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『きのう何食べた?(8)』(よしながふみ/講談社モーニングコミックス)感想【ネタバレあり】

きのう何食べた?(8) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(8) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(8) (モーニング KC)

きのう何食べた?(8) (モーニング KC)

 

『きのう何食べた?(8)』の感想です。
今回はシロさん&ケンジが住んでいる街を飛び出して、京都へお出かけするエピソードが新鮮。
あと#64もケンジの人生的にはかなりの大事件だと思いますが、いつもながら緩やかに進んでいく。
むしろ、ケンジがシロさん関連以外で取り乱す事ってあるんだろうか、と疑問に思った巻。
 

『きのう何食べた?(8)』(2013年12月3日発売)

総評

そうだ、京都行こう。……と、思わず新幹線に飛び乗りたくなる8巻。
シロさん&ケンジの初の遠出は、王道中の王道デート・コース。
けれどもシロさん&ケンジはいつも通り微妙に斜め上を行っていて、そのちぐはぐさにウィットを感じます。
そして京都好きとしては、今度行く時は是非シロさんプロデュースのコースを参考にしたいです。
 
あと印象に残ったエピソードと言えば#64。
一見シロさんの方がドライに見えますが、家族関係に関してはケンジの方が遥かに上。
でもドライではあるけれど、冷たさは感じません。
父親の言動を見ていると、なるべくしてなった。
怒るにも、悲しむにも、心身共に距離が離れすぎている。
「たまに来るおじさん」というのは、ケンジの偽らざる本音でしょうね。
そこに葛藤があったかどうかは明示されていないし、読者も計り知れませんが、とにかくケンジはその状態を受け入れ生きてきた。
しかし、そこで変に教訓話や説教話、湿っぽい話にならないのがよしなが作品。
どう受け取るかは、読者に委ねられている。
 

#57感想

シロさんが佳代子さんの娘の出産祝いに試行錯誤する話。
私もシロさんと同じく、よだれかけやベビー小物のセットを差し上げていましたが、今はおむつケーキなんてものがあるんですね、へ~。
さすがに、シロさんのようにおむつの形をしたケーキだとは思わなかったけれど(笑)。
出産・育児というのは、一家にとって大事業なんだなとあらためて思いました。
佳代子さんの旦那さんと娘さんとで、子育て分担に関する考え方の違いが見え隠れしますが、どこの家庭でもあるあるですね。
 

将来子供持つ予定の全然無い人に、こんな事聞いたってしょーがないかあ~~~☆

 
ちょっと前まで揉めてたくせに、ナチュラルに失礼なのが本当に似た者親子(むしろ似ているからこそ揉める?)。
 
今回のメイン料理は、佳代子さんからもらったカキで作ったカキフライ。
カキが小粒の時はカキを2コつけてというのは、なるほど盲点でした。
こちらの方がプリッとして美味しそう。
出来合いのものも楽で良いですが、揚げたてのじゅわ~と旨味の出るカキフライはまた格別。
翌日に作る予定だというカキめしも、是非見てみたかった。
7巻の#56のシロさんの繁忙期で、なかなか二人が食事を共にできなかったから、シロさんもケンジもしみじみ……。
やっぱり、二人で食べるごはんが一番美味しい。
 

#58感想

シロさん&ケンジと小日向さん&ジルベールが高級焼き肉を食べに行く話。
小日向さんの後輩の相談にシロさんが乗ってあげたり、逆にシロさんへ小日向さんがディナー・ショーのチケットを融通してあげたりと、なかなか良い関係を築いているんですね。
出会いはアレでしたが(佳代子さんの旦那さんの失礼と紙一重の善意)。
ジルベール、「ちょいと退屈ないつもの焼肉」って、こちらからしたら超羨ましい……、じゅるり(よだれ)。
 
