ボーイズラブのすゝめ

ボーイズラブ系のコミックス&小説の感想を中心に。

『僕のおまわりさん(1)』(にやま/竹書房バンブーコミックスmoment)感想【ネタばれあり】

僕のおまわりさん【完全版(電子限定描き下ろし付)】 (moment)

僕のおまわりさん【完全版(電子限定描き下ろし付)】 (moment)

僕のおまわりさん (バンブーコミックス moment)

僕のおまわりさん (バンブーコミックス moment)

 
にやま先生の『僕のおまわりさん(1)』の感想です。
同じくにやま先生作の『無邪気なわんこと猫かぶり』のスピンオフ。
今度は『無邪気な~』で主人公二人のキューピット役(?)を務めた誠治が主人公となっています。
前作とは違ったタイプのわんこ系攻めも登場。
本作単体でも読めますが、もちろん『無邪気な~』を読んでいた方がより一層楽しいです。
 
kashiwamochi12345.hatenablog.com
 

『僕のおまわりさん(1)』(2017年8月30日発行)

あらすじ

10年ほど前に警察官を退職して、実家の商店を継いだ田島誠治は、飼い猫であるチコたんと、一人と一匹で気楽に暮らしていた。
ところがある日、警察官時代になにかと気にかけていた元不良少年で、現在は警察官をしている仲本晋から突然告白&キスをされてしまう。
誠治が警官を辞めた事により、二人の交流は一時途絶えていたのだが、晋はずっと誠治に片思いをしていたと言う。
なんだかんだと言いつつ、誠治も晋が可愛くて仕方がなく、お付き合いを始めた二人だったが……。
 

総評

30歳警察官×39歳元警察官で今は商店経営のおっちゃんのラブコメディ。
本作の最も良いところは、なんと言っても受けの誠治がきちんと(?)おっさんな点。
耳の穴をほじったり、顎髭もすね毛もあります(ボーボーじゃないけれど)。
前作『無邪気なわんこと猫かぶり』を読まれた方はお分りだと思いますが、性格も超テキトー。
でも決していい加減ではない。
押し付けがましくない優しさや、自然体で大らかな笑顔。
あまり家庭環境のよろしくなかった晋が、惹かれたのも頷けます。
晋にとって、誠治は恋人なんだけれど、父親であり、母親であり、兄でもあるような、とても大きな存在なんですよね。
チコたんにメロメロなところ等も含めて……、とにかく可愛いおっさんパワー全開で、読者もページをめくるうちに沼にハマっていく事請け合いです。
 
片や、攻めの晋ちゃん。
大型わんこ系攻めだけれど、前作の赤坂とはまた違った魅力。
赤坂がオープンな天真爛漫タイプですが、対して晋は超むっつり。
鉄面皮の下で妄想がもの凄い事になっていますが、それもまた面白い。
10年以上の片思いをこじらせた彼だけれど、変に歪んでいなくて、誠治へ一途にまっしぐらなところが可愛い。
誠治もあれだけ思われれば絆されます。
 
タイトルにもなっている「僕のおまわりさん」というのは、晋から見た誠治であり、それと同時に誠治から晋であり……、ある種のダブルミーニングになっている。
互いを誇りに思っている二人も、本当に見ていて爽やか。
でもエロはちゃんとエロい(?)。
『無邪気なわんこと猫かぶり』よりも、さらにパワーアップしている。
現役警官である晋が190cmの高身長&バッキバキな良い体をしているので、誠治との体格差に萌え。
晋が誠治を抱きしめるとすっぽり収まっちゃう感。
また誠治の体が見苦しくない程度に、おっさんらしくちょっとプニッとしているのがまた艶っぽい。
 

僕のおまわりさん 第1話

真夏の太陽の下、ガタがきている扇風機や砂糖入りの麦茶、風鈴の音、セミの鳴き声など、いかにも「夏」といった小道具が味わい深い。
10円と女の子のエピソードにも、二人の優しさと仲の良さが滲み出ていてホッコリ。
前作の主人公カップルの影響で「あーあ、俺もいっそ男に乗り換えよっかなァ」といつも通りテキトー発言かましている誠治ですが、だから飼い犬に手を噛まれるのですよ(笑)。
そりゃあ、相手はノンケでほぼ諦めかけていた10年愛にうっすらと希望が出てきたんだから、晋もそれに縋りたくなります。
ラストの晋の台詞にもニヤリ。
このシーンは何となく『ルパン三世 カリオストロの城』を彷彿とさせる。
我らが髭のクラリスは、ハートだけではなく唇も盗まれましたが。
 

