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『友達を口説く方法』(青山十三/新書館ディアプラス・コミックス)感想【ネタばれあり】

友達を口説く方法【電子限定おまけ付き】 (ディアプラス・コミックス)

友達を口説く方法【電子限定おまけ付き】 (ディアプラス・コミックス)

友達を口説く方法 (ディアプラス・コミックス)

友達を口説く方法 (ディアプラス・コミックス)

 
青山十三先生の『友達を口説く方法』の感想です。
靴屋に勤める男達と客の恋を描いたオムニバス・恋する靴屋シリーズのスピンオフ作品です。
しかしこちら単体でも十分楽しめます。
強面刺青彫師×人間関係に不器用なサラリーマンの友情から始まった恋の行方は……。
 

『友達を口説く方法』(2015年6月30日発行)

あらすじ

体が大きく強面で、他者におびえられる事の多い彫師・鬼塚陣は、偶然隣人の柳浦と出会う。
どこか浮世離れした柳浦は、鬼塚にひるむ事なく接してきて、二人の奇妙な友達付き合いが始まる。
一見正反対だが、共にいるのが楽しくて仕方がない鬼塚と柳浦。
しかし、鬼塚は内から発光するような柳浦の奇麗な肌に、彫師としても男としても欲望を抱いてしまい……。
 

総評

とにかく、受けの柳浦がめちゃくちゃ可愛い。
とぼけた言動と鈍感さがクセになります。
仕事や家事全般は有能なのに、真面目で純粋すぎるゆえに、人間関係に不器用で……。
ふっとした時に見せる寂しそうな顔と、子供のような笑顔のギャップも魅力的。
でも、可愛いだけではなく、大人の艶も兼ね備えていて……。
意外性の宝庫のような柳浦を、鬼塚のような男が放っておけなくなるのも分かります。
むしろ、今まで親しい間柄になったり、彼に惹かれた者がいなかったのが信じられないんですが……、この世界の人間の目は節穴か?
まあ、柳浦もあのおとぼけぶりで、そういった人々を知らず知らずの内に薙ぎ払ってきた可能性が高いけれど。
 
片や、攻めの鬼塚は強面ですが、大らかな、気の良いあんちゃんといった感じ。
かと言ってがさつではなく、人間の繊細な心の機微を汲み取れる細やかさを持っている。
続巻で明かされますが、なかなかヘビーな過去の持ち主なので、そうした経験が彼を優しい男に成長させたのでしょう。
柳浦と遊んでいる時は、鬼塚も賑やかな男子的ノリですが、柳原が眠っている時などに見せる獣性や情欲がたまらん。
相手が知らぬ間に、鋭い爪を研いでいる感にドキドキ。
 
また柳浦にとって鬼塚がそうであるように、鬼塚にとっても柳浦の存在は新鮮だったんでしょうね。
あれほど物怖じせず、そして偏見のない人間も珍しい。
 
そんな二人が、仕事、容姿、性格……etc.様々な違いを乗り越えて、友人になり、やがて恋に落ちていく過程が、笑い&ときめきいっぱいで描かれています。
割とすぐに自分の恋心に気づいた鬼塚に比べて、柳浦が何しろ天然ボケで、恋愛は亀の歩みですが、だがそこが良い。
恋情と友情の区別がなかなかつかない柳浦と、彼に振り回されつつも優しく包み込む鬼塚に、終始ニヤニヤしっぱなしでした。
 

友達を口説く方法 第1話

柳浦の行動が終始意表をついてきて、鬼塚が彼から目が離せなくなっていくのがとても納得できます。
なんでこんなに愉快な人なのに今まで友達いなかったの、柳浦さん?
鬼塚におすそ分けがしたくて、でもできなくて、ドアの影からうかがっているのも可愛すぎるだろ?
決してショタじゃない、彼のような一般(?)男性が見せる、小動物のような動作に萌える。
普段は表情に乏しいのに、自分にだけ向けてくれる笑顔とかもね。
そりゃあ、鬼塚のツボも直撃しますよ。
第1話ではまだ互いの距離感を計りかねている雰囲気の二人ですが、その辺は社交的で陽性な鬼塚が上手にリードしている。
 