そこへシロさんが大ファンの女優・三谷まみが登場。
弁護士スタンスでいくか、小日向さんのゲイ友のスタンスでいくか、滅茶苦茶葛藤しているシロさんに笑う。
まあ、ケンジが放っておくわけないんですが。
ケンジの気持ちも分かる。
シロさんは女性と付き合った経験もあるし、男女共に恋敵になる可能性があるから、気苦労も単純に二倍。
ルックスも良いしね、女性陣には割と悪し様にされていますが(笑)。
 
ご機嫌斜めなケンジをあやす為、今回のメイン料理はケンジの好きなおでん。
おでんは手軽なメニューのようでいて、こだわると結構高価&手間がかかります。
白だしを召喚(?)したシロさんに笑った。
そんな気合が必要なんだ、白だしを入れるのって。
大根見て、大根女優時代の三谷まみを思い出すシロさんにムッとするケンジ。
これぞ犬も食わないなんとやらですね。
 

#59感想

ケンジの誕生日を兼ねて、シロさんとケンジが京都旅行をする話。
文句ひとつ言わず、わがままを聞いてくれるシロさんに、ケンジも最初はテンション高く舞い上がっていましたが、あまりに至れり尽くせりなので不安になってくる。
「別れ話を切り出されるんじゃないか?」どころか「死 ぬ の!?」にくっそ笑いました。
しかもシロさんがケンジに尽くしまくっていた理由がこれまた……、シロさんのご両親ヒドイ!!(笑)
#50に感動して「筧家&ケンジはこれからもお正月はいっしょに過ごすのかな?」とほっこりしていましたが、甘かった。
無理強いはできないけれど、別れられたり、死なれるよりはマシだけれど、ケンジからしたらジワジワきますよね、これ。
 
今回は京都が舞台という事で、京都好きの自分としては、知っている場所が出てきて懐かしくなったり、知らない場所の情報を入手出来て楽しかった。
哲学の道から南禅寺への道は風情があって良いですね。
水路閣は山村美紗っぽいので、サスペンスドラマ好きには嬉しい。
いつもは観光客がいっぱいで、殺人や謎解き、犯人の説得をやってるような雰囲気ではありませんが。
個人的には南禅寺のお隣にある永観堂もおススメ。
スマート珈琲や日の出うどんも美味しい。
スマート珈琲は、卵サンドや2階のランチも有名。
本店は、市役所や織田信長が討たれた本能寺のご近所。
ライトアップは各地で開催されていますが、高台寺の比較的近くの清水寺のも捨てがたい(両方ともかなり混んでる&カップルだらけですが)。
さすがに俵屋旅館には、いまだに手が届きません。 

一応本の感想文が中心のブログなので、京都の話題はこれぐらいで自重。
 

#60感想

シロさん&ケンジがブラウニーを作る話。
前回の京都旅行で散在してしまったので、バレンタインは節約方向で。
仲良くキッチンに立つ二人を見てニヤニヤ。
今回のブラウニーも#38のバナナのパウンドケーキと同じく、ホットケーキミックスで作れるのが手軽で◎。
大量のバター、くるみ、ラムレーズンを投入すると節約にならないんじゃと思いますが、高級チョコよりはかなりお安く済みますよね。
チョコは上を見たらキリがないし。
すっかりケンジのあしらいに慣れたシロさんが可笑しい。
そして何より、一緒に作ったものを二人で食べるシロさんとケンジが幸せそう。

 

#61感想

佳代子さんから塩麴貰いついでに、シロさんが赤ちゃんを見に行く話。
佳代子さんの娘婿さん初登場。
「この人、母の友達でゲイの筧さん!」……、うん、安定の鈍感力。
婿の達也さんも割とテキトーな人ですが……(それでもシロさんにとっては癒し)。
うわぁぁあぁ、赤ちゃんの名前の由来を聞いた時、胸を突かれました。
これはシロさん、すごく嬉しかったでしょう。
こちらも思いがけないプレゼントをもらった気分。
連載当初から子供の事で度々ぐるぐるしていたシロさんですが、たとえ血縁関係はなくとも、人間関係というのはこうして色々と繋がっていくんだなあと心が温まります。
ケンジという喜びを共有できる相手がいてくれてるのも、幸せをより一層増幅させるのに一役買っている。
 
