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『DOGS』(里つばめ/大洋図書H&C Comics)感想【ネタバレあり】

DOGS 【電子限定おまけマンガ付】 (HertZ&CRAFT)

DOGS 【電子限定おまけマンガ付】 (HertZ&CRAFT)

DOGS (H&C Comics CRAFT SERIES)

DOGS (H&C Comics CRAFT SERIES)

 
里つばめ先生の『DOGS』の感想です。
同じく里先生の『GAPS』シリーズのスピンオフ作品。
この作品単体で読んでも支障はありませんが、もちろん『GAP』を事前に読んでいた方がより一層楽しめます。
kashiwamochi12345.hatenablog.com
片桐の腐れ縁である強面刑事・矢島千紘が主人公。
ただでさえ倫理観のない片桐に振り回されがちな矢島なのに、恋愛面でもそんな厄介そうな男に行ってしまうとは(笑)。
 

『DOGS』(2016年12月1日発行)

あらすじ

警視庁丸ノ内警察署の矢島千紘は、佐々木秀一というフリージャーナリストの警護を担当する事になる。
生活安全課所属の矢島にとってはイレギュラーな仕事な上に、次々と狙われる佐々木を守りながら、矢島の身も危険に晒される。
事件の裏には公にはできない事情があるようなのだが……。
キャリア組なのにもかかわらず、現場に出張ってくる傲岸不遜な上司・斉藤誉に振り回される矢島。
おまけに、斎藤は矢島に強引なアプローチをかけてきて……。
 

総評

『GAPS』のスピンオフ作品ですが、警察が舞台になっていて『GAPS』とはまた違った味わい。
それにしても矢島よぉ、片桐で苦労しているはずなのに、よりにもよってどうしてそういう面倒くさそうな男に走ってしまうの!?
まあ、彼が惚れていた片桐の姉も凄まじそうなので、曲者を放っておけないんでしょうね。
もしかしなくてもドM?
長谷川とは良い酒が飲めそう。
 
矢島の斉藤に対する感情は「いけ好かないけれど気にあるアイツ」という感じ。
しかし、何度も言うようですが斉藤はかなり厄介な男なので、今後も矢島の心が休まる事はないでしょう。
斉藤の兄も一筋縄ではいかなそうなタイプだし。
斉藤と片桐、どっちがより厄介かと聞かれたら、非常に迷ってしまうレベル。
公権力を持ったジャイアン(違法スレスレも辞さない)と法律なんてクソくらえなジャイアン、どっちがマシなんですかね?
斉藤×矢島は、矢島が荒事に慣れている分、まだバランスが取れている……、のか?
あと斉藤ー長谷川は比較的平和そうだけれど、斉藤ー片桐は確実に互いが気に食わないだろうな。
所謂同族嫌悪。
 
物語の屋台骨となる事件に関しては、正直に言うと結末に釈然としないものを感じます。
ただし、この辺りは里先生も故意になさっているような気がする。
矢島と斉藤、ノンキャリアとキャリアの間にある、どうしても無視できない距離感を表しているようでもあります。
 

DOGS 1

物語の基本的な人間関係と、生活安全課がなぜ佐々木の警護をするのか「表」の理由の説明。
つかみはオーケー。
斉藤と佐々木の間には微妙な空気が流れているけれど、今のところ、矢島と同じく読者も「???」。
あと矢島の後輩・香川は爽やか系イケメンですが、里先生作品の習いで行くと彼も腹に一物抱えてそう。
 

DOGS 2

前回、佐々木を救ってお手柄だったのに、なぜか斉藤に虐められる矢島(ドヤ顔が可愛い)。
そして、間髪入れずにゲスト出演の片桐。
この二人、立て続けに来られると、矢島のメンタルをゴリゴリ削っていきますね(笑)。
友達の車でカー〇ックスした挙句に(長谷川も大変)、自分の姉・清香に対する矢島の甘酸っぱい想いをへし折る片桐が、通常運転過ぎて笑える。
 