僕のおまわりさん 第2話

前回のキス以降、分かりやすく自分を避ける晋に、さすがのテキトーおじさんも色々考えてしまう。
 

最低でも10年以上…。

 
虚無顔に爆笑。
誠治の言動がいちいちとぼけていて、今ひとつシリアスになり切りませんが。
 
一方、こちらも絶賛お悩み中の晋は、自室で誠治の警官時代の写メを見ながら、誠治と出会った頃を回想していた。
誠治、今と変わらず若い頃もちゃらんぽらんですが、それでもツボを押さえているというか……、今まで晋が出会ってきたどの大人とも違ったんでしょうね。
ここで写メをオカズに、晋が自慰をしてしまうのが、実に竹書房作品らしいなと思いましたが。
おまけに写メにぶっかけちゃって、晋は「最低だ…」と落ち込んでいましたが、大丈夫、読者にとっては最高だから(何の慰めにもならない)。
 
そうこうしている内に、誠治がスタッフを務める街コンが開催される。
この街コン、カップル成立に貢献していますね。
ただし同性同士でくっついてしまうので、このイベントの趣旨からは外れてしまいますが。
 
人数合わせに、自分へ想いを寄せる晋を呼んでしまうのが誠治らしい。
顔も整ってるし、高身長だし、安定収入の警察官だしで、晋が女性にもてるのも分かるわ……。
まあ、当然の如く、晋には誠治しか見えていないんですけれどね。
 
またこのシーンでは『無邪気なわんこと猫かぶり』の主人公である八木と赤坂が登場。
二人が幸せそうにしていてなにより。
そして前回のお返しとばかりに、誠治と晋へイイ感じのアドバイスをくれる。
八木の言う通り、誠治の言動は確かにテキトーだけれど、皆の人生を自然と良い方向へ導いてくれる。
八木や赤坂はもちろん、他でもない晋もそうだった。
片や誠治への「この際、お前も男にしたら?」は、完全に前回の意趣返しですが。
 
八木達のナイスフォローもあり、とりあえず付き合う事になった二人。
誠治の態度、一見通常運転ですが、照れ隠しも入ってますよね(可愛い)。
晋は体も恋情も重いので、なかなか受け止めるのが大変そうですが、誠治ぐらい懐が大きければ大丈夫でしょう。
ラストでは今ひとつ受け止めきれてませんけれどね(笑)。
  

僕のおまわりさん 第3話

直球のエロシーンも良いけれど、付き合い始めでなかなか一線を越えられないジレジレ感も、ボーイズラブ物の醍醐味だと思うの。
晋の方は誠治へ猫ならぬ犬まっしぐらで、ガツガツした感じがたまらん。
長年の片思い相手とお付き合いする事になったんだから、欲求が高まってしまうのはむべなるかな。
でもチコたんの妨害にあったり、誠治が及び腰になったりとなかなか先へ進めない。
 
今回、第1話で張られた伏線が回収されます。
誠治のこめかみの古傷は、やはり晋をかばってできたものだったんですね。
なんの見返りもなくこんな風に助けられてしまっては、たとえ恋情抜きにしても、晋が誠治を忘れなくなってしまうのも無理はない。
 

カッコいいだろ。俺の勲章だ。

 
なんの衒いもなく、笑顔で言える誠治が格好いい。
そんな彼に憧れて、警察官になった晋。
 

今度は俺が誠治君を守ろうと思って。

 
ここで思わず茶化しているのがいかにも誠治ですが、見ているこちらも照れます。
晋の一途な想いに答えるべく、誠治も身を任せる決心をする。
この辺、外面は年長者らしくリードしていますが、本当は緊張の裏返し。
耳を真っ赤にする39歳が美味しすぎる。
布団の上でくんずほぐれつする二人もとびっきりエロい。
そして結ばれる二人……、かと思いきや。
 
濡れ場でゴルゴ顔する受け、初めてみたよ、ママン……。
同コマの予言(?)にも笑いが止まらない!
つーか、晋ちゃん、まるで下調べしてなかったんかい!!
何の準備もなく、その鈍器は無理だろう(ボーイズラブはファンタジーなので、往々にしてOKな事も多いですが)。
いや、さすがにそのまま突っ込んだら、誠治、壊れるよ。
頼むからおっさんを労わってやって。
とりあえず、ネット辺りでお勉強する事から始めましょう。
 
