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『きのう何食べた?(9)』(よしながふみ/講談社モーニングコミックス)感想【ネタバレあり】

きのう何食べた?(9) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(9) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(9) (モーニング KC)

きのう何食べた?(9) (モーニング KC)

 
『きのう何食べた?(9)』の感想です。
この巻ではとうとうシロさんが50歳の誕生日を迎えました。
生まれてから半世紀。
ちなみに連載開始から7年。
本当におめでとうございます。
なんだかんだ言って、シロさんは周囲の人々に愛されていると思いますよ(本人不本意そうですが)。
これからもケンジと末永くお幸せに。
 

『きのう何食べた?(9)』(2014年8月22日発売)

総評

初期はシロさんが一人で料理をする事の多かった本作ですが、徐々にケンジがキッチンに立つシーンが増え。
二人の交流関係が広がるにつれ、友人知人と共同作業をしたり。
最近では脇役達の食卓を覗けるエピソードも有り。
人間関係が食を豊かにしていくのが素敵だ。
今後どのような発展を遂げるのか分かりませんが(もちろん、今の緩い雰囲気は決して失わないでほしい)、いつまでも見守っていきたい作品の一つ。
 
この巻で最も印象に残ったのは#69。
実は#59で筧家とケンジの関係性に危惧を覚えたんですけれど、ここはシロさんが見事にけじめをつけてくれました。
シロさん、掛け値なしにカッコよかった。
平等に人間関係の天秤を保っていくのは大変です(家族関係は拗れると赤の他人よりもさらにキツイし)。
そこはシロさん、普段はとぼけているところもあるけれど、さすが一本立ちした大人の男。
自分が本当に大事にすべきものを見失わなかった。
歳を重ねたからといって、なかなかこういう対応ができるようにはなりません。
ご両親も最初から適応するのは難しいけれど(年配の方ならなおさら)、歩み寄ろうとしてくれている点に救われる。
ご都合主義かもしれないが、最終的には皆が満足のいく関係になっていければいいなと願わずにはいられません。
 

#65感想

シロさんの行きつけスーパー・ニュータカラヤが閉店するお話。
激安スーパーだったので、シロさんのショックは大きい。
もしかしたら、連載開始以降で一番衝撃受けているのでは?(笑)
馴染みのオバちゃんから閉店の確証を得た時の虚無顔も凄い。
各スーパーによって得意分野が違うというのはあるあるですね。
だから私も、買い物は基本的に梯子します。
 

ああ…、失ってみて初めて分かる、あなたが私にとってどれだけ大きな存在だったのかを…

 
それは最早、恋なのでは!?
しかもシロさん、アナタ、失恋してもこれだけ傷心する事は間違いなくないでしょう。
最終的には居抜きで別スーパー入ってくれて、シロさん&ケンジの家計的にも助かったけれど。
例のオバちゃんも引き続き再就職が決まって良かった。
明らかに優秀なスタッフですからね。
でも今までとは違って、愛想よくされると何となく残念というか、ソワソワしてしまうの分かる(むしろ何か企んでそうで怖い)。
あの紋切り型の接客が面白かったのに……。
 
今回の献立で注目したのはタラトゥイユ。
オサレな名称なので尻込みしてしまい、自作した事はありませんでしたが、シロさんやケンジの言うとおり要はごった煮ですからね。
今度、作ってみようっと!
 

#66感想

小日向さん&ジルベールの家の冷蔵庫が壊れて、シロさん&ケンジ宅で食材を預かるお話。
冷蔵庫、壊れると困りますよね。
しかも、夏場など特に必要な時(+電気屋さんの繁忙シーズン)に限って使えなくなる不思議。
 
そうか、小日向さんにはジルベール=スーパーモデル、シロさん=一般人に見えているのか(遠い目)。
まあ、ケンジはシロさんが冴羽獠に見えているらしいので、悔しがるだけ時間の無駄というか、ツッコミ入れるだけ野暮ですね。
それにしても、8巻の#58で察してはいましたが、小日向さん、本当にセレブなんだなぁ。
冷蔵庫の中身が豪華すぎ。
肉や魚が、一般家庭ではあまりお目に掛かれない質の高さ。
それに量もシロさん&ケンジ宅の冷蔵庫では明らかに入りきらないという事で助っ人召喚。
佳代子さんも巻き込んで、食材を消費してしまう事に……。
シロさん、佳代子さん、小日向さんの三人が同じキッチンに立つというのもレアですね(ケンジは仕事。ジルベールは最初から手伝う気nothing)。
佳代子さん、主婦歴長いだけあって、家庭料理からおもてなし料理まで網羅しているってスゴイ。
  
今回のメニューで一番感心したのは、ローストしないなんちゃってローストビーフ。
なるべく手間暇かけず、最大限の効果を上げる佳代子さん、尊敬してしまいます。
きんきのアクアパッツァも、ゴージャスグリーンサラダも美味しそう。
材料が良くなければ、なかなか難しそうですが。
バターと交換でこれだけの料理を伝授してくれて、佳代子さん良い人すぎると思ったら、このバター、エシレのだったんかい!!(かなり高価)
とりあえず、各自がご馳走にありつけて良かった良かった。
 

#67感想

シロさんと同棲して数年のケンジが、自宅に関しての怖い事実を初めて知る話。
THE 事故物件~~~!!!(爆笑)
確かに丸の内線沿い、駅から徒歩5分のファミリー向け、3口コンロ、風呂・トイレ別、床暖付きで月10万円って、何もないわけなかった……。
シロさん、家賃激安ならまったく気にしなさそうだものね。
しかも殺人現場、何気にケンジに使わせてるし。
ひんやりした朝って、それ別の意味でひんやりしてるんじゃ……。
ラストのシロさんではない同居人(?)に話しかけるケンジに笑う。
 
