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『GAPS apples and oranges』(里つばめ/大洋図書H&C Comics)感想【ネタバレあり】

GAPS apples and oranges 【電子限定カラー】 (HertZ&CRAFT)

GAPS apples and oranges 【電子限定カラー】 (HertZ&CRAFT)

GAPS apples and oranges (H&C Comics CRAFTシリーズ)

GAPS apples and oranges (H&C Comics CRAFTシリーズ)

 
里つばめ先生の『GAPS apples and oranges』の感想です。
前作で自分の片桐への想いを薄々自覚した長谷川ですが、片桐の貞操観念のなさなどが気になり、どうしても素直になれない。
一方片桐は、なかなか落ちない長谷川を手に入れるために、ある一手に出ます。
 
このシリーズを読んだ事のない方は、まずは以下の作品から。
 
kashiwamochi12345.hatenablog.com
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『GAPS apples and oranges』(2018年6月1日発行)

あらすじ

片桐の破天荒さに振り回されつつも惹かれていく長谷川。
だが彼女がいる上に、女性にだらしない片桐の姿を見るにつけ、素直に身を任せるわけにはいかないという気持ちが高まる。
片や片桐も、長谷川をなかなか手に入れられない事に、焦燥を感じていた。
そんなある日、長谷川は以前好意を寄せていた元同僚・小林と再会するが、彼女がきっかけで思わぬ騒動に巻き込まれてしまい……。
 

総評

タイトルになっている「apples and oranges」は「あまりにも性質が違い過ぎて相容れないものや比較できないもの」という意味の熟語。
日本語で例えるなら「水と油」。
まさに長谷川と片桐の関係性そのもの。
 
だが、それでも自分の中でどんどん存在感を増していく片桐を無視できない長谷川。
自分の倫理観や男のプライドと、片桐への感情の間で揺れる37歳にニヤニヤ。
そして、今回ついに……。
 
また、そんな長谷川の葛藤を察しつつも、容赦せずガツガツ行く片桐。
顔には出難いけれど、今回はいよいよ長谷川を手に入れようとかなり必死になってますね。
方法自体は相変わらず手段を選ばずという感じですが、なんだかキュンとしてしまう私も手遅れ。
 
三浦も前巻と同じく二人の仲を引っ掻き回しますが、コイツも大概懲りないなぁ。
確かに長谷川と片桐の関係は、傍から見ている分にはすこぶる面白いですが(ヒドイ)。
 

GAPS apples and oranges 1

前回、ペッティングまでしてしまった二人。
しかし、長谷川はなかなか素直になれない。
デリカシー皆無の片桐のせいでもあるんですけれどね。
長谷川と最後までできなかったからってAV見てるし、「やらないんで顔にかけさせて下さい」って、NG続出過ぎていっそ大爆笑。
長谷川も「自分のもの」とか言われてときめいている場合じゃないぞ!
極めつけはEDに関してのあれやこれや……、あちゃあ、それ言ったらアカン奴……。
  
翌日。
三浦、完全にストーカー……、片桐の家から長谷川の事付けてきたんでしょうね。
そして、唐突なサッカー観戦。
片桐が青空の下でスポーツ楽しむとか似合わな過ぎ(競馬、競艇、競輪などは除く)。
しかし、片桐、街中歩いているだけで、今まで関係した女性達と行き当たるとは……。
「従姉妹」はさすがに厳しいでしょう(笑)。
加えて、サッカー競技場では逆ナンされているし。
やはり、長谷川にとって片桐と付き合うのはリスキーすぎる。
しかも三浦がダメ押し。
片桐には一応彼女がいるから、長谷川、確かに今のままでは間男ポジション。
長谷川の倫理観ではありえませんね。
 
そして、長谷川の与り知らぬところで、三浦に男の調達を命じる片桐。
今度は何をするつもりなのか……。
 

GAPS apples and oranges 2

片桐が女性に逆ナンされているのを見てしまい、一人、サッカー場を出てきてしまった長谷川。
「せっかく声をかけてくれた三浦には悪いことしたけど」って、どんだけお人好しなんですか!?
他の二人がアレなので目立ちにくいですが、長谷川も相当オカシイ。
 
そんな時、長谷川は昔の同僚・小林と偶然再会。
小林さん、別の男性と結婚してしまったけれど、実は長谷川が以前惚れていた相手。
しかも離婚して戻ってきたうえに、長谷川へもかなり好意的。
これはさらに泥沼!?
……かと思いきや、長谷川、すでに片桐で脳内キャパがいっぱい。
「これじゃまるで本当に――」とか言っている場合じゃない。
本人、気づいていないのかもしれませんが(もしくは気付かないふりをしているのか)、もう完全に後戻りのできない地点まで来てしまいましたね。
 
