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『きのう何食べた?(3)』(よしながふみ/講談社モーニングコミックス)感想【ネタバレあり】

きのう何食べた?(3) (モーニングコミックス)

きのう何食べた?(3) (モーニングコミックス)

きのう何食べた? 3 (モーニング KC)

きのう何食べた? 3 (モーニング KC)

 
『きのう何食べた?(3)』の感想です。
今回も、シロさんが作る美味しそうな料理や、主人公二人が営む日常を余すことなく楽しめました。
しかし同時に、老親の金銭問題や孫を見せてやれない居たたまれなさなどが身につまされる一冊。
性嗜好問わず、多くの読者にとって他人事ではないから、とても共感する事ができます。
 

『きのう何食べた?(3)』(2009年10月23日発売)

総評

相変わらず大きな事件が起きる事もなく、緩やかな世界観。
けれども時間は確実に流れていて、登場人物の髪形などが若干変化していっているのには感心しました。
さすが、よしなが先生、細かい。
容姿が変化していくという事は、サザエさん現象のように一切年を取らないというある種のご都合主義ではなく、各人物達も老いていくというわけで。
前述しましたが、シロさんと両親の間に漂う微妙な空気に、自分の家庭を重ねてしまう読者も少なくないと思います。
大人ならどうしても無視できないテーマの数々。
ただし、それだけではどうしても読むのが苦痛になってしまう。
そこで読者を浮上させてくれるのが、温かな家庭料理。
そして、主人公二人や周囲の人々が繰り広げる、何気ないけれどコミカルな会話。
料理と同じ。
物語もバランスが大事。

その辺りに、本作が長年読者に愛され続ける理由の一端があるのではないでしょうか?
 
料理場面に関しては、ケンジがキッチンに立ったり、シロさんを手伝っているシーンが増えたように感じる。
元々シロさんの料理は、他者にはぶつけられないモヤモヤを解消するためにやっている面もあります。
それはとても個人的な作業であり、生半可な間柄の相手には介入して欲しくないのではないでしょうか?
キッチンはシロさんにとって、ある種のインナー・スペースのように見える。
40過ぎて、自分のテリトリーに他者を入れるって生半可な事じゃないですよ。
そこでのケンジの出番が増えている。
それは、彼らの結びつきや信頼感がさらに深まっている事を示唆しているように思えます。
少し穿ちすぎかもしれませんが。
 

#17感想

ケンジが珍しくシロさんに対して本気で怒る話。
大晦日と元日に実家へ帰る事になったとウダウダしているシロさんに、ケンジから厳しい一言。
シロさんの気持ちも分からないではないが、両親の懊悩も汲んでやらないと……。
そんな時、ケンジが絶妙なタイミングで読者の代弁者になってくれる。
そうする事によって、シロさんに対して読者が抱きかけていたモヤモヤを引きずらずに済みます。
なんだかんだ言いつつ、シロさんにとって良いパートナーなケンジ。
 
そんなケンジですが。
今まではどちらかというとシロさん視点のお話が続いたので、彼のバック・グラウンドはほとんど明かされていません。
シロさんもあまり把握していないようで。
今後二人が添い遂げるなら、これも避けては通れない話題ですね。
 
最後は、シロさんがケンジの大好物を作ってあげてめでたしめでたし。
言葉には出しませんが、お詫びと感謝を込めてという感じ。
それにしても、自分は全然悪くないのに、申し訳なさそうにしているのがケンジらしい。
 

#18感想

シロさん不在の家で、ケンジがサッポロ一番みそラーメンを作る話。
ちなみに私は塩派です。
年取ると、宴会に最後まで付き合うよりも、お家でまったりインスタントラーメン食べたくなるのわかり味が凄い。
インスタントに次作の野菜炒めとか添えると格段に美味しくなりますよね。
普段料理をしない人が、変なところに几帳面になるの分かります。
あと、31ページ最終コマのケンジの横顔、何気に今までで最も凛としていたのでは?
それが、ラーメンの茹で時間計っている時というのが、実にケンジらしいですが。
ラーメン食べ始めたら、恋人からのコールも無視というのにも笑う(あと、着メロが”Get Wild”なのにも年代がモロ出ている)。
ジャニーズの若い男の子達は、あくまで観賞用というのにもうんうんと頷くしかない。
電話無視されたシロさんが、「サッポロ一番作って食べてた」というケンジの言葉に「…サッポロ一番じゃ仕方ねーな」って納得しちゃうのが……(笑)。
価値観と味覚が似ているか否か、パートナー選びの際には結構大事ですよね。
とにかく、無性にサッポロ一番が食べたくなる回でした。
 

