ボーイズラブのすゝめ

ボーイズラブ系のコミックス&小説の感想を中心に。

『ギヴン(3)』(キヅナツキ/新書館ディアプラス・コミックス)感想【ネタバレあり】

ギヴン(3) (ディアプラス・コミックス)

ギヴン(3) (ディアプラス・コミックス)

ギヴン(3) (ディアプラス・コミックス)

ギヴン(3) (ディアプラス・コミックス)

 
『ギヴン(3)』の感想です。
真冬の過去に一応の決着がつき、バンドとしても新たな一歩を踏み出す4人。
また惹かれ合う立夏と真冬は、はれて交際を開始するが……。
バンド活動は順調なものの、人間関係については波乱の予感です。
 

『ギヴン(3)』(2017年3月15日発行)

あらすじ

4人での初のライブを成功させた真冬、立夏、秋彦、春樹。
バンド名も”given”に決まり、あらためて本格的なバンド活動を開始。
SNSのフォロワー急増に、大型ロックフェスの二次審査通過と、人気バンドへの階段を徐々に上り始める。
一方、初ライブでキスして以来、真冬と立夏の仲は宙ぶらりんだったが、真冬の予想外のアタックで見事両想いになる。
バンドも真冬との恋愛も絶好調の立夏だったが、真冬がの急速に膨らむ天才の片鱗に戸惑いを覚えはじめ……。
 

総評

今回も見どころ盛沢山でした。
ライブの成功に伴い本格的にバンド活動開始。
バンド名”given”決定。
春樹が秋彦に一目ぼれした瞬間。
そして、なんと言っても、真冬と立夏、両想いおめでとう。
しかし、最も爪痕残したのは、お前だ、秋彦!!!
何かある、何かあるとは予感していたんですが、予想以上に怖すぎた。
やはり、単なる経験豊富な良いあんちゃんでは済まなかったか……。
彼の激烈な執着の行き着く先が見えない(本人にもおそらく見えていない)。
雨月の天才ゆえの超越ぶりも凄い。
十中八九この二人の関係に巻き込まれていく春樹が今から心配。
 
年長組にドロドロ感が漂う中、年少組のピュアなお付き合いが唯一の癒し。
けれども、こっちはこっちで気がかりな不安材料を孕んでいる。
真冬と雨月の、才能を持った者同士のみが共有する気配を目の当たりにしたら、立夏はどうなるのだろう?
真冬と自分の間の音楽に他者が介在するのは、どうしても許せないでしょう。
もしかしたら、由紀の時以上に荒れるんじゃないないか?
givenが現在好調なだけに、それが翻った時の反動はかなり大きいと思います。
その時がこのバンドにとって真の正念場だという予感がする。
 

code.12感想

ライブを成功させ、ニヤニヤが止まらない年長組。
ライブハウスに来る観客は目ならぬ耳の肥えた人も多いだろうから、この称賛は純粋に嬉しかったでしょうね。
しかし、ふっとした瞬間に春樹の髪に触れてくる秋彦、ヤバいですね。
個人的にはこの辺りから、秋彦の”天然”を疑い始めました。
おまけに後日、秋彦は春樹と仲の良いタケちゃんに焼いている節を見せる。
真冬の件が一応落ち着いた事もあり、秋彦が作中で謎めいたキャラクターランキング一位へ一気に躍り出た。
 
一方、その頃の上ノ山家。
おいぃ、失恋したからって女の子が髪を自分でジャキジャキ切っちゃうってどうなの!?
弥生、思いっきり良すぎ。
それだけ秋彦に惚れていたんだろうけれど。
お父さんもショックだったろうなぁ、娘に目前でこんな事されて。
正直、秋彦と弥生が付き合っているか否かは五分五分だと思っていました。
ひたすら弥生→秋彦のシーンばかりで、秋彦自身の熱情はまったく伝わってこなかったから。
そんな恋に破れた弥生を見て、立夏は大事な事に気づく。
 

やべぇ…、俺、真冬にどう思われてるかっていう重要な部分忘れてた

 
マ ジ で !?(爆笑)
キスまでしておいて、真冬の想いを未確認とかそれってどうなの?
おそらくほぼすべての読者から「とっとと確かめて来い!!」というお達しが入ったと思いますが、なんと次の日、真冬は学校を休んでいた。
ライブの興奮からの知恵熱とか子供かよ!!(とても真冬らしい)
そこで超ベタなお見舞いイベントキターーー!!
 