今回のメイン料理は鶏手羽元のにんにく酢じょうゆ煮。
甘辛な手羽、我が家でも作りますが美味しいですよね。
ホカホカのじゃがいもグラタンと合わせて体が温まりそう。
 

#68感想

シロさんが司法修習生時代の同期会に行く話。
シロさんの無駄に出してる勝ち組オーラに笑いました。
北村さんに関しては、かなりの食わせ物ですね。
ラストの悪そうな顔といったら……。
シロさんと同じく独身で(彼はおそらくゲイではないが)皆の好奇心の弾除けにしていたら、冒頭の日弁連の選挙戦と意外なところで結びついてしまった。
高級寿司の恩は無下にはできません。

今回の料理で注目したのが、キャベツのバターしょうゆおかかいため。
料理名で作り方を概ね把握(笑)。
美味しそうな上にお財布にも優しい。

#69感想

シロさんがおせちを作るお話。
#59を読んで、筧家とケンジの関係性に若干モヤモヤしていたんですが、とりあえず収まるところに収まりました。
ケンジと両親、両方へ変におもねらず、自分の偽らざる気持ちを言えるシロさんがカッコイイ。
 

ただ俺は、俺にとって一番大切な人と正月を過ごしたい

 
こんなん、ケンジでなくとも惚れ直すわ……。
連載が始まった当初のシロさんでは、おそらく言えなかったでしょうね。
ケンジと過ごす時間を積み上げてきた事によって、自然と口をついて出た言葉なのでしょう。
ご両親もとりあえず納得してくれて良かった。
筧家とケンジの距離感が今後どうなっていくか分かりませんが……。
良くも悪くも、人間関係というのは絶えず変化していくものだから。
 
今回のお料理はお汁粉。
そしておせちは、黒豆、卵焼き、ほたて貝柱入り紅白なます、関東風雑煮。
シロさん、黒豆、炊くところからやるの凄い(我が家はいつも出来合い)。
なますも貝柱入りというのは少し豪華ですね。
おせちもその家庭の特徴がモロに出る料理。
これがシロさん&ケンジの定番になっていくんでしょうね。
 

#70感想

ケンジの同僚・田渕君に新しい彼女ができた話。
田渕君の彼女さん、料理の手際重視で作り方テキトーって、几帳面なのかザッパーなのかわからん。
#62と違って、彼女さんに振り回されている田渕君が面白いですが、真逆な性格が返って噛み合って相性良いのかな?
……と思いきや。
あちゃ~、最後はそうなっちゃうかぁ。
皿うどんまでが、すでにお約束の流れなんですかね(笑)。
田渕君、相変わらず鋼メンタルだから全然落ち込んでないけれど。
 

自分で作った料理でそんなに幸せになれるなら、ひとりで暮らせばいいじゃない!!

 
うん、私も#62を読んだ時そう思った。
田渕君の存在はシロさん&ケンジのアンチテーゼ的というか、これはこれで面白い。
 
今回のお料理はブロッコリー入りカルボナーラ。
ブロッコリーが入っているので、彩り&栄養のバランスも良い。
パスタは確かに田渕君のように豪快に作った方が美味しくなるイメージ。
 

#71感想

シロさんが老眼鏡を買う&お誕生日おめでとうな話。
自分の老化現象から目を逸らしたいのは分かりますが、こればかりは仕方がないですよね。
悟りを開いたかのような大先生&志乃さんの勝ち誇った表情が可笑しい。
志乃さん、あなたもいつかは仲間入りするんですよ(老眼にならない人もいるらしいですが)。
結局、老眼鏡のおかげで生活面は快適になって良かった良かった。
しかし眼鏡をかけたシロさん、本当に男前だなぁ(無駄に)。
ラストのジルベールから贈られた豪華な花束に爆笑。
50歳強調しすぎ。
ジルベールの「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」的な(?)高笑いで〆。
ジルベール、あなたもいつかは(以下省略)。
 
今回はぶりの食べ照り焼き、ブロッコリーのえびあんかけ、千切り大根のなっとうドレッシング、えのきのみそ汁。
前三品はピリ辛でお酒に合いそう(実際、シロさん達もビールで晩酌している)。
 

#72感想

シロさんとケンジがお弁当を持って夜桜見物に行く話。
ケンジはシロさんが渋らないか心配していますが、多分高台寺でライトアップを見物するよりはハードル低いと思うから安心して。
実際、シロさん、あっさりOKだし。
そんな時、シロさんの母親から電話が……。
お父さんに続き、お母さんもガンになってしまったんですね。
今回はお父さんの面倒をシロさんが見なければならないから、より大変。
けれどもシロさん、「何か今、お母さんに聞いておきたい事ってある…?」という問いに、肉団子とおにぎりの作り方聞くってどういう事!?
このお母さんが素でぽかーんとしている姿、初めてみたかもしれない(だいたい慌ててるか、肝が据わってるかの両極端)。
ケンジに対して、お花見の時に母親のガンの事を打ち明けるが、この二人の事だからやっぱり深刻にならず。
長年連れ添った伴侶感が滲み出ています(ジルベール辺りは所帯臭いと言うかもしれない)。
 
今回のお料理はお花見弁当。
シロさんのお弁当は素朴でシンプルなところが良い。
筧家のおふくろの味も詰まってます。
ちなみに私は、おにぎりはサランラップで握る派。
これも各人の好みが出ますね。
素手で握った方が美味しいのは、なんとなく分かるんですけれど。
この文章を読んでくださっている皆さんはいかがでしょう?