今回のメイン料理は鶏肉の塩麴ネギ焼き。
塩麴は現在スーパーやネット通販でもお手軽に手に入りますが、手作りだとまた一味違うのかな?
塩麴は味付けだけではなく、お肉を柔らかくしてくれる効果があるのも良いですね。
 

#62感想

ケンジの勤める美容室のスタイリスト・田渕剛君の話。
#52でかなり曲者だと思いましたが、やはり凄かった。
というか、シロさん&ケンジ共に、職場のメンツが何気に濃すぎ。
別れ行く二人の物語なのに、まったくウェット感がないのがよしなが作品らしい。
田渕君はぶん殴りたくなる無頓着さがある反面、一応反省はするけれど、過去をまったく引きずらないから強い。
女子からしたら拍子抜けというか……、逆に気楽というか……。
プラス思考でルックスも悪くないので、彼女が途切れないのも分かる。
逆に物事に執着している姿を見てみたいような気もするけれど、この作品の事だから、彼はこういう風に変わらず生きていくんだろうなぁ。
 
今回のメイン料理は長崎名物・皿うどん。
私は断然お酢+カラシ派ですが、ソースをかける概念はなかった。
麺の固い焼きそばみたいな感じでしょうか?
 

#63感想

シロさんが、月イチ遊園地の今田さんのいとこの相談にのってあげる話。
竹中さんも今井さんと負けず劣らずエキセントリックで、血の繋がりを脈々と感じる。
……つーか、この人も旦那に浮気されてるんかい!?
度々映画やドラマの題材に取り上げられていますが、痴漢の冤罪は怖いですね。
弁護士のシロさんは恐ろしさを重々承知しているから、”満員電車では必ず両手を上げろ!!”を家訓にしてしまいそうな勢い。
今回の場合は、ほぼ有罪確定(しかも前科有り常習犯)なので自業自得ですが。
竹中さんもここは切り替えて、第二の人生に向けて頑張りましょう。
しかし、竹中さんの周囲、彼女に対して誰も忠告してあげなかったんだろうか?
今井さんといい、この一族、肝心なところでボーっとしてそうなので、見ているこっちがヒヤヒヤします。
 
今回の料理は、しらすとみつばの卵とじ、ホタルイカ・わけぎ・わかめのぬた、菜の花のおひたしわさび風味、沢煮椀。
とうとうケンジにまで、おじさん通り越しておじいさん扱いされてしまったシロさん(笑)。
しかし渋いけれど、バランスの取れたメニューだと思います。
沢煮椀というのは初めて耳にしましたが、個人的には塩味大好きだし、具だくさんで美味しそう。
 

#64感想

この作品始まって以来の大事件だと思うんですが、なぜ矢吹家はこれほどのほほんとしているのだろう?
ケンジのお父さんが亡くなった話。
しかし愁嘆場は訪れず、淡々と進行していくのが矢吹家らしい。
まあ、ケンジも父親に関して「たまに来るおじさん」ぐらいにしか思っていなかったようだし、ケンジのお姉さんに至っては「顔見知りのどろぼう」扱いだし。
お姉さんの旦那さんも言っていましたが、悲しい葬式にならなかったのが、最初で最後にできた家族孝行だったのかもしれません。
ケンジの血縁者も皆個性的ですね。
ケンジの甥っ子、あまりにもケンジに似ていて血の濃さを感じる(彼はヘテロですが)。
シロさんは弁護士のため、面識のない矢吹家で評判高い点に笑いました(玉の輿って(笑))。
マイペースな矢吹家だけれど、お母さんの話を聞く限りは色々あったであろう事が滲み出ている。
けれども、ケンジにとってはお母さんの美容室を引き継ぐ可能性よりも、シロさんが矢吹家に来てくれる可能性の方が重要度高いんですね。
知ってた。
それでこそケンジ。