上ノ山は悟ったーー。
ーーもういい、どうせ死ぬなら早く死のう。

 
なんでこの子、こんなに超ネガティブなの!?
しかし、真冬の家のドアが開いた先には、熱に浮かされて超色っぺー思い人が……。
もしもし、お兄さん、背後で何かが爆発しましたよ(各キャラの心象を表した背景にいつも笑わせられる)。
立夏の挙動不審さや毛玉ちゃんの愛らしさに笑ったり、真冬の「あと5分」や二人の会話の甘さにキュンキュンしたりと、やっぱりお見舞いイベント最高だな。
王道の王道たる所以を思い知りました。
 
片や、年長組。
アダルティですね(興奮)。
髪を結うとか……、ぶっちゃけエロイ。
この時、秋彦の表情が見えないのも思わせぶり。
春樹が秋彦に絡めとられているような印象を受ける。
春樹が長髪なのは、秋彦に一目ぼれしたのがきっかけだったんですね。
なに、この滅茶苦茶健気な最年長。
秋彦と初めて目が合った瞬間の寒気のような震えを思い出す春樹。
どうして彼らの恋はこんなにも痛いのか?
 

code.13感想

冒頭で立夏、秋彦、春樹がバンドを組んだ経緯が語られる。
本人も自戒しているけれど、春樹、かなり乙女ですね。
それぐらい秋彦の放つただならないオーラにやられてしまったんだろうけれど(あと何気に春樹は面食いだと思う)。
この時の秋彦側の心情も気になる。
彼の表情一つとっても、秋彦にとっても春樹との出会いが運命的なものだったのは明白だから。
時を経て、春樹の部屋ですっかりくつろいで居眠りする秋彦は可愛い。
春樹が萌えるのも分かる。
でも本書を読み切ってから振り返ると、それすら秋彦に何らかの狙いがあるような気がしてならない。
 
中盤は順調にタイトル回収。
あらためてバンド名を”given”に決定。
”塩タン”にならなくて良かったです(笑)。
 

このギター、死んだ彼氏のお母さんがくれて、最初は呪いみたく思ってたけど、なんとなく原点だな…

 
さすが、真冬、さり気なくメガトン級の爆弾を落としてくる。
対してそれをあっさり流す秋彦。
おそらく年齢相応な恋愛経験しかないだろう(立夏に至っては童貞)他の二人は目が点。
とりあえず、二人とも、もの凄い猛者に捕まってしまいましたね。
 
終盤は立夏と真冬のデート。
真冬の笑顔が……、はぁ、尊い。
立夏の傍にいられればこそなんですよね。
これは立夏からすればたまらない。
ここで立夏、やっと告白なるか!?……と思いきや、そうは問屋が卸さず。
まあ、もうどっちでもいいじゃん、二人が幸せなら(超他人事)。
如実に二人の恋愛経験値差が出たというか……。
真冬はもう少し由紀の存在との狭間でモダモダするかと思ったんですが、その辺り、予想以上に動物的だった。
自分の気持ちに嘘がつけない子なんですよね、良くも悪くも。
 

code.14感想

冒頭から立夏にくっそ笑わせてもらいました。
心の中の六人の俺のワチャワチャが楽しすぎ。
けれども童貞の俺”の送別会は先走り過ぎなのでは!?(爆笑)
しかも事前にバンド内恋愛禁止令をドヤ顔で宣言しちゃってるし。
……立夏、すっかりギャグキャラ定着しちゃいましたね。
序盤からその片鱗はあったけれど。
 
それから即行、春樹のもとに報告と交際許可を取りに行くのは青春だなぁとニヤニヤしてしまった。
なんの躊躇いもなく、春樹に頭を下げる事のできる立夏にトキめく。
このまっすぐさは多くの人が大人になっていく過程で失ってしまうものだから、読者である自分の目にも眩しく映る。
そして立夏のそんな姿にほだされたのか、二人の関係性に口やかましくしつつも(バンド1の年長者なのだから当然)、許してくれる春樹も良いですね。
彼の人間的な温かみと包容力を感じました。
すっかり真冬と立夏のお兄ちゃんを通り越してオカンですね。
二人が抱き着きたくなるのも分かる。
片や、二人の交際宣言にも涼しい顔の秋彦はどっしり構えたオトン的な存在。
ラストの並んで歩いていく真冬と立夏の後ろ姿が爽やか。
これからも困難が待ち構えているだろうけれど、なんとか二人で克服していってほしい。
 

code.15感想

冒頭、タケちゃんにアー写(宣材写真のようなもの)を撮ってもらう4人。
超格好いい……、中身はあんななのに(え?)。
バンド活動に精を出しつつも、そこは普段は一介の学生。
立夏と真冬はテスト勉強に勤しんでいる。
現代文とか懐かしい。
 