一方、その頃、ろくでなし二人は、にわか雨から避難するためラブホにいた。
しかし三浦、興味本位とはいえ、片桐を押し倒すってどんだけ勇者!?
そこは瞬時に返り討ちに合いますが。
「しゃぶれよ。俺のサイズなら余裕だろ」と言われて逃げ出すようじゃ、片桐抱くなんて百万年早いわな。
でも、コイツ、本当に転んでもただでは起きないというか……。
あえて誤解を招くような片桐の写真を長谷川に送り付けて、引っ掻き回す算段。
根っからの愉快犯&享楽主義者ですね。
そして長谷川も、ここで三浦ではなく片桐を着信拒否してしまうのが、片桐を意識しまくり&見も知らぬ女に嫉妬しているようにしか見えないのでした。
 

GAPS apples and oranges 3

三浦、再び長谷川に接触。
ホント自分が楽しむためには勤勉だなぁ。
おまけに長谷川にキスしようとする始末。
長谷川には拒まれてしまいましたが、これで長谷川はやはり片桐以外の男じゃダメなんだなという事が、読者にも三浦にもあらためて強調されます。
ここの三浦の何とも言えぬ表情……。
おちょくったり茶化したりしつつも、長谷川は三浦にとって生まれて初めて情欲を抱いた相手だから、彼なりに複雑な想いがあったのかもしれない。
それでも、お楽しみが優先である事に変わりはないんでしょうけれど。
 
三浦によって、片桐のいるラブホへ無理矢理引っ張ってこられた長谷川。
片桐が発散している雰囲気がヤバい。
もしかしなくてもド修羅場というか……、片桐が長谷川に「試してんの?」と言いたくなる気持ちも分からなくはない。
好意が透けて見えるのに、長谷川がなかなか自分のものにならないんだから、イライラが募るばかり。
長谷川の逡巡は、彼のような男には理解できないでしょうね。
でも、さすがに初めてが三浦の目の前でというのは、ちょっと上級者プレイすぎるような気がしますが(笑)。
 
ここで長谷川のふっとした台詞により、片桐がこのホテルで女を抱いていなかった事と「そうです、お巡りさん、コイツが犯人です」という感じ(?)で三浦の犯行も露呈。
結果、三浦はともかく粉砕されたスマホと、へこんだラブホの壁が可哀想だった。
「やりすぎじゃないすか!?」って、どの口が言う?
むしろ命が助かっただけめっけものというか、頭の毛を刈られなかったのも、三浦が長谷川の本音を引き出したから片桐なりの恩情?
 
このシーンの長谷川の表情がねぇ、ちょっとでもサドっ気ある人間なら追いつめたくなる事請け合い。
片桐が言うところの「俺のこと大好きなのがバレて恥ずかしーって顔」。
長谷川、無意識で片桐の男の本能にガソリンぶっかけて火をつけるような事するから。
というわけで、三浦を部屋から追い出して仕切り直し。
 

GAPS apples and oranges 4

片桐、相当切羽詰まってますね。
もう手でしてもらうだけじゃ我慢できないって……、昨夜、初めてしてもらったばかりだというのに欲張りさん。
まあ、あれだけ気持ち良かったんだから、もっともっとと次を求めてしまうのは無理もありませんが。
片桐の長谷川を求める気持ちが急加速しているのがうかがえる。
 
片や長谷川ですが、片桐を好きなのは確実なんだけれど、組み敷かれるのには男として抵抗がある。
37年間生きてきて、想像もしなかったような事態ですからね。
そこで片桐が……。
 

受け身だと思わなきゃいいんすよ。
こんなカッコいい俺に奉仕されてると思えば気分いいでしょ。

 
正直、長谷川を手に入れる詭弁と取れない事もないですが、案外的は外していない。
長谷川の男のプライドも慮っているようでもあるし……一応、片桐も成長している?

 
何だか良い雰囲気の二人でしたが、そこへお邪魔虫二人の上司である野村さんから電話が入る。
マジ休日出勤とかどうでも良いです(真顔)。
しかも電話越しに長谷川の喘ぎ声を聞いちゃうとかうらやまけしからん!!
いや、野村さんもまさか受話器の向こうで部下二人が乳繰り合っている(古)とは想像もしてないだろうけれど。
 
例の如く、寸でのところで逃げ出す長谷川。
 

勃ちが悪いからって、当然のように下にされてたまるか!
って、なんでやること前提で考えてんだ、俺。

 
一人ノリツッコミお疲れ様です。
でも、肉体関係を持つ事へのハードルは下がっているようで……、つい最近までフェラした口でキスされて吐いていた人とは思えません。
残された問題は、片桐の女関係ぐらい?
 
