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『ホテル王はそれを我慢しない』(慧/KADOKAWAフルールコミックス)感想【ネタばれあり】

ホテル王はそれを我慢しない (フルールコミックス)

ホテル王はそれを我慢しない (フルールコミックス)

 
慧先生の『ホテル王はそれを我慢しない』の感想です。
ホテルマン達の恋を描いた『エリートの理性も限界だ』のスピンオフですが、こちら単体でも楽しめます。
ラスベガスのホテル王×フロントクラーク。
攻めがホテル王という事で、もっと浮世離れした物語を想像していたんですが、地に足の着いた手堅い作品になっていると思います。
 

『ホテル王はそれを我慢しない』(2019年5月17日発行)

あらすじ

ジェンムホテル東京でフロントクラークを勤める陣野健人は、あるバーでアルフ・スキナーというアメリカ人と出会う。
アルフに出会い頭から絡まれた上に、ビリヤード勝負で勝ち逃げされてしまった健人は、「次は俺が勝つ」と意気込む。
しかしアルフの正体は、なんとジェンムホテルの海外アドバイザーとして来日した、ラスベガスのホテル王だった。
おまけに何の因果か、アルフに気に入られてしまい、同じ仕事に取り組む事になった健人だったが……。
 

総評

同じくジェンムホテルを舞台にした『エリートの理性も限界だ』のスピンオフ作品。
ですが、こちら単体だけでも、内容は把握できます。
実際、私も現時点では『エリートの理性も限界だ』を未読ですが、十分楽しむ事ができました。
 
三白眼受けが気になって手に取った作品ですが、健人の気の強さや上昇志向の裏に隠された対人関係の拙さはかなりツボ。
攻めのアルフに簡単にはなびかず、強引に迫られたら腹パンや柔道技も辞さないのもポイント高い。
受けたるもの、これぐらいの気概は見せてくれないと。
仕事に対しても真摯に向き合っている。
さすがに後輩の古坂にあたってしまったのはどうかと思いますが、フォローして、自分の弱点をきちんと受け止められたのは彼にとってプラスになった。
これから先、アルフと共に歩んでいけばこれからもっと素敵なホテルマンに成長できるのではないでしょうか?
 
一方、攻めのアルフはホテル王という事で、どんな強烈キャラかと思いきや、破天荒だけれど割と気さくな兄ちゃんですね。
口が悪く、肉親へのコンプレックス持ちだが、変に歪んでいない。
有能でポジティブなのに、健人にどうアプローチして良いか分からず悩む姿にキュンとしてしまいました。
大の男が不器用で可愛い恋愛をしている。
健人の前だと幼さすら感じます。
好きな子に意地悪しながら、様子見している小学生みたい。
だからこそ、ホテル王の時の風格との対比が活きてくるのですが。
 
そんな健人とアルフが互いに感化される事で、己の欠点を見つめ、改善していく。
そして相手が自分にとってかけがえのない人間だと気づき、二人の間に恋が芽生えるという王道ストーリー。

恋人であると同時に、ビジネスパートナーとして互いを認め合っているのも良い。
贅沢を言えば、もっとお仕事シーンを拝みたかったけれど。
奇抜さはありませんが、その分安心して読める一冊です。
  

ホテル王はそれを我慢しない 第1話

アルフの、スリルを求める傍若無人な夜の顔と、「いかにもできる男」なホテル王の顔のギャップがたまりません。
そして、立場が上のアルフに態度を取り繕う事ができず、ついつい反抗的な視線を向けてしまう健人。
賭けで無理矢理キスされて、その後に腹パンで報復するのが良い。
個人的はここでナヨってしまうような受けは苦手なので……、受けはこれぐらい強きじゃないと手応えがない。
おそらくアルフも、健人のそういう部分を気に入ったのではないでしょうか?
現段階では物珍しい玩具扱いですが……。
健人もとんでもないのを引っかけてしまいましたね。
 

ホテル王はそれを我慢しない 第2話

アルフの友人で、これまた香港のホテル王のルオ・ウォン来日。
ちょっとこの辺り、ホテル王密度高すぎない!?
 
