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『恋人を口説く方法』(青山十三/新書館ディアプラス・コミックス)感想【ネタばれあり】

恋人を口説く方法 (ディアプラス・コミックス)

恋人を口説く方法 (ディアプラス・コミックス)

 
青山十三先生の『恋人を口説く方法』の感想です。
前作で友情から変化した恋情を成就させた柳浦と鬼塚。
やっと体を繋げたり、鬼塚の家族のような同僚達に挨拶したりと、順調に交際を進めていきます。
ところが、意外なところから火種が生じ、サラリーマンである柳浦はジリジリと追いつめられていく。
二人は危機を乗り越える事ができるのか?
 
kashiwamochi12345.hatenablog.com
 

『恋人を口説く方法』(2016年11月1日発行)

あらすじ

友情から発展した恋心を実らせ、心も体も結びついた柳浦と鬼塚。
しかし、あるきっかけで知り合った森山という男により、二人の間に波乱が齎される。
なんと森山は柳浦が勤める鷹場産業の同僚であるばかりではなく、柳浦の上司・鷹場功一と敵対する人間のために動いていた。
鬼塚の過去や交友関係をあげつらわれ、仕事との板挟みになる柳浦。
一方、鬼塚もあまりに近い柳浦と森山の距離感に、柳浦を奪われるのではないかと悩んでいた。
 

総評

大好きな人を知る事ができるのは喜びでもあるけれど、時には勇気を振り絞らなければならない場合もある。
恋人同士になった二人が、怯えやためらいを克服して、どのように互いへ踏み込んでいくのかが今回のテーマでした。
その結果、柳浦や鬼塚の前巻では見られなかった内面や、恋する事によって生じた変化が見られて、読者としては大変満足。
 
柳浦はやはり人間関係には不慣れな一面が垣間見えて、どうしても内に籠ってしまう場面も散見している。
それでも鬼塚の生き方に倣って、彼のような強さを身に着けたいと頑張る姿が爽やか。
最終的に、鬼塚と一緒に生きるため、躊躇いなく行動できる強さを見せてくれたのも、前巻の仕事と両立できずに鬼塚と離れようとした彼とは対照的。
個人的には、柳浦は自虐するほど弱くはないと思うんですけれどね。
むしろ、この巻をラストからすると、一番怒らせてはいけない人間なんじゃないかと(笑)。
 
片や鬼塚も、以前では見られなかった弱さが滲み出ている。
人間関係に消極的な柳浦を今までずっと引っ張て来たのが彼だったから、これまた新鮮。
元カノと別れた経緯から、彼のような人間でさえどうしても直視するのが怖い場面もある。
当然、強いだけの人間なんて存在しない。
 
結論、いくら照れ臭かろうが、辛かろうが、互いへの愛情表現や本音で向き合う事を疎かにしてはいけませんね。
柳浦と鬼塚には、これからも互いの弱点を補い合いながら、ゆっくり時を重ねていってほしい。
 

あなたを口説く方法

冒頭からいきなり全裸&風呂場でこけてる柳浦に、鬼塚と同じく茫然。
何があった!?
まあ、ローションが転がっている時点で大体お察しなんですけれどね。
 
前作で紆余曲折ありつつも、お付き合いを始めた二人。
映画を見たり、お茶や食事をしたりと、恋人関係を満喫。
だがまだまだ最後の一線は越えられず(過程のあれやこれやはしていますが)。
柳浦が雇用主である功一様のせいで、変に偏った知識が身についてしまっているのが色々な意味で心配(柳浦さん、頼むからその手つき止めて(笑))。
相変わらず、少し言葉も足りないし。
鬼塚も、それは心配になります。
その内、ちょっとした事で行き違ってしまう二人。
 
柳浦、前巻で大分成長したけれど、まだまだ他者の心情を測りかねている模様。
鬼塚の希望に答えるために奮闘する姿は可愛いのですが。
つーか、自分を開発するために用意した道具が何気にスゴイ。
それはまだ早すぎ(?)といった代物ばかり。
彼が一体どんなサイトを見て勉強したのか、地味に気になります。
 