だが、今回のメインという事で斉藤も負けてはいない。
誰だ、お前!?
矢島も驚愕するほどの若作り豹変ぶり。
おまけにたった一人でチンピラ集団粉砕するなど、「生活安全課課長」の肩書が……、「生活安全」の意味を懇々と問い詰めたい。
なにしろ若造共をいたぶるのが楽しそうでなにより。
矢島も、そこ、感心するとこ?
執務室の「正義」の額縁がシュールに見える。
あと矢島、斉藤に反抗的な態度を示しつつも、ちゃっかり調教されちゃってますね。
斉藤は斉藤でエロい雰囲気を放っているし。
 

DOGS 3

相変わらず俺様全開な斉藤。
よくこんなジャイアン気質で、縦社会の警察組織を渡ってこられましたね。
 
今回は矢島に対する斉藤の執着が一気に噴出しました。
あらためて読み返すと、執務室のキスシーンにも、斉藤のなかなか複雑な感情が表れていて興味深い。

斉藤の事だから、婦警の森下さんの自分に対する恋愛感情には気づいていただろうし。
余裕ぶっていますが、内心ではまったく脈がなさそうな矢島に対して、焦燥感を感じていたんでしょうね。
 
外務省へ赴く二人。
経済局国際貿易課の室長をしている斉藤兄登場。
兄弟そろってエリート街道ばく進中。
この人も緩い笑顔の下で何を企んでいる事やら……。
矢島に意味深な事を言っているのからも、斉藤の矢島への感情も把握済みなんでしょう。
身辺調査って、なんと殺伐とした兄弟関係。
あと壁を破損するのは、片桐といい、このシリーズの攻めではお約束。
 
上司にキスされるわ、真意は読めないわで、悶々とする矢島。
そこで片桐×長谷川を思い浮かべてしまうのが、矢島もかなり毒されているような……(なんか片桐のせいで、色々なハードルかなり下がってますよね)。
だが、そんな部下の困惑など、斉藤にとっては知った事ではない。
 

警察がごめんで済むと思ってんのか?

 
完全にヤ〇ザの台詞(笑)。
しかも、手錠+トイレに監禁とか、どこの世界のAVですか?
本当にありがとうございます(?)。
 

DOGS 4

天下の外務省のトイレでとんでもない目にあっている矢島。
斉藤はとりあえず各方面に謝れ。
矢島が負けん気を発揮してくるので、サドっ気のある斉藤が燃えてしまうのは分かりますが。
それでも途中でやめたのは、矢島のスマホの待ち受けになっている清香の写真を見てしまったからなんでしょうね。
意外と繊細?
いや、繊細な人間は、矢島の股間にそのスマホを押し当てるとかないな(遠い目)。
嫉妬の見せつけ方がいちいち怖すぎる。
 
そんな斉藤に反感を覚えつつも、矢島は翻弄されてしまう。
そして強烈なキスマーク……、皆、見て見ぬふりをしてくれるとは、なんと良い職場(?)でしょう。
 
一方、優しげな外見とは裏腹に、佐々木が本性を見せ始める。
矢島よ、一日の内にまったく別の人間から縛られるの、ねぇねぇ今どんな気持ち?(殴)
ここで真っ先に片桐に助けを求めてしまうのが、なんだかんだ言いつつも腐れ縁。
でも結局、助けてくれないんだ!?(笑)
確かにキスマークつけてこんな状態では、何らかの特殊プレイに見えない事もありませんが。
 
片桐が去った直後、斉藤現る。
矢島も体の自由が利かない状態で、どうして斉藤のツボを突くような言動をしてしまうのか……。
同じような状況に陥ってから、まだ24時間も経っていないのに。
斉藤が矢島を見る視線が、獲物を狙う獣のそれ。
 

DOGS 5

前回に引き続き、妖しい雰囲気になってしまった二人。
ここ、ホテルとはいえ、一応護衛対象兼参考人の部屋……、まあ、言うだけ野暮か。
この期に及んで、斉藤の本音が分からない矢島。
Mな上に天然?
さすがに嫌がらせでここまではしないでしょう。
キャリアがやるにはリスクが大きすぎる。
斉藤のアプローチが分かりづら過ぎるのもありますけれどね。
好きな子を虐める小学生並み。
告白の言葉も不器用だな。
でも熱烈で、普段の斉藤とのギャップに萌えます。
これがあるから、里先生の描く攻めは性質が悪い。