ついつい流れで、ルオと共にアルフの部屋(マンションのワンフロア貸し切り)に来てしまった健人。
アルフと働く事になって、同僚からさらなるやっかみを受けてしまい苛立ちを隠せません。
しかし、ここでアルフが直球のド正論。
両方にプラスになるような関係を築いて良い仕事をするというのは、他者の陰口を気にするよりもよほど建設的。
こういう考え方、好きだなぁ。
あと確かに媚びは売られてませんね、ケンカなら売られたけれど(笑)。
健人もアルフの言葉に感銘を受けて見直す。
一方、アルフも単に順風満帆なお坊ちゃんではなく色々抱えているようですが、健人から嬉しい言葉を貰い、余計彼の事を気に入ってしまう。
 
健人にグイグイ迫るアルフでしたが、ホント歯に衣着せぬというか……、ぶっちゃけこれ、健人じゃなくても怒るわ……。
健人も柔道技をかけたりと、易々とマウントを取らせないけれど(凄まじい濡れ場(?))、結局イかされてしまい、怒りが収まらない。
片やアルフはそんな健人が面白くて仕方ないという……、健人にとっては、ある意味悪循環なのでした。
 

ホテル王はそれを我慢しない 第3話

二人の、人としての課題が見えてくる回。
昨日のアルフとのアレコレもあり、一層イライラが増していく健人。
だが、後輩にあたるのは宜しくありませんね。
表と裏を上手く使い分けているつもりでも、必要以上にストレスをためるのは無理している証拠。
 
アルフはアルフで、傲岸不遜な言動の下に不器用な素顔を隠している。
つーか、ルオに対して「健人の事を好きになった」と言うのは許せるとして、ヌいた話、それ必要!?(笑)
口説き文句も……、これは健人に「遊んでいるだけ」と思われても仕方がない。
「賭け」、「賭け」言っているのも、父親や出来の良い兄と比べて、「運」しか誇れるものがないからなんですけれどね。
個人として評価してもらった事のないアルフにとって、素の自分を見つめ、ぶつかってくる健人は貴重な存在。
惚れてしまうのも分かります。
 

ホテル王はそれを我慢しない 第4話

肉親へのコンプレックスに苦しみつつも、健人を手に入れる事を諦めず、基本ポジティブなアルフは見ていて気持ちが良い。
一方、健人もアルフのおかげで、人間関係が良い方向へ向かう。
そして、ルオが一芝居打ってくれたおかげで、アルフへの想いも自覚し始める。
ちなみにルオはバイで、男同士の場合は受けなんですね。
それはそれで見てみたい。
 
今まで仏頂面や怒りの表情がほとんどだった健人ですが、今回は笑顔やテレ顔など、様々な表情を大盤振る舞いでした。
酔っぱらってアルフにキスした時のしてやったりな顔や、告白の台詞「好き…かもな!」の余裕のなさも好き。
「かも」が余計かもしれませんが、彼の素直になり切れない性格が表れている。
反面、体はとても素直ですけれどね(笑)。
結ばれた翌朝、足腰立たなくなって「べちゃ」っとなっちゃう姿が可愛い。
ホテル王はソッチ方面も我慢しませんね。
この二人、無事両想いになれましたが、これからも波瀾万丈そうな予感がするので是非続編希望です。

描き下ろし・AFTER STORY

健人の同僚で『エリートの理性も限界だ』の受け・二上保貴が登場。
ちなみに攻めの河南も第3話に出ています。
 
お付き合いは始めたものの、まだまだ互いの事をあまり知らない二人。
牛丼屋って意外と庶民的だなぁ、片方はホテル王なのに。
しかし、そこが良い。
 
食事の後はもちろん(?)アルフの部屋へ連行される健人。
行為に慣れない初々しさが返ってエロス。
健人に「かも」が付いてない「好き」を未だ言ってもらえないアルフも可愛い。