結局、風呂場にてローションで滑って転んで、お話は冒頭に戻る。
柳浦がぶっ飛んだ言動をして、鬼塚がそれを抑えるのが、もはやお家芸になりつつあるな、この二人(遠い目)。
鬼塚の包容力もあり、今回も何とか丸く収まり、二人は身も心も結ばれる。
いつもは涼しい顔した柳浦の、余裕のなさや初々しさがキュート。
終わった後、ほっぺをぷくっとさせて、むくれちゃうのも破壊力抜群。
鬼塚もそんな柳浦が可愛くて仕方ない模様。
 

恋人を口説く方法 第1話

鬼塚の友人兼同僚達に、あらためてご挨拶する柳浦。
森山というお人は新顔ですが、まさかそれが騒動の始まりとは思いもよりませんでしたが……。

三つ指揃えて、真っ赤な顔でドキドキしながら「不束者ですがよろしくお願い致しますっっ」って、まさにTHE 新妻の趣き。
かと思うと、堂々と惚気る(本人無自覚)肝っ玉の太さも兼ね備えている。
 

鬼塚さんを怖いと思った事は一度もないですね。
いつも優しいです。
優しくて、頼もしくて、格好いいです。

 
ハイハイ、ご馳走様(ニヤニヤ)。
こんな奇麗な笑顔で正面切って言われたら、当の本人である鬼塚もたまりませんよね。
さらに、この場にいるほとんどが彫師なものだから、柳浦の他に類を見ない美しい肌に大注目&触りまくり。
それにやきもちを焼いた鬼塚が皆に隠れて、柳浦にキスやアレコレしてしまうのドキドキ(バレバレだけれど)。
 
皆が撤収した後のエプロンプレイにも鼻血。
なんだかんだ言って、知識のない柳浦相手にやりたい放題じゃないか、鬼塚(笑)。
まだまだ恋愛感情に不慣れな柳浦が、なかなか「好き」と言葉にできないのが若干不安要素ではありますが。
 
後日。
とあるスーパーマーケットで再会した柳浦と森山。
やっぱりコイツ、何か企んでやがったな……。
どうやら柳浦や鬼塚の周囲を色々と嗅ぎまわっているらしい事が示唆される。
彼の観察眼もなかなか侮れませんね。
確かに柳浦の物腰の柔らかさや平等さって、他者に興味がない事の裏返しである部分も無視できないから。
 
ラストは極道の総本部に出入りする鬼塚と彼の師匠の大ゴマ。
なんだか嵐の予感。
 

恋人を口説く方法 第2話

今回は久しぶりに、鬼塚の彫師としての凄みを見たような気がします。
極道の若頭に依頼されて、刺青の図案の描きまくる鬼塚。
だがなかなか方向性が定まらず、柳浦の白磁のような肌を見せてもらう事に……。
柳浦は鬼塚にとって、恋人であると同時にインスピレーションの源。
それは鬼塚が柳浦に惚れた要素の一つでもあるし、二人の関係の原点を見たような印象。
このシーン、柳浦が鬼塚に背を向けていて二人の視線は絡まないですが、それが独特の緊張感を生み出している。
そして柳浦を見る鬼塚の視線も、男臭くてエロス。
 
結局、昂った鬼塚は柳浦を抱いてしまうのですが、その最中に鬼塚が柳浦の背中に墨で炎を描いたのにも興奮しました。
まさに、この二人ならではのシチュエーション。
基本的には優しい関係を築いている二人ですが、鬼塚の根底には仄暗い独占欲や凶暴性などが少なからずあるんだなという事が察せられる。
柳浦の背負った炎を見て、所有欲を満たされたような鬼塚の表情が印象深い。
いつもの可愛いイチャラブとは一味違う大人の色気を満喫。
恋愛初心者の柳浦にとっては、少し濃厚すぎたかもしれませんけれどね。
 
二人の共同作業(?)により、見事図案も完成しますが。
一方、鬼塚に翻弄されてしまった柳浦は、森山との件もあり、鬼塚の顧客に極道がいる事について一抹の不安を感じずにはいられませんでした。
 

恋人を口説く方法 第3話

ハラスメント駄目絶対。
功一様が昼行燈でいてくれないと都合の悪い一派に、様々な嫌がらせを受ける柳浦。
森山は、その一派の手の者だったんですね。
鬼塚と仕事の狭間で、柳浦は板挟みになってしまう。
ここで彼の悪い癖が出てしまったというか、もっと周囲の人に甘えても良いと思うんですけれどね。
他者に頼らずに長年生きてきた習性を直すは難しいだろうけれど。
 