#19感想

シロさんが数年ぶりに実家でお正月を迎える話。
近所の子供達が遊びに来た時の、シロさんのモノローグが刺さる。
 

そうか。きっとこの人達はもう、孫の代わりにお隣の子を可愛がる事に決めたんだ…。

 
……うわぁ、変に結婚や出産を急かされるよりも、身の置き場がない。
しかし、これは仕方がない。
どちらが悪いというわけでもなく、善悪二元論で語れるものでもありませんしね。
 
それはそうと、正月の餅の処遇には毎年悩まされる。
ケンジがシロさんの元カノ(パン屋さん)が作ったパンでもいいから、餅以外の炭水化物が食べたいって相当追いつめられてる(笑)。
シロさんのお母さんも、なんか息子にカムアウトされた時よりも鬼気迫るものを感じるのは気のせい?(目、血走ってるし)
我が家は焼いた餅に醤油+海苔で食べるか、お汁粉にするのがお決まりですが、シロさんのように定番のきなこ+砂糖や大根おろし醤油も美味ですよね。
ケンジにパンを与えつつも、同時に残り物の栗きんとん消費させているシロさんは、やっぱり主夫の鏡。
 

#20感想

シロさんが自意識過剰ゆえに痛い目見る話。
若い頃にそれなりに女子にモテていたから、返ってめんどくさい事になっている。
シロさんの「かっ…、彼氏はいないの?」に、司法修習生の長森さんが一気に心を閉ざしたの、余計な説明がなくとも表情一つで伝わってくるのが凄い。
ラスト付近、大先生のバックのトーンになんだか笑ってしまった。
その気遣いが痛いです!

今回のお料理は鶏の水炊き。
骨が若干面倒くさいけれど、良い出汁は出るし、骨の周りのお肉も美味しい。
定番の雑炊もたまらない。
ふんわり卵は正義。
 

#21感想

シロさんと両親の間の、微妙な金銭についての話。
親にこういう事で「どうもありがとう」と言われるのはなんだか辛い。
また、いつもはお母さんの後ろに一歩下がっているお父さんが「何を言っとるんだ。返すよ!!」と意地になるのも……。
この作品の事だからオブラートに包んでいるし、今は落ち着いているけれど、筧家もお母さんが宗教にハマったりと色々あったから。
性癖に関しては曲げなくても良いと思うけれど、シロさんはただでも一人っ子だから背負いこまざるを得ないでしょうね。
……というか、シロさん、今まで仕送りしていなかったのか。
親のプライドというのもあるだろうけれど、息子が何歳になっても可愛くて仕方なかったんだろう、シロさんのご両親は。
とりあえず、シロさんには料理と、こういう時に話を聞いてくれるケンジのような存在がいて良かった。
慎重すぎるほど慎重すぎるシロさんと楽天家なケンジは、やっぱりバランスのとれたカップルですね。
 

#22感想

シロさんとケンジはタイプが違うけれど、両者ともハンターだという話。
シロさんが目を皿のようにして食品を物色しているの、共感する主婦(夫)多数だと思います。
50円引きの鶏もも肉を発見した時の、まるで恋にでも落ちたかのようにときめいた表情には笑いを禁じ得ませんでしたけれど。
シロさん、多分、ケンジの前でこんな顔した事ない……。
その頃、ケンジも狩りに勤しんでいましたが、なんか凄く雄々しい顔つきというか……。
なんだか、二人のこのスタンスの違いが、タチとネコを決める要因になっているような気がしないでもない。
 

#23感想

ケンジのために(?)、シロさんと佳代子さんが桃をシェアする話。
今回で確信しましたが、シロさんと佳代子さんって根っこの部分が凄く似てる。
親が病気になった時の反応然り。
超現実的というか、ドライというか……。
でも合理主義なのは、冷たいというわけでは決してなく、面倒くさがりの裏返しなんですよね。
この二人の友情(?)が長続きしている理由がわかりました。
私にもそういう部分があるから、とても共感できる。
ラストの「俺、すごく愛されてる……!」と感動しているケンジと、シロさんのギャップが可笑しかった。
まあ、突き詰めていくと面倒だけれど、大きな括りで言えば間違ってはいない。
二人が幸せならいいじゃないか!……という事で。

 

#24感想

シロさんとケンジの夏休み一日目。
なんとなく冒頭のシロさんのすね毛に目が行ってしまった(笑)。
クレープ焼いてブランチって優雅ですね。
具も奇をてらったものではなくて、素朴なのが返って汎用性高い。
普通にパンに挟んでも美味しそう。
種類が豊富&セルフサービスなのも楽しい。
おかずクレープとおやつクレープ、両方あるのが良いですね。
しょっぱいのと甘いのの繰り返しはヤバい。
ひたすらカロリーを摂取する永久機関の完成。
ブランチ・タイムのビールも、休日の醍醐味。
どうして、昼間から飲むアルコールは、こんなにもウマいのか?
いつもながら、幸せのおすそ分けをいただいた気分。
ご馳走様でした!