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『ただれた恋にはいたしません!』(らくたしょうこ/オーバーラップリキューレコミックス)感想【ネタばれあり】

ただれた恋にはいたしません!【単行本版】【電子限定描き下ろし漫画付き】 (リキューレコミックス)

ただれた恋にはいたしません!【単行本版】【電子限定描き下ろし漫画付き】 (リキューレコミックス)

ただれた恋にはいたしません! (リキューレコミックス)

ただれた恋にはいたしません! (リキューレコミックス)

 
『ただれた恋にはいたしません!』の感想です。
生まれも育ちも東京のチャラ男と、地方から出てきたばかりの大学生によるラブコメディ。
勢いとテンポの良さ、とぼけた会話で、読者の笑いのツボを押してくれます。
 

『ただれた恋にはいたしません!』(2019年4月25日)

あらすじ

大学入学を機に地方から上京してきた宮沢恭平が隣室へ挨拶に行ったところ、隣人は女にだらしなさそうな「シティボーイ」(恭平の脳内イメージ)だった。
恭平を田舎者呼ばわりまでした、その男の名は高良友博。
なんと恭平の通うS大の先輩で、校内でも顔を合わせる事になる。
なにかにつけて恭平をからかう高良だが、実は大の虫嫌いである事実が発覚。
恭平が彼の代わりにゴキブリを退治したのがきっかけで、二人は交流を深めていく。
そんなある日、恭平のもとへ幼馴染の雄太がやってくる。
雄太の存在により、恭平と高良の関係は急展開するが……。
 

総評

一に勢い、二に勢い、三、四がなくて、五に勢いといった感じのラブコメディ。
大ネタでドッカンドッカン笑わせるというよりも、小ネタを重ねて波状攻撃を狙ってくるタイプ。
 
そして本作は、受けの恭平を愛でるための作品でもある。
彼はいわゆる田舎者というよりも、自然の中で育った純粋培養児といった側面が強い男の子。
恭平の愛らしさととぼけ具合が、肌に合うか否かで、本書を手に取った方の勝敗(?)が決まります。

Amazonなどのお試し版を、判断材料として使ってみるのも手かもしれません。
個人的には、彼の小動物っぽさがたまりませんでした(例えるならば、キャンキャン吠える小型犬)。
ぶっちゃけ飼いたい(!?)。
彼が幼馴染の雄太のようなヤバい奴を惹きつけてしまうのも分かります。
 
一方、攻めの高良は、格好つけているにもかかわらず虫嫌いというギャップが効いていたものの、キャラクターとしては少し弱かったかもしれない。
確かに女性にはだらしがなかったかもしれないが、他の部分は真面過ぎたというか……。
何しろ、特に後半などは、雄太、恭平のばーちゃん、恭平の友人・村ちんからモブに至るまで、脇役キャラの濃さが水際立っていたので。
最終的には、主人公二人の存在感をも凌駕していたかも。
私はギャグで楽しませてもらったので概ね満足ですが、あくまで恋愛重視の方とでは評価が分かれるかもしれません。
  

ただれた恋にはいたしません! 第1話

恭平の言葉選びのチョイスやぶっ飛んだ妄想がクセになる。
とにかくツッコミどころ満載。
私は彼よりもかなり年長ですが、それでも「シティボーイ」は使わんよ(笑)。
この子、どんな時代の本を愛読しているの?
あとその年齢でコン〇ームを知らんのは、おばちゃん、どうかと思いますよ。
恭平が匂いを嗅いだ時は、高良と同じく噴き出しました。
田舎の性教育、どうなってる?
この時の「えっちごっこ」発言が、後の伏線になっているとは思わなかったけれど。

いつもはチャラチャラしているくせに、虫が大の苦手な高良もイイ味出してます。
ゴキ〇リを前にした時の高良の恐慌ぶり(ご近所さん大迷惑なのでは?)と、恭平の殺し屋の視線に笑う。
 
結局、勢いで際どい事まで致してしまった二人。
ギャンギャンわめく恭平に対して、キュンとしてしまった高良。
果たして二人の関係はどうなる?
 