功一様の機転でなんとか致命的な事態は避けられたが、柳浦はどんどん泥沼に陥っていく。
ここぞとばかりに、森山は脅しをかけてくるし……。
そんな追いつめられた柳浦にとって、鬼塚の優しさや思いやりが唯一の救い。
 

恋人を口説く方法 第4話

柳浦は鬼塚の事を「強い人」だと思っているし、それは一元的には事実なんだけれど、決してそれだけじゃないんだよという話。
近頃、柳浦と森山が共に行動する事が多く、嫉妬を抑えがたい鬼塚。
だが、元カノに本当に好きな人ができて振られてしまった経験から、柳浦を失うのを恐れて、なかなか踏み込む事ができないでいる。
むしろ柳浦からしたら、森山なんてお呼びじゃないですが。
珍しく及び腰な鬼塚が、読者の目から見てもじれったい。
それは鬼塚の同僚達も同じだったようで、ここでナイスフォローをしてくれる。
 
やっと網が開けて、鬼塚は柳浦を捜して、夜の街を駆けまわる。
そこで出くわしたのが、森山が柳浦を脅迫しているシーンだった。
ようやく真相を悟った鬼塚でしたが……。
 

オトシマエ、つけてもらおうか?

 
いや、その勢いで行ったら、森山のようななまっちょろいヤツは、嘘でも大袈裟でもなくお陀仏してしまうから(真顔)。
単なるいちゃもんが瓢箪から駒になっちゃうし、柳浦も悲しむからやめたげてよう(乱闘シーン(?)のぼこぺこドーンがあまりにも牧歌的で、思わず笑ってしまったけれど)。
 
とりあえず、柳浦と鬼塚の間にあった微妙な空気も払しょくされて良かった。
柳浦渾身の「だから鬼塚さんが好きなんです」によって、第一話で張られた伏線も見事回収。
 

恋人を口説く方法 最終話

ボーイズラブでもめ事が解決したら、ヤる事は一つしかありませんよね。
二人のラブラブH。
鬼塚によってキスマークだらけにされてしまう柳浦が極めて煽情的。
鬼塚は柳浦を失うかもしれない事をひたすら恐れていたから、反動で独占欲がいや増すばかり。
一方、柳浦は色事に対する知識がほとんどないから、返ってもの凄い体位も取ってしまうのね(鼻血)。
これは色々開発し甲斐がありそうです。
極めつけは「陣さん」、「真澄さん」と、お初の名前呼び。
今回はじれったい展開が多かったから、最後に来て青山先生のサービス精神大盤振る舞いといった感じ。
萌え要素てんこ盛りで、読者の心臓と鼻の粘膜が追い付かない。
この二人、両想いになっても「苗字+さん付け」なのがほのぼのとして良かったんですが、そんな人達がたまにする名前呼びの凄まじさよ。
そりゃあ、おずおずと「じ…陣……さん」(どんどん小声になっていくのがたまらん)なんて言われたら、鬼塚も暴発しそうになっちゃいますって。
 
色っぽい二人の濡れ場ですっかり意識の彼方だったけれど、とりあえず森山との件に決着をつけないとね(超付け足し感)。
そんな訳で、森山を吊るし上げる功一様と柳浦。
「むしろ最初からそうしていれば良かったのでは!?」というのは、やはり禁句なんでしょうね。
「私は鬼塚さんみたいに強くないです」って、大丈夫です、あなたも十分お強いですから。
森山も上司の命令とはいえ、とんでもない人を敵に回してしまいましたね。
これからは社畜というよりも、功一様&柳浦の下僕として頑張って下さい(棒読み)。
  

描き下ろし・花咲小紅

鬼塚の独占欲が炸裂。
一見ストイックそうな柳浦の襟足につけられたキスマークが卑猥すぎ。
おまけに柳浦自身はそのキスマークに気づいてないものだから晒し放題。
鷹場産業、滅茶苦茶素敵な職場じゃないですか。
森山が切実に羨ましい。
棚から牡丹餅じゃん(森山からしたら不本意だろうけれど)。