普段の男同士でワチャワチャしているのを眺めているのも、もちろん楽しいんですが、柳浦が眠ってしまった後の鬼塚の変容にドキドキ。
柳浦の白磁の肌を想像している時の視線の凄み。
直接的な行為は何一つないんですが、下手な濡れ場よりもよほどエロい。
 

友達を口説く方法 第2話

付き合っていない二人のイチャイチャ生活。
部屋の鍵を渡したりと、すでに友情を逸脱しているような気がしますが、柳浦は今まで友達らしい友達がいなかったので全然気づきません。
いくら何でも鈍すぎなのでは!?(笑)
まあ、笑顔がとんでもなく可愛いので許す(可愛いは正義)。
 
一方、鬼塚は日増しに募る柳浦への欲を抑えかねていた。
柳浦が寝ている間に服を脱がしたり、彼を想定して描いた刺青の図版がエロティックだったり……、一線踏み越えそうで踏み越えないじれったさが良い。
しかし、裸を見ていたのを柳浦本人知られて逃げられたり、彫師の師匠と話す内に、自分の欲望の正体に気づく。
鬼塚はとにかく一本気な男なので即断即決。
間髪置かずに柳浦へ告白してしまいますが……。
 

「わ…私も好きです!!鬼塚さんの事!!」
(中略)
「鬼塚さんは一番の友達です!!」

 
うん、分かってた。
そうなる事、分かってた。

柳浦はある意味超厄介なので前途多難な恋ですが、まあ、鬼塚、頑張れ……(肩ポン)。
 

友達を口説く方法 第3話

何気に表紙のインパクトに爆笑しました。
これ、何マンガが始まろうとしているの!?(ボーイズラブです)
 
今回は二人が箱根方面に旅行に行く話。
ここで柳浦が人間関係に消極的だった理由も明かされる。
親が転勤族かぁ……、短期間しか同じ場所に留まれないって辛い。
友達の内面を理解し合う前に、すぐお別れがやってくる。
自分は置いていく側のはずなのに、返って世界から取り残されるような孤独を感じていたんでしょうね。
 
どんどん「友情関係」を深めていく二人でしたが、鬼塚の柳浦に対する欲望は留まるところを知らず。
ぶっちゃけ柳浦が無自覚にエロ過ぎなんですけれどね。
TVゲームで遊んでいるだけなのに、なんでこんなにイヤらしいの!?
柳浦に煽られまくって、我慢できずに玄関先でヌいてしまう鬼塚。
こんな状態で二人っきりの旅行って……果たして大丈夫かいな……(ワクワク)。
 
そして旅行当日。
黒塗り車&スーツで待ち合わせの場に来た柳浦に、鬼塚と同じく「!!?」となりました。
柳浦の友達同士でする旅行のイメージって一体……(遠い目)。
これに鬼塚を加えたら、明らかに堅気じゃないよね。
まあ、二人が楽しければそれで良いけれど。
 
「(紅葉が)奇麗……」、「君の方が奇麗だよ」的な超お約束バカップルを演じつつ、着いた宿もスゴイ。
超豪華&ムーディな離れの部屋な上に、上司の功一様(恋する靴屋シリーズの登場人物)に譲ってもらった旅行とはいえ、ツインではなくダブルとか……。
鬼塚にとっては色々役得ですが、無邪気な柳浦は、大浴場で入浴に卓球など、まるで学生の頃のやり直しのような旅館での過ごし方にワクワク。
それに付き合ってあげる鬼塚も本当に良い奴(刺青を入れているので大浴場は無理でしたが)。
 
ラストは、夜道で良い雰囲気になる二人。
あらためて想い人を口説く鬼塚でしたが、柳浦は当然簡単には気付かない。
キス&三度目の告白でやっと察するんですが(ここで口をごしごし拭っちゃうのが(笑))。
二人の多彩な表情変化が目に楽しいシーンでした。
 