ただれた恋にはいたしません! 第2話

新入生コンパで飲んではいけないものを先輩に飲まされた(むしろ勝手に飲んだ)恭平。
そんな彼を助けたのは、犬猿の仲の隣人・高良だった。
「いつもはいけ好かないアイツだけれど、実は悪いヤツじゃなかったんだね」という、ある意味お約束の展開ですが、テンポの良さにより最後まで読者を飽きさせない。
高良、恭平をからかいつつも、この時点で少なからず入れ込んでますね(ニヤニヤ)。
ラストも、媚薬で昂らされた恭平の熱を、高良が抜いてあげるという超ド定番であるものの、恭平のあどけなさに高良と同じく萌えてしまった。
あと事後に恭平の家族写真に「す、すみませんでした…」と謝る高良が、意外と律儀でホッコリ。
 

ただれた恋にはいたしません! 第3話

最初は互いにムカついていたはずなのに、なんだかんだで距離感が縮まっていく二人。
特に高良のトキメキ度はかなり高いと見た。
そこへ恭平の幼馴染・雄太がやってくるが……、雄太、超怖っ!!
なんか一気に作品の方向性が変わったのは気のせい!?
大体こういう終始ニコニコしているタイプは、フィクションでは裏表があると相場が決まっているが。
予想に違わぬ豹変ぶりを見せてくれた雄太に拍手。
「えっちごっこ」も……、よくトラウマにならなかったな、恭平。
恭平を問答無用で押し倒す雄太。
そこへ颯爽と(?)現れたのが高良。
しかし、それは実は恭平を助けにきたわけではなく、単に置き去りにされたイナゴのつくだ煮が怖かっただけという……、当初のしれっとした彼はどこに行った?
 

ただれた恋にはいたしません! 第4話

前回に引き続き、雄太のサイコっぷりが炸裂。
幼馴染の持ち物に盗聴器まで仕込んでたんかい……(震)。
という事は、恭平と高良のアレコレも聞かれてたんですね、うわぁ……。
 
とにかく雄太を恭平の部屋に泊めるわけにもいかず、「じゃあ、もう俺んち泊まれよ!」って高良、こんなキャラだったっけ?
高良の部屋に入った途端、イナゴを貪り食って高良へと嫌がらせする雄太。
途中に差し挟まれる高良と雄太の会話は結構重い内容なのに、この作品、なぜかシリアスになり切らない。
高良が大嫌いなイナゴのつくだ煮を食べるという男気(?)を見せる事により、なんだかすべてが丸く収まった感が凄い。
 
クライマックスも、色々過程をすっ飛ばしていきなり登場した恭平のばーちゃんに呆然。
なんかとてつもない剛腕で、話を無理矢理良い方へまとめていたような……。
さすがばーちゃん、亀の甲より年の功。
この回、振り幅は大きくて、読者も付いていくのが大変。
とりあえず、雄太は大和魂ボンバーズのライブを見て更生してください。
 
ラストは、雄太の存在に触発されたのか、高良から恭平へ突然の告白とキス。
 

もうお前だけにするっつったらどうする?

 

ただれた恋にはいたしません! 第5話

最終回にも関わらず、恭平のばーちゃんの弾けっぷりがスゴイ。
正直、主役の二人が霞む存在感。
当初はボケ役だった恭平もすっかりツッコミ役にジョブチェンジ。
二丁目のバーテンダーも、モブのくせになんなんだ、この存在感!?
雄太も失恋を振り切ったようで、とりあえず良かった……(良かったのか、これ?)。
「ついていけない」という恭平の絶叫に激しく同意。
 
一方、肝心の恭平と高良の恋の行方は……。
高良に清算された元・彼女さんがひたすら気の毒だった&後ろ姿と髪の毛ファサッ…に笑った。
目の前でバカップルのイチャイチャ見せつけられたらたまらんよ(本人達無自覚)。
最終的には、恭平と高良の心も体も結ばれてHAPPY EVER AFTER。
それにしても、ボーイズラブで最中にこれほど痛がる受けも珍しい。
「いだーーー!!」って、恭平、これ、夢溢れるHシーンで受けがしていい顔じゃないと思うの。
 

描き下ろし・追いつけない、敵わない

高良視点のお話。
相変わらずワチャワチャしつつも、ラブラブな日常の一コマ。
今まで散々遊んできたため、本命を大事にする方法が分からない高良。
今更「大人の余裕」って、あれほど醜態をさらしておいて(主に虫関係)、それはかなり難しいのでは?(笑)