結局、お預け食らった晋ちゃんですが、徐々にカップルらしくなっていく二人なのでした。
  

僕のおまわりさん 第4話

町内会の七夕祭りでイチャイチャする二人を満喫。
オッサンショタ(?)オーラ&誠治くんラブオーラがスゴイ。
イイ年した大人が、まるで学生のようなデートをしている姿にときめく。
警官&元警官だから射撃もお手の物。
ここで取ったダンシング獅子舞(昔のフラワーロックみたいなヤツ)が後に活きてくるとは思いませんでしたが。
 
むっつりスケベの晋の脳内は、誠治の浴衣姿に触発されて妄想炸裂していますが。
誠治もフランクフルトやチョコバナナを頬張るなど、無意識に晋を煽るような事するから、これはしゃーない。
おまけに人気のない場所で、晋の破壊力抜群の笑顔を真正面から受けて、暴走してしまいそうになる晋。
 

早く抱きたい。

 
そんな晋の懸命さにドキドキな誠治だが、そこはなけなしの年長者のプライドでなんとか躱す。
 

うち、帰るぞ。

 
イコール家へ帰るまでお預けという事で……。
帰宅途中の晋の鬼気迫る表情と、脳内の勝どきに爆笑。
「今夜こそイケる!?」と晋や読者の期待も高まりますが、さすがこの二人、そうは問屋が卸さなかった。
 
なんとコンビニ強盗に遭遇。
せっかくXLサイズのアレやオリーブオイルなんかも超真剣に見繕っていたのに……、晋ちゃんがいよいよ不憫になっていた。
しかし正義感の強い警官&元警官のコンビだから、この事態を放っておけるわけがない。
誠治がなんかやらかしつつも、とりあえず犯人確保。
だが晋が誠治をかばって負傷してしまう。
奇しくも、以前誠治が晋をかばった時に負った右こめかみの傷と同じ場所。
「今度は俺が誠治くんを守る」という決意を見事遂行しました。
まさに有言実行の男。
「ああ、ありがとな」の誠治の笑顔で、晋も満たされたんだろうな。
まあ、怪我のせいで、誠治くんを抱くという本懐は遂げられなかったんですけれどね(笑)。
問答無用で救急車に載せられていラストが爆笑哀れでした。
 

僕のおまわりさん 第5話

前回の騒動で晋のケガも完治し、いよいよ結ばれる二人。
七夕祭りでそれぞれが書いた願いが明かされつつ、二人の心が近づいていく。
誠治が首をかしげて晋を見上げたり、あまりの幸福に喜ぶよりも鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまう晋とか……、可愛さの詰め合わせのようなシーン。
二人の団欒の合間に挟まれるチコたんのショットも超キュート。
猫好きには二人のHシーンと合わせてご褒美ショットですね。
「何やってんの」とニャーニャー問いかける図が、二人の子供のようにも見える。
 
Hシーンも艶がありつつも、誠治と晋らしい笑いに溢れていて良かった。
たとえぽよよんとしたおっさんボディでも晋が萎えるわけないじゃん。
10年待った晋の方はおっさん体系上等というか、むしろそれがエロいとか思ってそう。
年上受けの包容力もたまらん。
晋がすっかり甘えん坊みたいになってます。
年上受け最高!年上受け最高!!年上受け最高!!!(大事な事なので三度言っておいた)
そして晋が誠治を大好きだというのは先刻承知済みですが、第3話の頃などと比べても誠治の表情が明らかに違う。
彼の晋に対する感情が格段に増しているのが伝わってきて感無量。
 
ラストは誠治と晋、チコたん、二人と一匹のかけがえのない日常で〆。
 

描き下ろし・おまけ

散髪した誠治が新鮮。
汗で張りついた乱れ髪と吸い付きたくなるようなキレイなうなじ、どちらも捨てがたい。
なに、この究極の選択……。
制服(彼シャツ)Hは絶対あると思ってました。
晋ちゃんはそういうの滅茶苦茶興奮しそうだよね。
元々、警官をしていた誠治に惚れたのもあるし。
ここで二人のサイズ差がめちゃくちゃ活きてくる。
そりゃあ、晋の晋・ゴ〇ラもギャースと火を噴くぜ。
年下攻めのがっつきようと年上受けのエロさが前面に押し出されて鼻血不可避。
ラスト、ギシアンのあまりの激しさに、ダンシング獅子舞もフィーバーしちゃったのに爆笑。
それでも続けられる晋ちゃん、やはり筋金入りの誠治ラブ勢だなぁと。