友達を口説く方法 第4話

前回から引き続き、鬼塚が柳浦にアタックをかける。
雄らしさをにじませつつ、余裕の表情を見せられたら、さすがの柳浦もドキドキしてしまいます。
 
しかし、そこで鬼塚を風呂(離れにあるヤツ)に誘ってしまうのが、柳浦の柳浦たる所以なんですけれどね。
この旅行、何度「!!?」ってなれば気が済むの?
危機感0な上に、鬼塚の刺青(下半身に入れたものも含む)をまじまじと観察してくるんだから、鬼塚もたまらん。
おまけに艶めく肌を惜しげもなく見せつけてくるんだから欲情もします。
ナニコレ新手の我慢大会?
おまけに「友達の範囲で(ヌくのを)手伝います」なんて柳浦が爆弾発言かますから、「友達とは?」と、場違いに哲学的な命題に思いを馳せてしまった。
イコール鬼塚に何されても文句は言えませんよね。
むしろ鬼塚はよく素股で我慢したよと、褒めてあげたいぐらい……。
 
その夜、寝ぼけた鬼塚に抱きしめられて、色々思い出してしまい、赤面する柳浦。
ほぅ……、あの飄々としていた彼がねぇ……(ニヤニヤ)。
柳浦の中にも友情以外のものが芽吹き始めている予感。
 

友達を口説く方法 第5話

恋愛に不慣れな柳浦が色々と悩んでしまう回。
誰に対しても親切で、仕事もできる鬼塚。
柳浦に「友達」という逃げ道を残してくれている点などにも、懐の深さが感じられる。
こんな素晴らしい人が、どうして自分のような人間を好きだと言ってくれるのか……。
しかも、仕事などで失敗を繰り返してしまい……、この柳浦がどんどんネガティブ思考に陥っていく感じがリアル。
「柳浦さん、ちょっと自分に厳しすぎるよ……」とホロリとしてしまいました。
事故はマズいかもしれませんが、料理を焦がしてしまうくらい、日常生活ではよくある。
それを体験した事がないくらい、今までの柳浦の心はいわば無風状態だったんでしょうけれどね。
鬼塚が柳浦のそんな生活を一変させてしまった。
変化を恐れる気持ちも十分理解できますが……。
鬼塚の「友達」から「ただの隣人」へ戻る事を決心する柳浦。
今までの賑やかで楽しい時間を手放そうとしている、ラストの彼の笑顔が切ない。
  

友達を口説く方法 最終話

友達や恋人を持つ事すら「身の丈に合わない」なんて思っている柳浦、悲しすぎる。
鬼塚から距離を置いて数週間、一度幸せを味わってしまった身に、味気ない生活は辛い。
鬼塚とゲームに興じたり、一緒にご飯を食べたりした時間も、柳浦にとってかけがえのない時間だったんですよね。
でも、これは彼自身が乗り越えなければいけない壁だから……。
それを待ってあげられる鬼塚、男前だなぁ。
でも結局、我慢できなくなってしまうんですけれどね(笑)。
鬼塚は一計を案じて、二人が出会った時と同じようなシチュエーションを作り出す。
やはり柳浦のような内に秘めてしまう人間にとって、勢いがあり、かつ度量も大きい鬼塚のような存在ってマストなんだなと思った次第。
柳浦が引きこもっていた部屋を裸足で飛び出して、鬼塚に飛びつくのも、彼が一皮むけたのを表しているようで胸熱でした。
ここであくまで「友達」にこだわってしまう辺りが、柳浦らしいんですけれどね。
遅ればせながら自分の鬼塚への想いが恋心だと気づいた、柳浦の真っ赤な顔が可愛かったです。
 

描き下ろし・その後の話

両想いになった二人のイチャイチャ。
ペッティング&口淫どまりなんですけれどね、本番は次の巻までお預け。
しかし柳浦の透けるような肌とシーツの色との対比や鬼塚の獲物を狙うような視線、二人の体格差に大満足。
彫師だけあって、柳浦の肌に固執する鬼塚がエロス。
初めての体験に半泣きしてしまう初々しさや艶やかさ……、柳浦の恋人にしか見せない表情を目にしたら、もっと色々な彼を知りたくなる鬼塚の気持ちも分かります。
そして、それは柳浦も同じ想いなんですよね。
二人のラブラブさにあてられつつ……。
本当にご馳走様でした。