このまま香川が来なければ最後まで致してしまったんでしょうが……、ちくしょう、香川め。
 
片や矢島も、嫌よ嫌よもなんとやらというか……。
「美形が好きで何が悪い!!」って、それ、清香もそうだけれど斉藤にも該当するし(笑)。
片桐はダメでも斉藤は「……」な点で、矢島の気持ちはほぼ確定なんですが。
そんな時、矢島は斉藤が異動する事を知ってしまう。
斉藤が、なぜ矢島を強引とも言える手段で落とそうとしているのかが見えてきました(元々の彼の性格もあるだろうけれど)。
 
捜査令状が取れて、佐々木の仕事部屋を訪ねる矢島と斉藤。
二人きりで閉じ込められるとか、なんというタイミングの妙。
やはり矢島に迫りまくる斉藤でしたが、一応の気遣いは持っているようで。
有能で俺様だけれど、大事な相手には稚拙な手段しか取れない、そんな男の不器用さが出ていて良いですね。
斉藤が矢島に惹かれた理由もとても納得が行きました。
 

DOGS 6

前回ラストではなんとなく大人しかった斉藤なのに、舌の根も乾かぬうちに放尿プレイ強要とかド変態ですね。
メジャーって、一体どこの世界のメジャーですか?
 
そして、事件は決着。
怒涛の展開に矢島もポカーン。
斉藤兄の登場は伏線だったんですね。
大人の駆け引きや打算が見え隠れして、決して爽快なラストとは言えない。
しかし、斉藤はそういう世界に生きているんだなと……。
読者としても、矢島と斉藤との間に見えない壁を感じずにはいられないのですが、だからこそ斉藤は何一つ取り繕わない矢島を手放せないのでしょう。
一方矢島も、佐々木に斉藤を貶められて咄嗟に蹴りを入れた時点で、もう後戻りはできませんね。
 
終盤。
矢島、グタグタ悩んでいたけれど、こうと決めると思いっきり良いなぁ。
自分から行っちゃうんだ。
 

「俺が上なら考えてやる」
「いいぞ」

 
「えっ、まさか矢島×斉藤の下克上!?私のBLもまだまだ甘いなぁ」と若干ワクワクしましたが、そこは斉藤、おいそれとマウントは取らせなかった。
 

俺の家に来るのか?家なら0.1%ぐらいの確率で可能性もあるぞ。

 
譲る気明らかにない上に、家に呼ぶとか罠&斉藤のやりたい放題劇場でしょう。
場所が執務室だからといって、歯止めをかけるとは言っていないけれど。
壁時計の進み具合も何気にエロいなぁ。
その間に何があったのか、さらに詳細を知りたくなってしまう。
 
矢島を抱いて、すっかりデレてしまった斉藤。
「離れるとお前のことばかり考えそうだな」って、甘っ!!
あなた、どこのどちら様?

サドっ子上司はどこへ行った?(すぐに戻ってきそうではあるけれど)
 

今までだって、たいした用もねえのに呼びつけてただろ。
一駅離れたぐらいで改善すんのか。

 
確かにそんな殊勝な玉じゃないよね、斉藤は。
職場が離れた分、矢島の手間が増えるかもしれない(笑)。
 

TRIGGER

タイトルの通り、斉藤が矢島に惹かれる原因となった「引き金」。
想いが通じた途端、見境なくなったバカップル。
異動までのリミットがあるとはいえ、署内で毎日!?
せめて家でヤれ。
まさか職場の方が燃えるとか、そういう感じ?
斉藤にお熱な婦警さんが見たら憤死必至の案件。
 
斉藤、1年もの間片想いしてたんですか……、意外と純愛?
しかしファーストインプレッションが「背中に噛みつきたい」というのが、すでに不穏。
そして見事噛みつかれてしまった矢島、ご愁傷様です。