、佳代子さんとミチルちゃんから呼び捨てまでされる仲。
これもまた不思議な巡り合わせ。
 
ケンジが出席できず残念ですが、大人数でのお花見は楽しそう。
小日向さん、悟朗を「カワイイですね…(ハート)」って、強面だけれど子供好きそうなの分かる。
おそらく12歳のジルベールにも、最初はこんな風に接していたに違いない。
それはそうとミチルちゃんの旦那さん、「えっ、この子が!?」って、仮にもあなたの息子ですよ(笑)。
 
シロさんがケンジとのお花見の話をしたら、皆、喧々諤々。
あの超無神経なミチルちゃんに繊細な乙女心(?)を説かれたらショックだわ。
おまけにジルベールまで珍しく細やかな気遣いを見せているし。
あのいつものトンチキな服装と不遜な態度は何なんだ!?
もしかしなくても対シロさん&ケンジ専用仕様?(ジルベールが気を許している証拠?)
まあ、とりあえず、ケンジとのお花見もつつがなく済んで良かった良かった。
 
今回のメニューはお花見弁当。
いつもと違い、量がたくさんなので、シロさんも勝手が違ったかも。
手作りのいなりずし、行楽にもってこいですね。
佳代子さんはご飯にじゃことごまを混ぜていますが、我が家では甘酢ショウガなどを混ぜる事が多い。
爽やかな後味で、いくらでも箸が進みます。
 

#83感想

志乃さんの新婚生活の話。
志乃さん、ご結婚おめでとうございます。
実家の洋食屋で立食形式のウェディング・パーティー、素敵ですね。
幸せそうでなによりですが、現在の彼女の悩みの種が旦那さんの体調管理。
料理人という事もあって、大体予測はしていたけれど、これは太るわ……。
旦那さんも痩せたがっているって、こんな若い奥さんもらったんだから、そりゃあね。
「え!?ついに志乃さんにも中年太りが!?」って、若先生失礼な……、志乃さん、まだ一応(?)20代ですよ?
 
献立に困った志乃さんは、(すごく引っかかる頼み方で)シロさんに助言を求めますが……。
今さらですが、シロさん、アンタ、すげぇよ……。
細かっ!!
あんな当たり前のように、こんな方針に則って毎日献立たててるの!?
いや、台所を預かる大部分の方は、栄養面に関してそれぞれ考慮はしているだろうけれど、ここまでキッチリしている人も珍しい。
PM6時退所したくなる気持ちも分かります。
 
とりあえず、志乃さんもシロさん直伝の方針に従って奮闘。
メニューは鶏わさ、なすとししとうの揚げだし、ニンジンとツナのサラダ、じゃがいもとわかめのみそ汁。
イイじゃんイイじゃん、美味しそう。
旦那さんも独身生活が長いから、家庭の味に飢えていたので嬉しそう。
なにより、新妻が自分の健康を慮って頑張って作ってくれたというのが最高の調味料。
 

#84感想

シロさんがマンションのオーナーさんにカミングアウトした話。
 

言っ…ちゃっ…た…

 
いくら近年認知度が高まっているとはいえ、カミングアウトするのはやっぱり怖いですよね。
差別や偏見は論外ですが、たとえ制度やシステム的には受け入れられても、ふっとした瞬間に垣間見える相手の本音に傷つけられてしまう事もあるでしょう。
幸いこのオーナーさんは理解のある方で、受け入れてくれたけれど……。
シロさんが弁護士という、社会的ステータスの高い職業についているのも、色々と考えてしまう。
それが、良い方にも、悪い方にも作用する可能性がある(今回は良い方向に作用した)。
もしシロさんが弁護士じゃなかったらとか……。
本当にセンシティブな問題。
 