そして翌日の休日出勤。
片桐の王子様具合に今さらながら吹く。
無駄にキラキラしてますね。
これ、片桐の機嫌のバロメーターにもなっているような……。
しかも「俺もお前と仕事するのは好きだよ」なんて、意中の長谷川に言われてしまえばね。
片桐の中で後半部分の「好きだよ」がリフレインしているような気がしないでもない。
しかし、そこでまたまた×∞三浦が……。
コイツ、絶対タイミングうかがってたんだろうなぁ。
 
三人がワチャワチャしている間にお昼休み。
小林さんとランチの約束をしていた長谷川は、一度は部屋を出るものの、忘れ物を取りに戻る。
そこで、片桐が三浦を通して男を調達していた事を知ってしまう。
この二人が組んで、自分に隠れてこそこそやってるんだから、何か企んでいるとしか思えませんね。
 

GAPS apples and oranges 5

顔面偏差値は高いが貞操観念は底辺の二人によるランチ風景。
 

黒いカード、チラ見せして、ホテルに直行が定番コースだろ。

 
そんな世界の摂理語るような顔してクズ発言されてもな。
三浦に「どんな生き方してきたんすか?」なんて言われたらおしまいですよ。
 
一方、小林さんと食事をしていた長谷川は……。
この人も大概トラブル体質ですよね(遠い目)。
ある意味、片桐とはお似合いかも。
小林さんの超ヤバイ元旦那出現。
コイツを見ただけで、小林さんの苦労が察せられる。
それにしてもこの作品、今さらながら色恋絡みの刃傷沙汰が頻発(主に片桐のせい)。

そこへ片桐と三浦の新旧王子様コンビが颯爽と現れる。
さすが腐っても鯛というか……、二人とも、ちょっと場慣れしすぎてない?(笑)
どんな人生を歩んできたのか聞くだけ野暮ですが、とりあえず片桐の友人の刑事・矢島と連携して犯人確保。
これでめでたしめでたし……かと思いきや、ちょっと警察、詰めが甘すぎ!!
間一髪で長谷川は凶刃を逃れるも、かばった長谷川がケガを負ってしまう。
暴漢への報復を見ていると大丈夫そうで一安心ですが……つーか、これ、どっちが犯罪者だか分かんないなぁ。
 
その夜、事情聴取も終わって、やっと解放された三人。
三浦が片桐に手柄を譲るなんて明日は槍でも降るんじゃないかと思ったら……。
そこは三浦、ブレなかった。
盗聴器……、三浦、もはや長谷川が自分の上司だって事忘れてませんか?(それ以前に人として……)
 
片や、長谷川はランチ前に聞いた片桐と三浦の話を懸念していたが、とりあえず片桐が男のところに行く気配がないのでホッと胸を撫で下ろす。
おまけにこのシーンの片桐の表情と台詞、「あぁ、こういうの長谷川のツボにドンピシャだよね」という感じ。
三巻まで読んでいると、片桐ならずとも長谷川の好みは大体把握できるようになってきました。
 

…それ、風呂とか面倒だろ。
手伝うから。

 
……これは!!(ゴクリ)
 
こうして片桐の部屋に戻ってきた二人でしたが……。
長谷川も読者も、汚部屋の住人の住まいを甘く見ていたのでした。
風呂場汚いとかムードぶち壊し(爆笑)。
傷口から雑菌入るってどんだけ!?
十中八九「見せられないよ!」なレベルなんだろうな。
 
しかし、そこで片桐が三浦に男を用意させていた意外な理由が明かされる。
いや、良い話風にしているけれど、片桐、やってる事はかなりえげつないですからね。
彼女と別れたいからってハニトラ仕掛けるとか……。

とりあえず長谷川にバレなきゃいいかぁ(私も完全に片桐に毒されているな)。

長谷川もついに自分の気持ちを素直に認める。
なんだかんだ言いつつも幸せそうな二人で〆。
 

Drops

凄い焦らしプレイを見た。
ええ、ここで待て次巻!?
そんな殺生な……。
まあ、長谷川の生娘も真っ青の初々しさに免じて許してあげよう(何様?)。
怪我の加減は片桐の事だから想定内でしたが、こういう言い方されると絆されちゃうだろうな。
なにより怪我が軽かったのが嬉しいって……、早速糖度が増している二人。