「そもそも1000年代生まれの人の考えとかわかるわけない……、げんだいではない」

 
真冬、お前、喧嘩売ってるんかい!!!(憤怒)
ここで大人げなく切れるのは年寄りの証拠なんですけれどね、知ってる……(遠い目)。
おまけに超ピュアラブな交際を見せつけて……、年長組、暗雲背負ってるけれど大丈夫ですか?
また手つなぎにも過剰に反応する立夏が、”童貞の俺”の送別会をできるのはいつの事でしょうか?
 
そして季節は夏に突入。
いよいよバンドシーズン到来。
しかし、補修に引っかかってしまった立夏。
三馬鹿達、何かにつけセッ〇ス、セッ〇ス、言い過ぎ(爆笑)。
如何にも男子高校生という感じの会話に笑ってしまった。
どうでもいいけど、ちゃんと勉強しましょう。
 
一方、真冬は様々な音楽に吸収するため、秋彦のところに入り浸っていましたが、女性と朝帰り(?)する秋彦を偶然見かけてしまう。
うわぁぁあぁ……、弥生に手を出さなかったのって、やはり彼女が立夏の姉だったからなのかなぁ……。
実際、秋彦だったら弥生を手玉に取るなんてお手の物だったと思いますよ。
 

「梶さんて」
「あ?」
「まるくなったんじゃなくて、春樹さんとかの前でソレ出さないだけですよね」

 
この時の秋彦の表情に、背筋がゾワッとしました。
今まで本作を読んできた中で一番の衝撃。
この人、絶対天然じゃないと確信。
なんとも言えぬ性悪感が漂っている、底知れない笑み……。
そこで「秋彦が春樹に求めてるのって一体何なのだろう?」という疑問がふっと頭を過りました。
あくまでも私の感ですが居場所的な何かなのかなぁと……、秋彦を取り巻く人間関係がより一層気になる。
 

code.16感想

表紙の雨月、凄まじい色気ですね。
これぞまさにバックシャン。
しかし、自分を抱きしめる仕草は不安の表れとも言いますが、彼の場合はどうなのか?
掴み所のない雨月の内面を、切実に知りたいと思う今日この頃。
 
雨月の出演する演奏会にやって来た真冬と秋彦。
秋彦が初めて遭遇した天才が雨月。
隣にはもう一人の天才・真冬。
秋彦、雨月に対して恋情だけではなく、やはり憎しみめいた感情も抱いてたんですね。
おそらくヴァイオリンでは絶対敵わなかった。
努力しても到底届かない高みにいる相手。
雨月を単に嫌えれば良かったんだろうけれど、相反する感情の狭間でずっと苛まれていたんだろうな、秋彦は。
秋彦が春樹に懐いているのも、その辺りが関係してそうですね。
春樹は秋彦にバンドのドラムという道を示唆してくれた人間だから。
そして、雨月の清冽と感応を合わせ持った演奏に触発される真冬。
 

梶さん、曲が、曲が作りたい

 
天才同士の共鳴。
なんだか雨月と秋彦の関係が、真冬と立夏の仲にそのままシフトしそうで不安を覚える。
 
場面は打って変わって。
given、カウントダウンフェス(超大型ロックフェス)の二次選考通過、おめでとう。
SNSのフォロワーも急増して破竹の快進撃。
三次はライブ審査という事で、真冬のテンションも上がる。
しかし、立夏は天才性を露にする真冬に対して、距離感を取りあぐねる。
ホント大丈夫なんか、この二人……。
ちなみに柊と玄純のバンドも二次通過していました。
真冬の反応、何気に辛口!!
気の置けない幼馴染同士という感じで微笑ましいですが、もしかして真冬、立夏の前だと多少ぶりっこしてる?(笑)
 
ラストは……、う~ん、やはりこの二人、肉体関係があったのね。
でも甘さからはほど遠く、秋彦の冷めた視線が痛い。
決して手に入らないものに絶望して、それでも残滓を追いかけているような虚無を感じる。