パートナーシップ証明について不勉強で詳細は知りませんでしたが、携帯の家族割りが利用できるんですね。
それは確かに魅力的。
 
今回のメイン料理はレバニラ炒めでガッツリ。
牛乳につけても臭みはほとんど変わらないんですね。
これも初耳でした。
 

#85感想

シロさん&ケンジが食費を上方修正する話。
二人(主にシロさん)にとっては一大事だけれど、別れ話持ち出すぐらいの深刻さで語るの止めて!!(爆笑)
食材費(特に加工品)って値上がりする一方だから、これは仕方がありませんね。
個人的には、あれだけ満足度の高い食事で月3万円でも十分凄いと思いますが。
多少食費がかさんでも健康優先するという点に、二人が年を取った月日の流れと、シロさんのケンジに対する愛を感じる。
けれども、健康に関する説も次々に更新されるから、全部を気にしているとキリがない。
その中でヨーグルト神話だけは一向に崩れないけれど。
とりあえず、度を越した不摂生をしなければいいんじゃないでしょうか?
 

煮魚。月に1~2回はちょっと良い魚で作ってみても良いではないか!!

 
なにもそんな「俺の後ろに立つな」by ゴルゴ13的な迫力で言わなくても(笑)。
 
今回のメイン料理はかれいの煮つけ。
瓢箪から駒で、美味しい煮つけが作れてよかったですね。
あとポテトサラダ、私もタマネギをあまりしなしなさせず、食感を残した方が好き。
ちなみに具材を賽の目切りにした、ロシア風のオリヴィエ・サラダも美味しいですよ。
 

#86感想

美容室の店長・ヒロちゃんと玲子さんの話。
ひいぃぃいぃ、この二人が登場すると、話が一気にホラー化するからやめて!!!
ヒロちゃん、相変わらず事の本質をまったく分かってないけど、これはさすがにヤバくないか?(というか手遅れ?)
一見ウマくいっていて、玲子さんの機嫌が良いのも、実はすでに期限を切ってるからなんですね。
怖えーーー!!!
こういう時、女性の方が切り替え早いですから。
果たして2~3年後はどうなってるのか……。
まあ、田渕君は後2~3年は独立しそうにないから良かったですね(遠い目)。
アツアツのお好み焼きを食べながら、こんな背筋の凍る話をしているケンジと田渕君もシュールだ。
 

#87感想

ケンジのお誕生日の話。
恵比寿の隠れ家的レストランでお食事って羨ましい。
おまけに舞踏会用のドレス(笑)も買ってもらえてよかったね、ケンジ。
一緒にニセタンメンズ館でお買い物って、シロさんも随分吹っ切れたなぁと思ったら……、そうか、あそこは確かに新宿二丁目に近い……、納得。
それにしても舞踏会用のドレスに身を包んだケンジ、明らかに堅気じゃなーーーーーい(爆笑)。
いや、正直かっこいいんだけどさ、金髪+短髪+グラサン+(おそらく)派手目のスーツ&ネクタイ……、うん……、反応に困る。
その点、シロさん、本当にケンジのトリセツ心得てますね。
ディナー当日、周囲から二人がどう見えたかはお察し。
 
今回の料理はケンジの作ったクラムチャウダー、アボカドとえびのブロッコリーのサラダ、コーンバターライス。
前巻の感想でも述べましたが、ケンジの料理の腕が急速に上がっている事に驚き。
ちなみに私もクラムチャウダー大好き。
あさりをカキにして、オイスターチャウダーでも美味しいですよ。
 

#88感想

シロさんが#76で買ったベーキングパウダーの使い道に困る話。
正直やっぱりなと思いました(笑)。
そこで窮余の策として、お母さんにシフォンケーキを作ってもらう事に……。
シフォンケーキは、シロさんが子供時代によく作ってもらったおやつ。
年月を経て、それを今度は親子で作る姿にほっこり。
レシピ本は参考程度で、ほぼお母さんのオリジナルですが、シンプルで美味しそう。
きっと優しい味なんだろうなぁ。
お母さんの努力の跡もうかがえて、シロさんも感謝を新たにします。

しかしこのケーキはベーキングパウダーを使わずできたので、当初の目的は果たされず。
結果的に親子三人旅行が決まって、それはそれで良かったけれど。
こういう時に「もちろん、行ってきなよ!」と何のためらいもなく言えるケンジはやっぱり男前。